2015年2月10日火曜日

I'm Not Gonna Miss You グレン・キャンベル (Glen Campbell)

我々は一体何者なのか?我々を決定づけているのは一体何なのか?科学者はゲノムだと言い,Fall Out BoyはSave Rock and Rollの中で「お前がいいと思うものが今のお前を作ってる,お前がいいと言うヤツがお前を作ってるわけじゃない(You're what you love, not who loves you)」と言っています。http://oyogetaiyakukun.blogspot.jp/2013/04/save-rock-and-roll-fall-out-boy-ft.html
宗教指導者や神学者なら別の答えをするのかもしれませんが,私はこう考えています:我々を我々たらしめるのは自分の記憶です。だからこそ記憶を失うことがこれほど恐ろしいのでしょう。
カントリー歌手のGlen Campbellは,4年前からアルツハイマー病と闘い,昨年それ専用の長期療養施設に入所しました。この曲は2014年に公開された彼のドキュメンタリー映画Glen Campbell: I'll Be Meのテーマ曲で,今年のアカデミー賞の最優秀歌曲賞にノミネートされています。
Who are we?  What defines us?  Scientists say it's our genome but Fall Out Boy say "You're what you love, not who loves you" in their Save Rock'n Roll.
http://oyogetaiyakukun.blogspot.jp/2013/04/save-rock-and-roll-fall-out-boy-ft.html
Religious leaders and theologians would have a different answer to the question and this is mine:  I think it's our memory that defines us.  That's why we're so afraid of losing it.
A country singer Glen Campbell has been battling Alzheimer's disease for more than four years and moved into an Alzheimer's long-term care and treatment facility last year.  This song is the theme of a 2014 American documentary film, Glen Campbell: I'll Be Me.  It's nominated for the Academy Awards Best Original Song.
I'm Not Gonna Miss You  (Glen Campbell)
I'm still here, but yet I'm gone
I don't play guitar or sing my songs
They never defined who I am
The man that loves you 'til the end

You're the last person I will love
You're the last face I will recall
And best of all, I'm not gonna miss you
Not gonna miss you

I'm never gonna hold you like I did
Or say I love you to the kids
You're never gonna see it in my eyes
It's not gonna hurt me when you cry

I'm never gonna know what you go through
All the things I say or do
All the hurt and all the pain
One thing selfishly remains

I'm not gonna miss you
I'm not gonna miss you

今もこうして生きているけど
本当はもうここにはいない
死んだようなものなんだ
ギターだって弾かないし
歌を歌うこともない
だけどだからって
それだけが俺のすべてじゃない
この世に生きている限り
お前を愛しているヤツが
俺って人間なんだから

これからは
誰かを好きになったとしても
もうそれはお前じゃないし
最後に思い出す顔も
他の誰かの顔だけど
それでもとにかく有難いのは
お前がいなくて寂しいなんて
思わなくなることなんだ

昔みたいにお前のことを
抱きしめたりしなくなる
子どもたちに対しても
愛してるって言わなくなるし
しかもそういう気持ちさえ
じきに失くしてしまうけど
そのことで
たとえお前が悲しんでも
それさえ何とも思わなくなる

お前が悩んでいることも
もう2度とわからない
自分の言葉や行動も
辛いことや苦しいことも
なにもかも
わからなくなっていくけれど
これだけは変わらない
随分ひどい話だけれど

たとえお前がいなくても
寂しいなんて思わなくなる
会いたいなんていうことも
感じなくなっていくんだよ

(余談)

コーラスの

You're the last person I will love
You're the last face I will recall
And best of all, I'm not gonna miss you
Not gonna miss you

最初この曲のタイトルだけを見た時は,ただの破局ソングだと思ったのですが,ミュージック・ヴィデオを見てそれだけではないと感じ,この曲を取り上げることにしました。ところで上記の箇所,よくある破局ソングだと考えれば和訳するのに特別悩むこともなかったのですが,この曲が使われた映画の文脈で考えると,なかなかに和訳が難しいことがわかってきました。

特に太字にしたthe last person...the last face という表現です。通常この表現は,例えばYou're the last person I expected to see here.(まさかここで会うとは思いませんでした)というように,字面とは逆の意味で使われるのですが,この映画の重要なテーマのひとつ,アルツハイマー病という文脈で考えると,ここは字義通りに取りたくなります。すなわち「最後に愛してるのはお前だけだ」という意味です。

ところがその一方で,その後に「とにかくなにより有難いのは,お前がいなくて寂しいなんて,思わなくなることなんだ(And best of all, I'm not gonna miss you)」という文が続くため,その意味で取ると辻褄が合いません。

最終的には「しかもそういう気持ちさえ,じきに失くしてしまうけど(You're never gonna see it in my eyes)」や「そのことで,たとえお前が悲しんでも,それさえ何とも思わなくなる(It's not gonna hurt me when you cry)」などの他の箇所とも考え合わせ,本来の「~だけはしない」という意味に取りましたが,果たしてこれが正解なのかどうかは映画を観てみないとわかりません。

とはいうものの,涙腺方面に甚だ自信がないので,果たしてこの作品を劇場で見る勇気が出るかどうかは疑問です。

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