2013年10月21日月曜日

Christmas Card From A Hooker In Minneapolis トム・ウェイツ (Tom Waits)

一説によれば,この曲はCharles BukowskiのRoominghouse Madrigalsという詩集に収録されたある詩を翻案したといわれていますが,この曲のクレジットにはTom Waitsと書かれてあります。その詩集を読んだことがないので,その話が事実かどうかわかりませんが,この歌詞が傑作であることは間違いありません。
最初の連で,主人公(おそらく娼婦)は,彼女が唯一心を寄せる(そしておそらく愛している)人物Charlieに,自分の「夫」は楽器を演奏してスポーツするようなタイプで,現在の自分がいかに幸せで恵まれているかを語り続けますが,最後の連で,実に巧みな捻りが登場します。悲しいけれど美しい曲です。
Some say it's an adapted from a Charles Bukowski poem in his Roominghouse Madrigals.  The credit of the song tells Tom Waits as the writer.  Since I don't know the poem, I'm not sure if the claim is true or not but I'm sure the lyrics are definitely a masterpiece.
The protagonist (probably a hooker) keeps telling 'Charlie' who is someone she trusts and probably loves that how happy and blessed she is, saying her 'husband' plays the trombone" and "works out at the track."  A great twist awaits you in the last stanza.  A sad yet beautiful song.
Christmas Card From A Hooker In Minneapolis  (Tom Waits)
(Neko Case Cover)
hey Charley I'm pregnant
and living on 9-th street
right above a dirty bookstore
off cuclid avenue
and I stopped taking dope
and I quit drinking whiskey
and my old man plays the trombone
and works out at the track.

and he says that he loves me
even though its not his baby
and he says that he'll raise him up
like he would his own son
and he gave me a ring
that was worn by his mother
and he takes me out dancin
every saturday nite.

and hey Charley I think about you
everytime I pass a fillin' station
on account of all the grease
you used to wear in your hair
and I still have that record
of little anthony & the imperials
but someone stole my record player
how do you like that?

hey Charley I almost went crazy
after mario got busted
so I went back to omaha to
live with my folks
but everyone I used to know
was either dead or in prison
so I came back in minneapolis
this time I think I'm gonna stay.

hey Charley I think I'm happy
for the first time since my accident
and I wish I had all the money
that we used to spend on dope
I'd buy me a used car lot
and I wouldn't sell any of em
I'd just drive a different car
every day dependin on how
I feel.

hey Charley
for chrissakes
do you want to know
the truth of it?
I don't have a husband
he don't play the trombone
and I need to borrow money
to pay this lawyer
and Charley, hey
I'll be eligible for parole
come valentines day.

ねえ,チャーリイ
あたし子どもが出来たんだ
今は9番通りの
エロ本屋の上に住んでる
cuclid街のはずれだよ
だからヤクはもう止めたし
ウィスキーみたいな酒もやってない
ダンナはトロンボーンを演奏して
運動場で汗を流すような人なんだよ

それでこう言ってくれんの
好きだって
たとえお腹の子どもが他人の子でも
自分で育てるって言ってくれてる
実の息子と思ってそうするって
指輪もくれたんだ
あいつのお母さんがしてたやつ
それで踊りに連れてってくれる
土曜の夜は必ずね

ねえ,チャーリイ
いつもあんたのことを思い出すの
ガソリン・スタンドのそばを通ると
あの整髪剤(グリース)の匂いのせいだよ
あんたが昔髪につけてたでしょ?
あのレコードもまだ持ってるよ
リトル・アンソニー&インペリアルズのヤツ
だけどプレイヤーを盗まれちゃった
びっくりだよね?

ねえ,チャーリイ
もうどうにかなりそうだったよ
マリオがサツに捕まったから
仕方ないからオマハに戻って
家族と暮らそうと思ったけど
昔の知り合いは
みんなあの世かムショ暮らし
だからミネアポリスに戻って来た
今度こそここで頑張るつもり

ねえ,チャーリイ
これが幸せなんじゃないのかな?
あのことがあって
初めてそう思えたよ
あのお金があったらって
思ったりもするんだけど
みんなヤクに使っちゃたしね
中古の車をいくつも買うつもり
でも1台だって売ったりしないよ
違う車を運転するの
毎日日替わりで
その日の気分に合わせて

ねえ,チャーリイ
お願い
本当のことが知りたくない?
結婚なんてしてないんだよ
本当はダンナなんていやしないし
トロンボーンも吹いてない
それどころかお金を借りなきゃいけないの
この弁護士のセンセイに
払わなきゃいけないから
だけどね,チャーリイ
そうすれば
ヴァレンタイン・デイには
保釈になって外に出られるの

(補足)

最初この歌詞を読んだ時,私は「チャーリイ」が子どもの父親なのかもと思いましたが,最後の連で彼女が収監されていることがわかるのでその可能性はありません。

ならば,my old manなのかと言うと,彼女自身が「結婚なんてしてないんだよ,本当はダンナなんていやしないし(I don't have a husband)」と言っているのでその可能性もありません。だとすれば,子どもの父親は一体誰なのか?彼女の職業を考えれば,おそらく客の一人でしょう。

そしてこの曲の一番悲しいところは,これが「Christmas Card From A Hooker In Minneapolis」である点です。本来であれば,楽しかるべきクリスマス・カードにこんな内容を書かねばならない主人公の境遇が辛すぎます。

(余談)

ところで,この曲のついたコメントのなかに面白いものがありました。「ヴァレンタイン・デイには
保釈になって外に出られるの(I'll be eligible for parole, come valentines day)」という最後の箇所は,Charlieに向けてプロポーズしているのではないかという説です。

確かに,日本ではいざ知らずアチラではヴァレンタイン・デーにプロポーズというのは比較的よくあることのようなので,その可能性は低くないような気がしますし,もしそれを意図しているとしたら,非常に緻密に作りこまれた歌詞と言えるでしょう。

そもそもこの曲のタイトルはChristmas Card From A Hooker In Minneapolisなので,場面がクリスマス前(おそらく感謝祭が終わったすぐ後くらい)であることは明らかです。この時期というのは,日本でも街中がなんとなく華やかな雰囲気に包まれるものですが,それだけに,その時期に刑務所に入っているという主人公の悲惨な現状が際立ちます。


3 件のコメント:

  1. おぉトム・ウェイツですか、
    アメコミヒーロー映画の『ダークナイト』で、
    故ヒース・レジャーが、悪役のジョーカーを演じるに至って、
    「トム・ウェイツの仕草を参考にしているのでは?」と一部ファンの間で話題になっていたことから
    彼を知りました。
    彼の曲は「Temptation」くらいしかまともに聴いたことはないのですが、
    凄く印象に残る歌い方なので、よく覚えています。

    英語が苦手な僕は何となくでしか歌詞を解釈できませんが、
    彼には歌い方や仕草などから、
    『ヘビースモーカーで声がガラガラでジョークの上手いオジサン』くらいの
    イメージしかありませんでした。
    しかしこの歌を聴くと、とても情緒深くて哀愁溢れる一面も持っているようで、少し感動しました。

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    1. コメントありがとうございます。どこかで「Tom Waitsの声はもはやハスキーという概念を超えている」というコメントを読んだことがあり,その時激しく同意したのですが,どらもん様も同様にお考えであることを知り,人間誰しも考えることは同じだなと妙に納得いたしました。

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  2. 私もこの歌は大好きです。泣けてきますね。
    チャーリーという人はどういう人なのでしょうか。謎の人物ですね。
    私はスナックのマスターのようなイメージで聞いていました。
    「お金を貸してほしい、バレンタインまでに出所するからその時に返すね」と言っているように聞こえました。お金がいくらかわかりませんが、返せる当ては無いように思えるところが悲しいですね。

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