2015年2月26日木曜日

Hotel California イーグルス (Eagles)

おそらくこちらをご覧のほぼ皆さんがこの曲をご存じでしょう。間違いなく1970年代を代表する名曲のひとつですし,その点については異論はないと思います。この曲について私自身は,これが精神を病んだ人々を治療する施設,すなわち精神病院について書かれたものだという話をどこかで聞いて,それをずっと信じていたのですが,2007年11月9日付けのDaily MailによればDon Henleyは「(この曲は)実際には行き過ぎた感のあるアメリカ文化と知り合いの女性について書いたものだが,同時に芸術(アート)とビジネス(商売)面との両立が難しくなっていることも扱っている」と語ってそれを否定しているそうです。
Probably almost every one of you knows this song.  It's one of the absolute classics from the 1970s and nobody can deny it.  Although I heard someone say it's about a treatment facility for mentally disturbed people or a mental institution, which I have believed for a long time, Daily Mail November 9, 2007 reported Don Henley denied it saying "It was really about the excesses of American culture and certain girls we knew. But it was also about the uneasy balance between art and commerce."
Hotel California  (Eagles)
[Verse 1 - Don Henley]
On a dark desert highway, cool wind in my hair
Warm smell of colitas, rising up through the air
Up ahead in the distance, I saw a shimmering light
My head grew heavy and my sight grew dim
I had to stop for the night
There she stood in the doorway
I heard the mission bell
And I was thinking to myself
This could be heaven or this could be hell
Then she lit up a candle and she showed me the way
There were voices down the corridor
I thought I heard them say

[Hook]
Welcome to the Hotel California
Such a lovely place
Such a lovely face
Plenty of room at the Hotel California
Any time of year
You can find it here

[Verse 2]
Her mind is Tiffany-twisted, she got the Mercedes Bends
She got a lot of pretty, pretty boys she calls friends
How they dance in the courtyard, sweet summer sweat
Some dance to remember, some dance to forget
So I called up the Captain
Please bring me my wine
He said, we haven't had that spirit here since 1969
And still those voices are calling from far away
Wake you up in the middle of the night
Just to hear them say

[Hook]
Welcome to the Hotel California
Such a lovely place (Such a lovely place)
Such a lovely face
They living it up at the Hotel California
What a nice surprise (what a nice surprise)
Bring your alibis

[Verse 3]
Mirrors on the ceiling
The pink champagne on ice
And she said: "We are all just prisoners here of our own device"
And in the master's chambers
They gathered for the feast
They stab it with their steely knives
But they just can't kill the beast
Last thing I remember, I was
Running for the door
I had to find the passage back
To the place I was before
"Relax" said the night man
"We are programmed to receive
You can check-out any time you like
But you can never leave!"

[Verse 1 - Don Henley]
砂漠のハイウェイを
闇の中で飛ばしていると
ひんやりとした風が吹き
この髪を抜けていく
空気中にマリファナの
ムッとする匂いが立ちのぼり
行く手の遥か遠くには
キラキラと瞬く光が見えて来る
次第に頭が重くなり
周りの景色も霞んでくる
それでその晩は
そこに宿を取ったんだ
玄関に女が一人立っていた
ベルの音が聞こえてくる
ふと思ったよ
この場所は天国か?
じゃなきゃ地獄かもなって
すると女がロウソクを
灯して案内してくれた
廊下のあちこちで
色んな声が聞こえてくる
確かこう言ってたよ

[Hook]
ようこそ
ホテル・カリフォルニアへ
素晴らしい場所ですし
お客様も粒揃い
お部屋も十分ございます
一年中いかなる時も
お部屋をご用意いたします

[Verse 2]
あいつの頭の中は  *
Tiffanyのことばかり
メルセデス・ベンツに乗って
イケメンの「友達」を何人も抱えてる
中庭で踊ってる
あいつらのあの姿
夏の日差しを浴びて
その体に浮かぶ汗
その瞬間をいつまでも
覚えていたくて踊るヤツ
そして忘れてしまいたい
何かがあって踊るヤツ
それでそこを仕切ってる
キャプテンに電話をかけて
ワインを頼むと言ったんだ **
そしたらヤツはこう言った
「1969年からそういうものはございません」
そして今もまだ遠くから
あの声が響いてきて
真夜中なのに目が覚める
声はこう言っている

[Hook]
ようこそ
ホテル・カリフォルニアへ
素晴らしい場所ですし
お客様も粒揃い
ホテル・カリフォルニアでは
贅沢だってし放題
びっくりなさったでしょうけど
そのことが
周囲に悟られないないように
準備なさってくださいね

[Verse 3]
鏡張りの天井と
氷の入ったペールで冷やした
高いピンクのシャンパーニュ
あいつはこう言ってたよ
「ここからは出られないけど
みんな好きでそうしてる」って
主人の部屋に集まって
派手な宴が開かれる
みんな鋭い鋼のナイフを
突き刺しているけれど
それじゃケモノは仕留められない
とにかく最後に覚えてるのは
ドアに駆け寄る自分の姿
帰り道をなんとか見つけて
元いた場所へ戻りたかった
「そう慌てないでくださいよ」と
夜勤のヤツが言ってたよ
「泊まりたいと仰れば
いつでも泊めて差し上げます
チェック・アウトもご自由に
ただ出て行くことだけは
何があってもできません!」

(補足)

* Tiffany-twisted,  she got the Mercedes Bends・・・ Benzではなく,Bendsとなっていることからもtwist and bend(捩じって曲げる)という表現と掛けているように思われます

** Please bring me my wine, He said, we haven't had that spirit here since 1969 ・・・ ワインは醸造酒であり蒸留酒(スピリッツ)ではないので,fighting spirits(闘争心)のような「気概」といった意味合いであると考えられます。


(余談)
genius.comの解説によると,http://genius.com/The-eagles-hotel-california-lyrics この曲はいわゆる「セックス・ドラッグ・ロックンロール」のフレーズに代表されるように,薬物やセックスといったものがはびこり腐敗し切った音楽業界を批判しているそうです。したがって,歌詞に登場するHotel Californiaとは音楽業界のことであり,主人公を含む宿泊客がアーティストということになります。

いずれにしろ,歌詞全体がメタファーなので,聴き手によって様々な解釈は可能で「ホテル・カリフォルニア=精神病院説」が流布したのもおそらくそれが原因でしょう。無論アーティストが否定しているので,そのセンはないのですが,ただの解釈と考えれば,それはそれで大変に面白い考え方ではあります。

歌詞の中でこのホテルは陽光降り注ぐ暖かいカリフォルニアにあることになっていますが,最後の「泊まりたいと仰れば,いつでも泊めて差し上げます,チェック・アウトもご自由に,ただ出て行くことだけは,何があってもできません!(We are programmed to receive, You can check-out any time you like, But you can never leave!)」の下りはあの「北」のホテルでも同じなのではないでしょうか?

12 件のコメント:

  1. どうも古い曲にばかりコメントしてるような気がするのですが、70年代ハンター(←自称)なので致し方ありません。となれば当然この曲をスルーすることはできませんでした。

    ところで、自分が生まれた時の世相が気になったことはありませんか?
    私は昔自分が生まれた時にビルボードのトップに立っていた音楽は何か気まぐれで調べてみた事があります。それが、この曲をタイトルに冠したアルバム「Hotel California」でした。(ちなみにアルバムはHotel Californiaで幕が開き、Last Resortで終わります)

    以来、まさに当該ホテルからチェックアウトできなくなったかのように聴き続けています。曲が始まると幻惑されるかのような独特の世界が立ち上がってきますし、歌詞・曲(特にギターの音色)はもちろんのこと、ジャケット写真や時代の空気まで含め全要素が絶妙なバランスでパッケージされて成立した奇跡的な曲だと思います。

    ・・・とか何とか偉そうに語っている私ですが、よくよく記憶を紐解いてみれば高校時代に初めて聞いた時の感想は、「アリバイ(alibi)って英語だったんだ、へー」みたいな感受性のかけらも感じられないものだったことは確かです(笑) 

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    1. コメントありがとうございます。この曲で始まりLast Resortで終わるとすれば,アルバム全体のコンセプトが,カリフォルニアそしてアメリカに象徴される消費社会と物質文明への警鐘ということになるのかもしれません。
      ・・・と言ってキレイにまとめようと思ったものの,戯れに「ホテル・カリフォルニア」で検索をかけたところ,パリや奄美大島,さらに浅草雷門,名古屋そして牛久と,凡そカリフォルニアとは縁もゆかりもなさそうなところに何故か「ホテル・カリフォルニア」が散在することが判明いたしました。ただそれらが全て旅館業法の管轄するホテルであるわけではなさそうです。

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    2. 返信ありがとうございます。
      まさか、「刹那的な一休み」が可能なホテルカリフォルニアが存在するとは。それはつまりさらっとチェックインして、お気軽にチェックアウトして立ち去ることができると…。
      何やら存在が矛盾している気がしますが、まあ、その方面のネーミングは無法地帯ですので致し方ないところでしょう(笑)

      (もちろん更に返信頂く必要はないです、お気遣いなく)

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  3. 最近になってこの曲を知り、哀愁漂うメロディーにすっかり魅了されてしまいました。
    頭の中で歌詞の意味を考えながら悶々としていたのですが、記事を見て色々と納得できました。

    メタファーが散りばめられた歌詞、見方によって様々な解釈ができて興味深いですね。
    和訳も非常に素晴らしく参考になりました。

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    1. コメント並びに過分なお言葉ありがとうございます。それにしても「ホテル〇〇」と言った場合,その後にどんな言葉が来るかで,その宿泊施設の営業方針がある程度決まってしまうような気がするのは私だけでしょうか?つまり,この曲はホテルに続く言葉が「カリフォルニア」だから成立するのであって,同じ州名であっても,仮にこれが「ホテル・ユタ」であっては,間違ってもシャンパーニュは出てこないと思われます。

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    2. 返信ありがとうございます。
      確かに、後に来る言葉によってかなりイメージが変わるような気がしますね。この曲全体の雰囲気とカリフォルニア自体の土地柄が絶妙にマッチして初めてこの「ホテル・カリフォルニア」になっているように思います。

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  4. 音楽&オーディオ好きの精神科医です。少し前の記事でのコメントですいません。この歌詞はいろいろ話題になってますが、その原因のひとつがアーティストのstatementがどうも混乱の原因なんです。歌詞の内容は聞いた個人が解釈すればそれでOKなんですが、この曲に関しては大人の事情が大きいかとw。
     まず精神病院説ですが、これはあたらずしも遠からずで、1958年米国カリフォルニア州に薬物依存の治療共同体『シナノン』が創設されていて、依存症治療の聖地です。当時、Eaglesのメンバーはヘロインの依存で苦しんでいた事を考えると、その依存症治療の施設内での描写でしょう。「キラキラと瞬く光が見えて来る 次第に頭が重くなり周りの景色も霞んでくる」これは薬物の影響で抗コリン作用で瞳孔が散大し光をまぶしく感じている描写でしょうし、ドラッグの酩酊を表している感じです。
    随所に依存の治療のフレーズWe are programmed to receiveは「もともと(脳のドパミンレセプターが薬物に)反応するようにプログラムされている」ということでしょうし、You can check-out any time you like But you can never leave!(いつでもここ「施設」からでていけるけど、それだと薬物から離れられないよ)という言い回しでしょうね。
     アルバム「ホテル・カリフォルニア」で初めてシングルカットされたのは、アルバムタイトル曲ではなくて、New kid in townであり、また、LPでこの曲が人気が出たのでその後シングルカットされていますので当時のことを知っている身としてはものすごく違和感がありました。そういう意味ではメンバーからもあまり注目してほしくない曲の感じがしますね。当局の目もあったでしょうし。この曲の歌詞は意味深なため何度もインタビューされていますが、They stab it with their steely knivesはスティーリーダンの揶揄だとか言ってますが、多分、この曲の本当の背景を隠したかったように思えます。Drug Songというより、薬物からの回復過程の曲というところでしょう。ちなみに全体が哀愁のある曲ですが、これは依存からの回復過程での抑うつ的な気分が強かったためこのフレーズができた、っていうのは流石に深読みすぎますかねw

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  5. 匿名2018年1月29日 0:32 の方のコメント、すごく納得できました。
    この曲についての長い間の疑問が、全部解けたと感じます。
    見に来て良かった!
    ただの通りすがりで恐縮ですが、ありがとうございました!

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    1. お返事ありがとうございます。抽象的で意味がぴんとこないと"Drug Song"のレッテルはられてしまうので、なんだかなぁというのがありまして、ちょっと突っ込んだ書き込みをしました。そういう意味では、特殊な世界を歌詞で書いていますが、その世界は割りとリアルな世界なんです。同じタイプの局でプロコルハルムの「青き影」もそうですね。Whiter shade of paleは「青白くなっていく」なんですがこれも薬物で血圧低下を起こして青白い顔色になっていくっていう歌詞です。まあ、あんまり有名すぎて本当の背景は絶対言わないでしょうけどw

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  6. とても素敵なサイトに巡り会えました.これだけでもhotel californiaが耳について離れなくなった甲斐があったwというものです.
    私は精神科医なので,この曲は薬物依存治療病棟あるいはDARC的施設の話としか思えません.ドン・ヘンリーとかグレン・フライとかマネージャーがごまかし発言してますが,ヤク中グルーピー女性の体験談(あるいは彼ら自身の体験談?)が元ネタだと思います.クルマのサイトで申し訳ないですが,こんな事を書いてみました.
    https://minkara.carview.co.jp/userid/284554/blog/43001640/
    面白がってもらえれば幸甚です.

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  7. 追記:
    匿名2018年1月29日 0:32さんのご指摘を調べさせていただき,精神病院ではなくSynanonの事だとわかりました.ありがとうございます.この曲の不気味な感じといい,まさにその通りだと思いました.とてもスッキリしました.

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