2014年9月16日火曜日

Song For Zula フォスフォレセン (Phosphorescent)

恋について歌った曲,恋の明るく幸せな面ではなく,むしろ暗い側面についての曲だというのが通説です。恋をするとある意味それに囚われてしまいます。相手のことを考え,心配し,ガッカリさせたらどうしよう,嫌われたらどうしようと不安になり,場合によっては,自分を見せられず,相手の望む姿になろうとしますが,これは苦しい。そこでこの曲の主人公は一人になることを(そして自由になることを)選ぶわけですが,果たしてそれは彼が本当に望んだことだったんでしょうか?
People say it's about love.  Not the bright and happy side of love but a rather dark side of it.  When you're in love, you're in a way trapped in it.  You think of your love,  worries about them and be afraid to fail them or that they hate you.  Sometimes it prevents you from being yourself.  You often try to be someone else who they expect you to be.  That's agonizing.  So in the song, the protagonist chose to be alone (and free) but was it what he really wanted?
Song For Zule  (Phosphorescent)
Some say love is a burning thing
That it makes a fiery ring
Oh but I know love as a fading thing
Just as fickle as a feather in a stream
See, honey, I saw love, you see it came to me
It puts its face up to my face so I could see
Yeah then I saw love disfigure me
Into something I am not recognizing

See the cage, it called...I said, come on in
I will not open myself up this way again
Nor lay my face to the soil, nor my teeth to the sand
I will not lay like this for days now upon end
You will not see me fall, nor see me struggle to stand
To be acknowledged by some touch from his gnarled hands
You see the cage, it called...I said, come on in
I will not open myself this way again

You see the moon is bright in that treetop night
I see the shadows that we cast in the cold clean light
My feet are gold and my heart is white
And we race right out on the desert plains all night
See honey I am not some broken thing
I do not lay in the dark waiting for thee
No my heart is gold, my feet are light
And I am racing out on the desert plains all night

So some say love is a burning thing
That it makes a fiery ring
Ah but I know love as a caging thing
Just a killer come to call from some awful dream
O and all you folks, you come to see
You just to stand there in the glass looking at me
But my heart is wild and my bones are steam
And I could kill you with my bare hands if I was free

人に言わせると
「恋」っていうヤツは
ヒリヒリと
焼け付くような気持ちになって
燃え上がる
炎のリングを描き出す
そういうようなものらしい
だけど自分が知っているのは
だんだん色褪せしぼんでいって
流れに浮かぶ羽根みたいに
いつだって
揺れ動いてるものなんだ
なあ,ハニー
そういう経験があるんだよ
わかるだろ?
目の前まで
迫ってきたからわかるんだ
そうだよ,それで「恋」をして
自分がすっかり変わってしまって
元の自分とは
全然違う人間に
なってることに気が付いた

あの檻を見てみなよ
あれが叫んでいたんだよ
さあここへ入ってこいって
だけどもうこれからは
こんな風になにもかも
見せてしまうつもりはないし
地面に顔をこすりつけ
砂を噛む思いをするのも
これが最後になるはずだ
もうこれからは
こんな風に何日も
ずっと落ち込んだりしない
もう絶対負けたりしない
必死になってあの人が
ゴツゴツした手で触れて
自分を認めてくれるのを
そこで待ったりなんかしない
あの檻が見えるだろ?
あれが叫んでいたんだよ
さあここへ入ってこいって
だけどもうこれからは
こんな風になにもかも
見せてしまうつもりはない

その目には
月があの木のてっぺんで
輝いてるのが見えるけど
この目には
冷たく澄んだ光の中に
2人の影が浮かんでる
足取りもすっかり軽くなって
心の迷いもなくなった
だからお互い一晩中
砂漠の上を走るんだ
なあ,ハニーわかるだろ?
もう今は
打ちのめされたりしてないって
相手のことを待ちながら
不安に押しつぶされたまま
苦しむこともなくなった
足取りもすっかり軽くなって
心の迷いもなくなった
だから一晩中だって
砂漠の上を走っていける

つまりな
人に言わせると
「恋」っていうヤツは
ヒリヒリと
焼け付くような気持ちになって
燃え上がる
炎のリングを描き出す
そういう風なものらしい
だけどこの自分には
人間を閉じ込める
檻みたいなものに思えるんだよ
まるで人殺しがするみたいに
なにかのひどい夢の中から
こっちを呼びにやってくる
みんなこっちへやって来い
そしてガラスの向こうに立って
こっちの方を眺めてろ
だけどもう
この心は自由だし
体も力に溢れてるんだ
もし自由になれたとしたら
素手でもお前を仕留められるぞ

(余談)

ミュージック・ヴィデオを見ると,リード文で述べたような解釈でさほど間違っていないようにも思えるのですが,本当のところはどうなのかはわかりません。

このバンドのフロントマンであるMatthew Houckは,伝統的なカントリー・ミュージックのファンであるらしく,そのことから最初の箇所は,Johnny CashのRing of FireやBette MidlerのThe Roseを踏まえたものであるとか言われていますが,全体的に非常に詩的で,それがために具体的なイメージの掴みにくい曲です。

特に困ったのが歌詞に登場するhis gnarled hands。一応「あの人がゴツゴツした手で」と訳しましたが,一体その「あの人」が具体的に誰を指すのかが全くわかりません。「神」なのかあるいは「特定の個人」なのか。またタイトルのZulaは一体誰なのか?考えれば考えるほど謎の深まる1曲です。

5 件のコメント:

  1. 理性をすっ飛ばして感性に直接プラグを繋がれて響いてくるような感触です。

    そもそも心地いいのかどうかもよく分からない微妙な揺らぎのある音の組み合わせの中で、歌詞の意味まで揺らいでいって、考えるほど頭の芯が痺れてくるようです。
    彼は自由を選んだ(檻の外にいる)のか、選ぼうとしている(出口付近)のか、選んだ自分を夢想している(中にいる)だけなのか、そもそもどれが自由なのか(本当にそれは檻なのか)…。

    それにしても意味を制限してしまったら価値が損なわれる気がする不思議な曲ですね。一般的に言っておよそ和訳サイト向きではないような気がしますが(笑)

    大袈裟ですが、この地球上で少なくとも私は今日一日の終わりにこの曲が聴けたことで心から満足しました。今日はいい日でした。
    この曲の意味は決まりませんでしたが、近日中に私がこの曲を購入するであろうことは決まりました(笑)

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    1. コメントありがとうございます。お気に召したことがなによりの喜びです。私も昨晩ロメオ様のコメントを拝見し心から満足いたしました。昨日はよい一日でした。
      さて,歌詞の意味ですが,海外の歌詞サイトにあった解釈のなかには,これはニューヨーク動物園のゴリラを主人公にした歌であるという斬新なものまであり,この歌詞の持つポテンシャルに大いに驚かされました。

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  2. コノハチョウ2014年9月17日 1:06

    毎日の更新、本当にお疲れ様です。
    Vestige様の選曲と和訳、文章の妙に魅せられ、更新をチェックするのがすっかり日課となってしまいました。


    一瞬、Zula(動画直前のタイトルだとZuleになってますね)を、ついZuluに空目してしまい、FXの自動売買のZulu Tradeで損失でも出してしまった人の悲哀の歌かと思ってしまいましたが、全然違いました。

    PVもすごく独特ですね。
    抑制された長回しの中で、繰り返される行動が段々力を蓄積していって鎖を絶つ一点に収束していく。
    途中、人物の部分だけ青と赤のカラーチャンネルがズレてしまう編集にはシビれました。
    曲自体が鎖が切れる瞬間にいきなりものすごく盛り上がる、というのではないけれど、弦楽器のフレーズのループする浮遊感が歌声と相まって心地良いです。

    歌詞の内容はとてもシリアスで重たいのに、聞いていると段々上に昇っていくようなイメージが湧くのが不思議です。

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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。仰る通り,どことなくふわふわと浮遊しているような不思議な感覚に襲われる曲です。
      ところでZuluですが,空耳ファンであった私は,もはやZuluと聞くと自動的に脳内で「尼僧侶,尼僧侶」と変換される仕様になっております。

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  3. Phosphorescentのこの曲が入ったアルバム、何回も聴いてます。
    特にこの曲は印象に残りますね。心に響きます。

    日本じゃほぼ無名ってのが寂しいところです・・。

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