2014年2月27日木曜日

Ordinary Love ユー・ツー (U2)

この曲は1994から1999年まで南アフリカ共和国の大統領であった故ネルソン・マンデラ氏の自伝的映画「Mandela: Long Walk to Freedom」のために書き下ろされたものです。
映画会社重役のHarvey Weinsteinからマンデラ氏のために曲を書かないかと持ちかけられたU2は,その申し出を受けるために,進行中のアルバム制作を中断しなければならなかったそうですが,この曲を聞くとそれだけの価値はあったと思われます。
This song was written for "Mandela: Long Walk to Freedom" a biographical picture of late Nelson Mandela who was South African President from 1994 to 1999.
Receiving a call from studio executive Harvey Weinstein asking them to solicit a song for Mandela, U2 had to stop what they're doing to accept the offer in the middle of their album production.  Listening to the song, I believe that's worth it.
Ordinary Love  (U2)
The sea wants to kiss the golden shore
The sunlight warms your skin
All the beauty that's been lost before wants to find us again

I can't fight you any more, it's you I'm fighting for
The sea throws rock together but time leaves us polished stones

We can't fall any further
If we can't feel ordinary love
And we can't reach any higher,
If we can't deal with ordinary love

Birds fly high in the summer sky and rest on the breeze.
The same wind will take care of you and I.
We'll build our house in the trees.

Your heart is on my sleeve
Did you put it there with a magic marker?
For years I would believe that the world couldn't wash it away

'Cause

We can't fall any further
If we can't feel ordinary love
And we can't reach any higher
If we cannot deal with ordinary love

Are we tough enough for ordinary love?

We can't fall any further, if
We can't feel ordinary love
And we can't reach any higher,
If we can't deal with ordinary love

We can't fall any further, if
We can't feel ordinary love
And we can't reach any higher,
If we can't deal with ordinary love

金色に輝く浜辺をめがけ
海から波が打ち寄せる
温かい陽の光が
その肌に降り注ぐ
昔はすっかり姿を消してた
美しい世の中が
またこの手に戻ってくる

お前とはもう争いたくない
今はお前のために戦ってるから
変革の海に投げ込まれた
ゴツゴツの石みたいに  *
最初はお互いぶつかってた
だけど時が過ぎるうち
気付けばお互い角が取れ
磨かれ輝く石になった

大きなことはやれなくなる
「当たり前の思いやり」を
感じることができなかったら
だからこの先を目指すなら
そういう「当たり前の思いやり」を
持つようにしなきゃならないはずだ

夏空を鳥たちが高く飛び回り
あのそよ風に吹かれながら
その翼を休めてる
これからは同じその風が
敵も味方も包んでくれる
これからは一緒になって
あの森の中に **
みんなの「家」を建てるんだ

本心はちゃんとわかってる
だけどそいつはそこに
なかなか消えないような
油性ペンで書いてあるのか?
昔はずっとこう思ってた
ああいうことは世の中からなくならない
だって

大きなことはやれなくなる
「当たり前の思いやり」を
感じることができなかったら
だからこの先を目指すなら
そういう「当たり前の思いやり」を
持つようにしなきゃならないはずだ

だけど「当たり前の思いやり」を
持ち続けていくだけの
力があるって言えるのか?

大きなことはやれなくなる
「当たり前の思いやり」を
感じることができなかったら
だからこの先を目指すなら
そういう「当たり前の思いやり」を
持つようにしなきゃならないはずだ

大きなことはやれなくなる
「当たり前の思いやり」を
感じることができなかったら
だからこの先を目指すなら
そういう「当たり前の思いやり」を
持つようにしなきゃならないはずだ

(補足)

この歌詞は①南アフリカの政治状況と②(映画に描かれた)マンデラ氏個人の状況の両方に対応するように作られているそうですが,ここでは前者の①南アフリカの政治状況という視点から和訳しています。

*     The sea throws rock together but time leaves us polished stonesの部分については①(角が取れて)つまらない存在になった②(角が取れて)器の大きい人間になったという正反対の解釈が可能ですが,この曲が作られた背景(ネルソン・マンデラ氏の視点から書かれている)という点を考えて②の解釈を採用しています。

**    We'll build our house in the treesのthe treesはここでは「あの森」と訳していますが,個人的には「アフリカ」を表しているのではないかと思っています。過去の確執を越え,少数の白人と多数の黒人が共存できる国をアフリカ大陸のなかに作ろうと語りかけているような気がします。

(余談)

この曲の白眉は「お前とはもう争いたくない,今はお前のために戦ってるから」(I can't fight you any more, it's you (that / who) I'm fighting for)でしょう。I can'tというあたりに「やってはいけない,やるわけにはいかない」感が漂いますし,それに続くのが「今はお前のために戦ってるから」という強調構文になっている点も素晴らしい。

では主人公は現在一体誰と戦っているのか?私はおそらく「相手を憎む自分自身の心」ではないかと思います。確かにここであっさりと「もうお互い敵じゃない」と宣言してしまえば,それはキリスト教的態度としては正しいかもしれませんが,それでは実態とかなり乖離したものになってしまいます。

無論広い世の中にはそういった神業的なこともあっさりやってのけられる方もおいでになるのかもしれませんが,私個人に限って言えば,今まで敵として戦ってきた相手をそう簡単に受け容れることはできません。頭ではわかっていても,心のどこかで「憎い」という気持ちが残り,それが態度に出てしまうような気がしますが,それを許してしまってはまた同じことの繰り返しになってしまいます。それがわかっているからこそ,主人公は「お前とはもう争いたくない,今はお前のために戦ってるから」と言っているのだと思います。

以前もどこかでお話ししたかもしれませんが,普通の人間にとって最も難しいのが敵を「赦(ゆる)すこと」です。この曲が素晴らしいのは,その点をしっかり認識しつつ,それでも敢えてそこを乗り越えていこうと訴えている点ではないかと思います。

1 件のコメント:

  1. 初めまして。
    素晴らしい対訳と見解ですね。

    「お前とはもう争いたくない,今はお前のために戦ってるから」の部分は、本当に凄い歌詞ですよね。




    返信削除