2013年10月4日金曜日

And Yet スティング (Sting)

この曲はStingの11枚目のスタジオ・アルバムThe Last Shipに,先日取り上げたPractical Arrangementとともに収録されています。
Wikipediaによれば,このアルバムは2014年にブロード・ウェイでの上演されるStingによる同名のミュージカルにヒントを得て作成されたものであり,作品のテーマは「帰郷」と「自己の発見」。若いころのStingの思い出を基に,人間関係の複雑さや時間の流れ,家族や地域社会の重要性などといった普遍的な真理を回想してるそうです。
Like "Practical Arrangement" I posted before, this is a track from his eleventh studio album "The Last Ship."
According to Wikipedia, the album is inspired by Sting's forthcoming play of the same name, scheduled to debut on Broadway in 2014. It will explore the themes of homecoming and self-discovery, drawing upon Sting's memories of growing up, and reminiscing universal truths – the complexity of relationships, the passage of time and the importance of family and community
And Yet  (Sting)
This town, this stain on the sunrise,
Disguised in the mist this morning,
It's 8AM, a seagull shouts a sailor's warning.

This sky, this bend in the river,
Slows down and delivers me, the tide rolls back,
And all my memories fade to black,

And yet, and yet...I'm back.

This town has a strange magnetic pull,
Like a homing signal in your skull,
And you sail by the stars of the hemisphere,
Wondering how in the Hell did ye end up here?
It's like an underground river, or a hidden stream,
That flows through your head, and haunts your dreams,
And you stuffed those dreams in this canvas sack,
And there's nothing round here that the wide world lacks,

And yet, and yet...You're back.

Some nights I'd lie on the deck and I'd stare at the turning of the stars,
Those constellations hanging up there from the cables and the rigging,
I'd wonder if she saw the same, or managed to recall my name,
But why would she ever think of me? Some boy she loved who fled to sea?
And why waste time debating whether she'd be waiting for the likes of me?

So ye drift into port with the scum of the seas,
To the dance halls and the brothels where you took your ease!
And the ship's left the dock but you're half past caring,
And ye haven't got a clue whose bed you're sharing.
And your head's like a hammer on a bulkhead door,
And it feels like somebody might have broken your jaw,
And there's bloodstains and glass all over the floor,
And ye swear to God ye'll drink no more,
And yet, and yet.

In truth, it's too late to find her,
Too late to remind her at some garden gate,
Where a servant tells me I should wait,
And perhaps a door's slammed in my face,
My head must be in outer space,
And yet, and yet,
Before the sun has set,
Before the sea,
There may be something else that's waiting for,
The likes of me.

This town, this stain on the sunrise...

この街
夜明けの太陽についた
汚ないシミのようなこの街も
今朝はもやに霞んでた
時間は午前8時
一羽のかもめが鳴きながら
これから雨になると
船乗りたちに伝えてる

この空,そして川のこのカーブを見ていると
気持が落ち着いて自由になって
潮が引いてゆくように
あの頃の思い出も
すっかり闇の中へと消えていく

それでもまた戻って来た

この街には磁石のような
人を引き寄せられる力がある
まるで体の中の
帰巣本能に従うように
天空に浮かぶ星を頼りに
お前は船を進めながら
つい考えてしまうんだ
一体何故こうなってしまったのか?
地下を流れる水脈や
目には見えない流れのように
そいつは意識の中から流れ出て
お前の夢に取りついて
いつまで経っても消えていかない
だからお前はその夢を
キャンバス地のこの袋に詰めたんだ
広い世の中で見つからなきゃ
ここじゃ絶対に見つからないから

それでもお前はまた戻って来た

あの頃は夜になると
甲板の上に寝転がって
夜空の星が横切るのを
じっとそこで眺めてた
見上げると
ケーブルとか滑車とかワイヤとか
そんなものが目に入った
そしてそういうものの間から
星座がいくつもぶら下がってた
それを見ながら
あいつも同じ夜空を眺めてるのかなとか
まだ名前を忘れてないかな
なんてことを考えてた
だけど思い出すわけないじゃないか
好きだったのに自分を捨てて
船乗りになったヤツのことなんて
なのにどうしてこんなヤツを
まだ待ってくれてるかなんて
つまらないことを考えるんだ?

それで他のクズ野郎と一緒に
お前は港へと流れ着いては
盛り場のダンス・ホールや
売春宿に繰り出してゆく
そこでならくつろげるから!
しかも船はもうドッグを出てしまったのに
お前はさして気にもしてない
自分が寝てる相手さえ
誰なのかさっぱりわからない
隔壁扉にぶつけたみたいに
頭がガンガン鳴り響く
顎に一発喰らってしまった
そんな風にも思えてくる
床の上には一面に
いくつもの血のシミや
割れたガラスの破片が散らばってる
それでお前は神に誓う
もう酒は一切飲みません
それでも・・・

本当はわかってるんだ
今からじゃあいつは見つからない
もう手遅れだってこと
どこかの庭の入口で
あいつに思い出してもらいたくても
そのまますんなり入れてはもらえない
お待ちくださいと言われた挙句
多分鼻先でドアをぴしゃりと閉められるんだ
(こんなこと考えるなんて)
頭がどうにかしてるはずなんだけど
それでも
日が落ちてしまう前なら
海を見渡すこの場所なら
他の結末だってあるのかも
こんな自分みたいなヤツにだって

この街
夜明けの太陽についた
汚ないシミのようなこの街だけど

(余談)

Stingの歌詞はとにかく情景描写が優れているので,読みながらその歌詞の世界が眼前に広がってきます。個人的にこの曲の白眉だと思うのは「見上げると,ケーブルとか滑車とかワイヤとか
そんなものが目に入った,そしてそういうものの間から,星座がいくつもぶら下がってた(Those constellations hanging up there from the cables and the rigging,)」の箇所。イメージが鮮やかに浮かぶ箇所なのですが,それを表現しようとすると英語だとわずか11語で済むものの,日本語にすると語数が大幅に増えてしまいます。

3 件のコメント:

  1. おっしゃる通りだと思います。この詩は夜明けの情景からスタートしますが、一番印象的なのは、4連目の甲板の場面です。星が輝く、静かな夜の海。そんな漠然としたイメージが広がるところ、「見上げると ケーブルとか滑車とかワイヤとか そんなものが目に入った そしてそういうものの間から 星座がいくつもぶら下がってた」という描写が、くっきりと具体的な映像を喚起して圧巻です。constellationってこんなに美しい単語だったかな、とそこから離れられなくなってしまう。「いくつもぶら下がってた」という日本語の表現も、精彩があって好きだなあと思います。このThe Last Shipのアルバム、実はもう、手に入れたのですが、歌詞カードの初めにStingの書いた序文があって、その序文がまたいいんですよね。どんな舞台になるのか楽しみな気がします。

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    1. コメントありがとうございます。これは彼の10年ぶりのアルバムですが,あるインタヴューで何故この間作品を発表しなかったのかという問いに,彼が10年間言いたいことがなかったからといった趣旨のことを答えていたのが印象的でした。

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  2. まいばーすでーーーー

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