2012年10月26日金曜日

Carnation ザ・ジャム (The Jam)

この曲は名曲なのに評価が不当に低いという人がいるのですが,確かに納得です。ただ,本当に最後まで歌詞を読まないとこの曲の扱っているテーマはわからないかもしれませんし,それがわからなければ,この曲の真価もわからないので,落ち着いて聴かねばなりません。
ところで英語では,カーネーション,とりわけピンクのカーネーションは母親の不滅の愛を象徴するものとか。因みにWikipediaでは::
ピンクノカーネーションには象徴的・歴史的に大きな意味合いがある。キリスト教の伝説によれば,キリストが十字架を運んだ際に地上に初めてピンクのカーネーションが出現した。母親のマリアが息子の苦難を目にしてこぼした涙が大地に落ち,そこからカーネーションが生えたらしい。これによって,ピンクのカーネーションは母親の不滅の愛を象徴するものになった。
Some said this is one of the most underrated songs and I couldn't agree more.  You'll never know what it's talking about before the very end of the lyrics.  Otherwise, you'll never appreciate the quintessence of the song.  So be patient when you listen to this.
In English symbolism, carnation, especially pink one stands for/represents mother's undying love.  According to Wikipedia:
Pink carnations have the most symbolic and historical significance. According to a Christian legend, carnations first appeared on Earth as Jesus carried the Cross. The Virgin Mary shed tears at Jesus' plight, and carnations sprang up from where her tears fell. Thus the pink carnation became the symbol of a mother's undying love
Carnation  (The Jam)
(Liam Gallagher and Steve Cradock Cover)
If you gave me a fresh carnation
I would only crush it's tender petals
With me you'll have now escape
And at the same time there'll be nowhere to settle -
I trample down all life in my wake
I eat it up and take the cake
I just avert my eyes to the pain
Of someone's loss helping my gain
If you gave me a dream for my pocket
You'd be plugging in the wrong socket
With me there's no room for the future
With me there's no room with a view at all -
I am out of season all year 'round
Hear machinery roar to my empty sound
Touch my heart and feel winter
Hold my hand and be doomed forever -

If you gave me a fresh carnation
I would only crush it's tender petals
With me you'll have now escape
And at the same time there'll be nowhere to settle.
And if you're wondering by now who I am
Look no further than the mirror -
Because I am the Greed and Fear
And every ounce of Hate in you.

瑞々しく美しいカーネーションを捧げようとも
柔らかな花びらなど潰してやる
何の役にも立ちはしない
ここから逃れる術などないが
ここで面倒を見るつもりもない 
いつまでもそうして彷徨うがいい
行く手を阻もうものなら,容赦はしない
完膚なきまでに踏み潰し
骨までしゃぶりつくした挙句
それで頂点に立ってやる
他人の悩みをあざとく嗅ぎつけ
その苦悩を肴に美酒に酔う
呑気に夢など託そうものなら
とんだお門違いというものだ
ここにこうしている限り,お前に将来など一切ない
明るい未来など来やしない
時期も場所柄も知ったことか 思う存分暴れてやる
機械の立てる轟音さえ,この心には届かない 
そんなものに意味などない
この心に毒されたら,「絶望」の正体が見えてくる
せいぜいこのまま最後まで破滅の道を歩むがいい

瑞々しく美しいカーネーションを捧げようとも
柔らかな花びらなど捻り潰してやる
何の役にも立ちはしない
ここから逃れる術などないが
ここで世話してやるつもりもない
いつまでもそうして彷徨うがいい
まだこの正体がわからないのか?
目の前の鏡の中をのぞいてみろ
お前の欲望,お前の恐怖
そして憎しみがこの私
なにもかもお前の心の中にある

(余談)

すごい曲でした。最初歌詞を読みながら,この主人公に感情移入するのは至難の業だなと考えておりました。今までの経験上,いかに酷い主人公でもなにかひとつくらいは同意できるところがあったのですが,コイツは違います。知り合いにいたら絶縁してます。こんな奴,決して関わりたくない。果たしてこれでちゃんと和訳ができるのか思わず心配になりました。

というのも,あくまでも個人的にはという前提でお話ししますが,和訳をする場合,歌詞に登場する人物に多少なりとも感情移入というか「ああそれはあるかも」というところがないと,和訳できません。この表現が正しいかどうかわかりませんが,訳文に「エグみ」や「臭み」が出てしまいます。無論プロの方はその辺りを割り切り,見事に料理なさるのでしょうが,素人の私にはそれができません。

が・・・そういうことだったわけですね。

なるほど深い。これならone of the most underratedといわれるのも頷けます。今まで取り扱った中でも唯一にして無二の曲かもしれません。さすがはThe Jam。温故知新の真の意味を見せつけられた気がしました。




12 件のコメント:

  1. Thank you for your great translation!
    I'm deeply impressed to read it.

    Sorry, I'm using Japanese from this point to tell you about my feedback exactly.

    ***

    まず、このハードな和訳を快諾してくださってありがとうございました。

    最初にこの和訳を読んだ瞬間ぶっ飛びました(笑)
    根底にある意味は同じ理解だったのですが
    日本語に変換する時点で、これほどまでに個人のフィルターというのは異なるものなのか!という点での驚き。

    主題はもう永遠のテーマ、"人の心の中にある闇"ですよね。
    最後までじっくりと聴かないと(読まないと)、この主人公は恐ろしく嫌なヤツでしかないという。
    でも、この短い歌詞の中でPaul Wellerはこの物語を完璧に完結させてるんです。しかも、おっしゃる通り、最後のたった二行で!もう唸るしかないです。


    で、個人のフィルターの話。

    驚いたのは、男性が訳すと(いや、個人のフィルターの問題ですかね)この歌はこんなにハードで恐ろしく力強い歌詞になるんだ!ということです。個人的には、この美しいメロディに影響されていて、もっとソフトなイメージだったので「こういう風に感じる人がいるんだ」と興味深かったです^^ そして行間の、私がうまく読み取れない部分を言葉に起こしてくれているので、そうかそうか!と納得しながら楽しめました。TKS!

    昨日イギリス人の青年とバーで話す機会があったので聞いたのですが、「英語には性別はほとんどない、女性っぽい/男性っぽい話し方というのもそれほどない」とのこと。

    それでも私のこの歌に対する解釈は、主人公が男性/Youは女性という前提で、一人称は基本的に「僕」だったのです。つまり「僕はその柔らかな花びらを握りつぶすだけだろう」・・・という風。でも、このサイトでの和訳を読んで初めて、自分の心が感じていた言葉?がどんなものかを理解できました。うまく表現できませんが、目の前の霧が晴れるように気持ち良かった!

    私、自力で歌詞を和訳しないと、洋楽の歌詞を覚えられない不器用な人間なので、こうして物語性のある和訳を読ませていただくのは、自分にない発想や表現を見つけられて助かります!

    大変だとは思いますが、楽しみつつ、これからも頑張ってくださいね☆

    N x

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。別館でお声をお聞きした際には「う・・・やってもたか?」と一瞬不安になりましたが,そうではないと知り安堵いたしました。
      最初「やってもたか?」と思ったのには実は理由がございます。こんなことを申し上げると,まさしくこの曲の主人公なのですが,このCarnation,私が今まで手掛けた和訳のなかでもかなり「楽な方」でした。おそらく私自身が大変に「イヤなヤツ」だからだと思うのですが,途中多少表現に迷うところはあったものの,さして悩むこともなく最後まで順調に和訳できたというのが正直なところです。
      一人称に関してですが,訳文を考える際,私は基本的に主語を意識しません。無論,曲によっては敢えて「俺」「お前」などを意識的に使う場合もありますが,内容を考えている間は一人称は省略しています。そうしなければ,日本語の一人称の力に引きずられて,訳文の世界が想像以上に狭まってしまうからです。
      実は当初はより文語的な表現にしていたのですが,あまりにおどろおどろしいので,若干口語寄りにシフトさせました。
      それにしても本当に素晴らしい曲で,この曲に出会えた幸運感謝したい気持ちです。

      削除
  2. なんだか解離性同一性障害やら、
    どこぞのチープなファンタジー物でよくある
    邪悪なボスキャラが
    「お前は俺で俺はお前そのものなのだよ!フッハッハッハ!」
    と高笑いするような情景を想像してしまいます。

    しかし、1人の人間を主人公において歌詞を展開させるという手法は
    いつの時代も当たり前のものだと思うのですが、
    まさか1人の人間の憎しみという感情を主人公に置いていたなんて……
    あまりの斬新さに絶句します。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。私も最後まで読んだ時には「そのテがあったか!」と思いました。ただこれは確かにどの人間にも共通するもので,私自身自分の「負の感情」から完全に自由でいられるかというと甚だ疑問です。この「負の感情」といかに折り合いをつけるかが,いわゆる「人間的成長」ということなのかもしれません。

      削除
  3. 好きな曲なので、対訳を読めてうれしいです!
    歌詞カードとはまた違う迫力ある雰囲気でいいですね。
    小説を読んだかのような読後感(?)がすばらしいです……

    ザ・ジャムの曲は他にも"Down in the Tube Station at Midnight"や"Private Hell"みたいに独特な物語を持った歌詞が多くてすごい好きです。

    返信削除
    返信
    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。厳密にはThe Jamの曲ではありませんが,The Style CouncilのYou're The Best Thingも取り上げております。こちらは普通のラヴソングですが,この曲を知っていると,ついつい裏読みしたくなってしまいます。
      さて,wt様,別館(twitter)でも余談を展開しております。お時間があればそちらへもおいでください。お待ちしております。

      削除
  4. The Jamというバンドについて、聞いたことはありませんでしたが、これは面白いですね。こういうスタイルの歌詞は初めて見ました。オリジナリティのあるものを作り出す人というのはすごいと思います。こういうことって、別の分野からのインスピレーションで可能なのでしょうか。 また、このこわい歌詞の訳がお上手ですね。ちょっとうますぎるんじゃないか、というような気も・・・。vestigeさんはどの分野からこういう語彙を身につけられたのだろうか、と思います。幅広い知識と教養のある人は強い。 欲望と恐怖と憎しみ。確かにどれも、気をつけないと、間違った方向に進んでしまう原因になるものだと思います。私の経験からいうと、ここに劣等感も入れたいような。これまで、言わなければよかった・しなければよかった、と思うようなことは、よく考えてみると自分の劣等感に端を発している、と気づくことが多かったので。

    返信削除
    返信
    1. コメント並びにお褒めのお言葉ありがとうございます。誰の心の中にもある「闇」。普段はそこから目を逸らして,まるでそんなものなどないかのように振る舞っているのに,ふとした瞬間,それを垣間見てしまった時の自己嫌悪と絶望感。身に覚えがあるだけに余計に恐ろしく感じられます。
      さて,こわい歌詞の和訳ですが,仮に仰る通りであるとすれば,それはおそらく私自身が大変「怖ろしい」人間であるからだと思います。どうかこのかわいいアヴァターに騙され,ゆめゆめ油断などなさいませんよう :)

      削除
  5. この歌詞の意味は、「母親の愛は、必ずしも無償の愛ではない」ということは、あなたの秀逸な和訳を読めば単純明快ですね。

    あなた方の仰る「闇」とは、母親の抱えるストレスに他ならないと考えますが、如何でしょう。

    返信削除
    返信
    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。お話を伺い「なるほどその発想があったか」と膝を打ちました。凡そ人間関係というものは,それがどんなものであれ最終的には「利害関係」なので,確かにhh様の仰る通りなのかもしれません。貴重なご意見ありがとうございました。

      削除
  6. この歌詞は当時のサッチャーの事を歌ったものだと思いますよ

    返信削除