2012年7月28日土曜日

Back To Black エイミー・ワインハウス (Amy Winehouse)

コウモリや猫と違い,我々人間は生物学的にも生理学的にも夜行性ではありません。通常,「黒」や「闇」という単語は,「違法」「抑うつ」「絶望」「悪魔」などの負の意味を持つ言葉を連想させますが,それはおそらくこういう理由でしょう。これに対して,「白」「光」は,「正直」「潔白」「無垢」などの正の意味を持つ言葉を連想させます。
さてこの曲,確かに悲しく,気の滅入る感じで,また葬儀の情景を描いたミュージック・ヴィデオがそれに拍車をかけています。しかし,仮に人間が夜行性だったらどうでしょうか?もしそうなら,この曲は全く違うイメージになるのではないでしょうか?人間が夜行性なら,「黒」は,安らぎや平穏といった言葉を連想させるはずです。その場合,Black, black, black, black, Black, black, black, I go back to, I go back toの箇所は,いわば「良かった。これでやっとまた安心できる」といったような意味になるのかもしれません。
Unlike bats and cats, we humans are not biologically and physiologically nocturnal. Probably that's why the word "black" is usually associated with negative words like, illegal, depression, despair, devil and death, while the word "white" with positive ones like, honest, innocent and pure.
It's true that this is a rather sad and depressive song and the music video representing a funeral supports it. Suppose we are nocturnal, this song would have a completely different or opposite meaning. If we were, the word "black" would be associated with words like comfort and peace. The bridge, "Black, black, black, black, Black, black, black, I go back to, I go back to" would mean something like "Thank God. Now I'm safe again."
Back To Black (Amy Winehouse)
[Verse 1: Amy]
He left no time to regret
Kept his dick wet
With his same old safe bet
Me and my head high
And my tears dry
Get on without my guy
You went back to what you knew
So far removed
From all that we went through
And I tread my troubled track
My odds are stacked
I'll go back to black...

[Hook]
We only said Goodbye with words
I died a hundred times
You go back to her and I go back to us

[Verse 2: Amy]
I loved you much;
It's not enough
You love blow
And I love puff
And life, is like a pipe
And I'm a tiny penny rollin'
Up the walls inside

[Hook]
We only said goodbye with words
I died a hundred times
You go back to her when I go back to

We only said goodbye with words
I died a hundred times
You go back to her and I go back to

[Bridge: Amy]
Black, black, black, black
Black, black, black
I go back to
I go back to

[Hook]
We only said goodbye with words
I died a hundred times
You go back to her and I go back to black

あいつは後悔なんかしたりしない
すぐに女を作ってよろしくやってる
相手は昔なじみのあの女
だけど気にしない 立ち直ってみせる
流した涙も乾いたよ
男なんかいなくてもやってける
なのに,あんたは前の女とよりを戻して
あたしのもとを離れて行った
2人の間に起こったいざこざなんか
今じゃ忘れて楽しくやってる
なのにこっちはまたどん底
抜け出す手立ても見つからなくて
あの暗闇に逆戻り

確かに別れるとは言ったけど,形だけだと思ってた
なのにそうじゃなかったから
あたしは何度も傷ついた
そっちはあの女とよりを戻してるのに
こっちは思い出を巻き戻してる

あんたが死ぬほど好きだったけど
それだけじゃダメだった
そっちが好きなのはコカインで
あたしが好きなのはハッパだもん
この生活はパイプみたい
あたしは小さな硬貨で
くるくると回りながらパイプの内側の壁を昇ってる
だけどそこからは出られない

確かに別れるとは言ったけど,形だけだと思ってた
なのにそうじゃなかったから
あたしは何度も傷ついた
そっちはあの女とよりを戻してるのに
こっちは思い出を巻き戻してる

確かに別れるとは言ったけど,形だけだと思ってた
なのにそうじゃなかったから
あたしは何度も傷ついた
そっちはあの女とよりを戻してるのに
こっちは思い出を巻き戻してる

もう今はどこまで行っても暗闇しかない
その暗闇に,絶望に
あたしはこうして逆戻り

確かに別れるとは言ったけど,形だけだと思ってた
なのにそうじゃなかったから
あたしは何度も傷ついた
そっちがあの女とよりを戻したから
あたしの心はまた暗闇に逆戻り


(補足)

英語歌詞だけ見ると,一見,登場人物は4人いるような感じがするかもしれません。「あの人」「あんた/そっち」「あの女」そして主人公です。ただ,「あの人」と「あんた/そっち」はおそらく同じ人物で,主人公が「あの人」と言っている時は,我々曲を聴いている人間に語りかけており,一方,「あんた/そっち」と言う時は,相手にそう語りかけているという点が違うだけです。

(余談)

この曲,内容といい,イントロのリズムといい,実に「演歌」です。その上彼女の歌い方に妙に「コブシ」がきいているため,より一層「演歌」感が加速しているような気がします。

それにしても,最初の連でいきなり4文字単語が登場した時は,さすがの(何がさすがなのかは自分でも不明ですが)私も若干焦りましたが,あれは要するに,相手の男(元彼)が女に節操がないということを表現しているだけなので,訳文ではさほど苦労せずにすみました。

このあたり,直接的な単語は何一つないのに,大変な苦戦いを強いられた「ボウリングの曲」とは対極をなすような気がいたします。

普通に言えば問題ないようなこと(=元彼は女に節操がない)を,わざわざ問題があるように言っているこの曲に対し,普通にはとても言えないようなことを,普通の単語で表現している「ボウリングの曲」。この辺りがいわゆる「性差」というものなのかもしれません。




とは申し上げたものの,あちらはあくまでも「ボウリングの曲」ですから,これもまた私の邪な心が見せたマボロシに違いないのですが・・・・・。

10 件のコメント:

  1. ブルーノ マーズがきっかけでお邪魔させて頂いてます。いつも丁寧な訳をありがとうございます。もちろん、ボーリングの曲も楽しませて頂きましたよ。
    エイミーは凄い人だと思います。あらゆる意味で⁉それだけに、とても残念です。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。初めてお声をお聞きするかと存じますが,にもかかわらず,さりげなく古今(「ボウリングの曲」)を踏まえてコメントなさるあたり,ただの通りすがりの方ではいらっしゃいますまい。
      さて,Amy Winehouseですが,仰る通り,本当に早すぎたと言うしかありません。あれから既に1年。近いうちに,追悼を兼ね,彼女の曲をもう一曲取り上げる予定にしております。その際はまたお声をお聞かせくださいますようお願い申し上げます。またお時間があれば,別館(twitter)の方へもおいでください。お待ちしております。

      削除
  2. ここ数日ブログを拝見できませんでした・・・
    俺も夜行性でよく夜に散歩にいきます。おちつきますね
    ボーリングは・・・幻聴ですw

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。夏の間,昼間は厚さでほとんど行動できないので,私もいきおい夜に行動しがちになります。また夜になると,家々の部屋の灯りが美しく強調されるので見ていて大変落ち着きます。先ほど走って来たのですが,今日のBGMはその「ボウリングの曲」。走りながら思わず笑ってしまい,傍から見たら大変怪しいヤツだったと思います。

      削除
  3. いつもありがたく楽曲理解の参考にさせて頂いています。どうしてもっと早く彼女の存在(よさ)に気付かなかったのか…。エイミー専用のページを作って頂けると開きやすいのですが?もうあります?最近のお気に入りは、when my eyysです。お時間があればぜひ、対訳お願いしたいのですが…。ダメ?

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。大変申し訳ないのですが,ページ右上でもお知らせしているようにリクエストは現在のところ一切受け付けておりません。

      削除
  4. はじめまして、ジミーと申します。
    ここに書いてある。
    ボウリングの曲とはどういう意味(符牒⁇)ですか?

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。お尋ねの「ボウリングの曲」ですが,こちらについては,右上の「今週の人気の投稿」の下にある「用語集(Glossary)」をご覧くださるとおわかりいただけるかと存じます。

      削除
  5. 私はこの曲、「ディックを濡らしてる」が衝撃でした

    返信削除
  6. " Back To Black "
    前奏のピアノが耳に残り…
    ストリングスが入った ドラマティックな部分も好みです。
    >実に演歌です。
    この言葉 が曲の余韻にぴったり!脳裏に残ります。

    返信削除