2013年8月2日金曜日

Never Let Me Go フローレンス・アンド・ザ・マシーン (Florence + The Machine)

Kazuo Ishiguroの小説「わたしを離さないで(Never Let Me Go)」を読んだ人なら,必ずこの曲との類似点に気が付くと思います。とりわけこの部分でそれが著しい
「おれはな、よく川の中の二人のことを考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついてる。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される。(おれたちもそんな感じなんだよ)」*最後の括弧の部分は邦訳が見つからなかったのでそこだけは私が訳しています。
I believe anyone who read Kazuo Ishiguro's "Never Let Me Go" would have never failed to notice the similarity between the novel and this song.  The similarity is most striking in this part : "I keep thinking about this river somewhere, with the water moving really fast. And these two people in the water, trying to hold onto each other, holding on as hard as they can, but in the end it's just too much. The current's too strong. They've got to let go, drift apart. That's how it is with us."
Never Let Me Go  (Florence + The Machine)
Looking up from underneath
Fractured moonlight on the sea
Reflections still look the same to me
As before I went under

And it's peaceful in the deep
Cathedral where you cannot breathe
No need to pray, no need to speak
Now I am under all

And it's breaking over me
A thousand miles down to the sea bed
Found the place to rest my head
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Never let me go

And the arms of the ocean are carrying me
And all this devotion was rushing out of me
And the crushes are heaven for a sinner like me
But the arms of the ocean delivered me

Though the pressure's hard to take
It's the only way I can escape
It seems a heavy choice to make
And now I am under all

And it's breaking over me
A thousand miles down to the sea bed
Found the place to rest my head
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Never let me go

And the arms of the ocean are carrying me
And all this devotion was rushing out of me
In the crushes of heaven for a sinner like me
But the arms of the ocean delivered me

And it's over
And I'm going under
But I'm not giving up
I'm just giving in

I'm slipping underneath
So cold and so sweet

And the arms of the ocean so sweet and so cold
And all this devotion I never knew at all
And the crushes are heaven for a sinner like me
And the arms of the ocean delivered me
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Deliver me
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Deliver me
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Deliver me
Never let me go
Never let me go
Never let me go
Never let me go

And it's over
(Never let me go, Never let me go)
And I'm going under
(Never let me go, Never let me go)
But I'm not giving up
(Never let me go, Never let me go)
I'm just giving in
(Never let me go, Never let me go)

I'm slipping underneath
(Never let me go, Never let me go)
So cold and so sweet
(Never let me go, Never let me go)

底の方から見上げると
海面を照らす月の光が
ゆらゆらと砕けながら煌めいてる
光が反射して輝く様子は
今も同じに見えるけど
あの頃は
まだこんなになってなかった

その大聖堂のなかにいると
静謐な時間が流れていく
そこでは息はできないけど
祈らなくても構わないし
口をきく必要もない
だから今はこうやって
自分のすべてを委ねてる

頭上で波が砕けてる
海底まで1,000マイルも
ずっと深く潜っていって
本当に安らげる場所を
やっとこうして見つけたの
このまま離さないで
つかまえていて
もうどこへも
やらないで

大海原の腕に抱き取られると
あれこれやってみようとする
気持もすっかりなくなってゆく
こんな罪深い人間には
砕ける波は天国だけど
大海原がその腕でこの身を運んでゆく

重みは耐えがたいほどだけど
それでもそうしなければ
ここを逃れて楽にはなれない
すぐに決断できることじゃないけど
もうなにもかも委ねるの

頭上で波が砕けてる
海底まで1,000マイルも
ずっと深く潜っていって
本当に安らげる場所を
やっとこうして見つけたの
このまま離さないで
つかまえていて
もうどこへも
やらないで

大海原の腕に抱き取られると
あれこれやってみようとする
気持もすっかりなくなってゆく
こんな罪深い人間には
砕ける波は天国だけど
大海原がその腕でこの身を運んでゆく

そして終わりが来た
こうやって沈んでゆく
だけど諦めたわけじゃないの
なにもかもすっかり委ねただけ

海の底へと滑り込んでゆく
とても冷たいけれど心地がいい

大海原の腕は
とても冷たいけれど心地よく
そこに抱き取られると
考えたこともなかったほど
なにもかも差し出すことができる
こんな罪深い人間には
砕ける波も天国だけど
その波がこの身を運んでゆく

このまま離さないで
つかまえていて
もうどこへも
やらないで
運んで行って(4回繰り返し)

そして終わりが来た
(このまま離さず捕まえていて)
こうやって沈んでゆく
(もうどこへもやらないで)
だけど諦めたわけじゃないの
(このまま離さず捕まえていて)
なにもかもすっかり委ねただけ
(もうどこへもやらないで)

海の底へと滑り込んでゆく
(このまま離さず捕まえていて)
とても冷たいけれど心地がいい
(もうどこへもやらないで)

(余談)

Ceremonialsというアルバムに収録されているこの曲ですが,Florence Welchは「ゴスペル風なのは讃美歌みたいなものをやりたくて仕方なかった。とにかく讃美歌風のものに弱い。それがいかにも霊的なものでも,ただの埃まみれのグレゴリオ聖歌のアルバムでも」と語っています。

また,このアルバムについている小冊子のなかで,子どもの頃よくプールの底で泳いでいたこと,そしてその時は息ができるような気がしたことなどを語っている他,自分が何かに圧倒されるというテーマに惹かれ続けてきたということにも触れているそうです。

実は私も子どもの頃,プールの底を泳ぐのが大変好きでした。Florence Welchと同じように,ひょっとしたら息ができるのではないかとも考えましたし,音の全く聞こえない水の中にいると,水面に反射する日の光がリボンのように揺れながらいくつも差し込んで来て,まるで夢を見ているような気がしました。

歌詞やミュージック・ヴィデオを見る限りでは,この曲自体はそういう明るいテーマではないと思われますが,それでも人生には,「このまま人生が終わってもいい」と思える瞬間が何度かあって,それがいわゆる「悟り」あるいは「絶対的帰依」というものなのかもしれません。

確かに「なるようにしかならない」と思った瞬間,それまで頭を悩ませていた様々な事柄がどうでもよくなり,目の前を遮っていた障害物がすべて消えて,逆に前へ進めたような気がします。

日常生活では周囲から「諦めるな」「それ以上を目指せ」と求められることがほとんどですが,果たしてそれで幸せになれるのか。ひょっとするとこの曲のように,何かに圧倒されることで「己の非力さ」を認識し「できたらもうけもん」くらいに考えていた方が結果的に求めるものが得られるのかもしれません。

2 件のコメント:

  1. vestigeさん、こんにちは。
    プールの底、大変懐かしい記憶です。遊びの合間にふと見上げた水面の明るさと揺らぎ、いつの間にか消えている周囲の気配、こちらの方が本当の世界なのではないかというたわいもない空想。私にとってのプールの底はそんな記憶ですが、大気中とは異なる身体感覚を伴う記憶というのは強固なのか、いざ思い出してみると結構リアルに甦ってきます。

    この曲は「Ceremonials」の中で最も好きな曲です、冒頭から非常に映像的で入り込みやすいですし。「Ceremonials」は歌詞や訳が付属しないという、ひよこレベルの英語力を誇る私にはなかなか酷な仕様になっておりまして、そのため二ヶ月ほど前に自力で挑戦したばかりでした。その際「委ねる」という日本語は浮かびもしませんでしたが、言われてみれば漂ってる感もありますしこの曲にしっくりはまる表現だと(勝手に)納得いたしました。今日でこの曲も脳内格納庫のあるべき位置に収まりスッキリしました、ありがとうございます。

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    1. コメントありがとうございます。子どもの頃は魔法のように美しかった夏ですが,今ではその暑さだけが呪いのように感じられます。・・・・大人になって確実に「何か」を失ってしまったようです。

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