2012年8月12日日曜日

Wonderwall オアシス/オエイシス (Oasis)

そもそも「ワンダー・ウォール(Wonderwall)」とは何でしょうか?曲名について,バンドのギタリストであり主要ソングライターでもあるNoel Gallagherは,かつてそれは当時の恋人のことだと言っていたのですが,彼女と別れた後,その説明を変え,これは自分を自分自身から救ってくれる想像上の友達のことだと言っているそうなので,,実在の人間を指している訳ではないようです。.
さて,この曲に関して,歌詞について語り合うサイトで,大変興味深い解釈を見つけました。曰く,主人公は自分の生きている世界にかなり絶望しており,自殺を考えていたが,その想像上の友達が現れ,自殺を思いとどまることができた。そしてその友達こそ,もう一人の自分,主人公自身だというのです。この説には非常に説得力があります。そこで今回はその解釈に基づいて和訳しました。
Well, what's "Wonderwall"first of all? As for the title, they say Noel Gallagher, the guitarist and the main songwriter of the band once said it's about his then-girlfriend but later (after divorcing her) he changed the explanation saying "it's about an imaginary friend who will come and save you from yourself." So, it's not about a real person.
A website where people talk about song lyrics, I found a very interesting interpretation. That the protagonist hated the world he's in pretty much and tried to kill himself, I mean suicide but an imaginary friend (the second person) came and stopped him thinking that way The friend could be the protagonist himself. It surely sounds very convincing so I translated the song based on the idea.
Wonderwall (Oasis)
Today is gonna be the day
That they're gonna throw it back to you
By now you should've somehow
Realized what you gotta do
I don't believe that anybody
Feels the way I do about you now

Backbeat the word was on the street
That the fire in your heart is out
I'm sure you've heard it all before
But you never really had a doubt
I don't believe that anybody feels
The way I do about you now

And all the roads we have to walk are winding
And all the lights that lead us there are blinding
There are many things that I would
Like to say to you
But I don't know how

Because maybe
You're gonna be the one that saves me
And after all
You're my wonderwall

Today was gonna be the day
But they'll never throw it back to you
By now you should've somehow
Realized what you're not to do
I don't believe that anybody
Feels the way I do
About you now

And all the roads that lead you there were winding
And all the lights that light the way are blinding
There are many things that I would like to say to you
But I don't know how

I said maybe
You're gonna be the one that saves me
And after all
You're my wonderwall

I said maybe
You're gonna be the one that saves me
And after all
You're my wonderwall

Said maybe
You're gonna be the one that saves me
You're gonna be the one that saves me
You're gonna be the one that saves me

いよいよ今日がその日,計画を実行する日だ
そうすることで,周囲からはきっと色々非難されるだろうけど
もう薄々気づいてるんだろ?
何をやらなきゃいけないのか
だけど,他の人は,こんな風には思ってくれない
こんな気持ちなのは僕だけだよ

あちこちから色々うるさく言われたけど
心に秘めた決意は変えられない
今までだってそうだったし
その程度のことで,気持が揺れたことは一度もないはずだ
だけど,他の人はこんな風には思ってくれない
こんな気持ちなのは僕だけだよ

これから進んでいく人生という道のりはどれも曲がりくねって真っ直ぐじゃない
すんなりとは行かなくて,辛いこともきっとある
何を目印にすればいいかもわからない
山ほどあるんだ
(君に)言ってあげたいことが
なのにどういえばいいのかわからない

言っただろ?
僕を救える人はひとりしかいない
そして君がその人なんだ
色んなものから守ってくれる,君がその魔法の壁,ワンダー・ウォールだ

本当は今日が「その日」になるはずだった
だけど決行しなかったから
もう非難されることはない
だって,君にもある程度
しちゃいけない事がわかってたから
だけど,他の人は,こんな風には思ってくれない
こんな気持ちなのは僕だけだよ

これから進んでいく人生という道のりはどれも曲がりくねって真っ直ぐじゃない
すんなりとは行かなくて,辛いこともきっとある
何を目印にすればいいかもわからない
山ほどあるんだ
(君に)言ってあげたいことが
なのにどういえばいいのかわからない

言っただろ?
僕を救える人はひとりしかいない
そして君がその人なんだ
色んなものから守ってくれる,君がその魔法の壁,ワンダー・ウォールだ

前に言ったよね?
僕を救える人はひとりしかいない
そして君がその人なんだ
色んなものから守ってくれる,君がその魔法の壁,ワンダー・ウォールだ

多分これからは,君が僕を救ってくれる
挫けそうになっても支えてくれる
この辛い世界から
僕を守ってくれるんだ

(補足)

マンガやコメディ映画で「良い自分(天使)」と「悪い自分(悪魔)」が現実の自分に交互にささやきかけてくるという表現を見ます。

私には,この曲の最初の「いよいよ今日がその日,計画を実行する日だ」と,2番目の「あちこちから色々うるさく言われたけど」以下の連は,どちらもそれぞれ,自殺を決意した現実の自分に「悪い自分」がささやいている状況に思えます。

これに対して,3番目の「本当は今日が「その日」になるはずだった」以下の連は,「良い自分」が自殺を思いとどまった自分に語りかけていると解釈しています。

そして,「これから進んでいく人生という道のりはどれも曲がりくねって真っ直ぐじゃない」で始まるフックの部分も,「良い自分(天使/想像上の友達)」が現実の自分に語りかけている箇所で,その後の「言っただろ?僕を救える人はひとりしかいない」以下が,「良い自分」に対して,現実の自分が語りかけているという風に考えると,一番筋が通りやすい気がします。

ところで,この解釈を成立せしめているのは,他でもない3番目の「本当は今日が「その日」になるはずだった」の下りが,原文では「過去形」で記述されているという点です。(最初の連では現在形です)。英語の過去形は,「現実とは違う」というメッセージを言外に伴っています。したがって,ここを過去形にすることで,「実際には起こらなかった」ということがわかります。

また,they'llと未来形になっている点にも注目してください。最初の連では,they're gonnaと進行形になっています。学校では,be going toとwillは同じ意味だと習うかもしれません(少なくとも私はそう習いました)。しかし,実際に2つは微妙に異なります。be going to と進行形になっている場合,すでにその事象は動き出していますが,未来形の場合には,事象はその時点から動き出します。

これだけではわかりにくいので,例を挙げましょう。京都に旅行に行くとします。既に計画が進行中(切符や宿の手配などを始めている)の場合には,be going toと進行形です。これとは逆に,JRの「そうだ京都に行こう」というキャッチ・コピーのような状態であれば,未来形です。(それまで考えていなかったが急に思いついて「そうだ。京都に行こう」だからです)。京都に行く計画はまだ何も始まっていません。このため,最初の連ではthey're gonnaとなっており,3番目の連では,they'llとなっているわけです。

(余談)

さて,このように上で述べた解釈が正しいとするならば,この歌詞のメッセージには大変励まされます。

「人間は,自分で考えているよりもずっと強い存在で,自分を救ってくれる力,魔法の壁(ワンダーウォール)は,外の世界にあるのではなく,その人の心の中にちゃんとある」というメッセージ。

世の中は確かに天国(パラダイス)ではないけれど,だからといって,それほど悪い場所でもない。恐ろしい人も確かにいるけれど,そうでない人がほとんどなのだという考え方なので,Noel Gallagherに太鼓判をもらったような気がしました。

(今回もオチなしの余談で申し訳ありません)。

20 件のコメント:

  1. 余談まで読ませてもらってからもう一度和訳を読みました。
    深い。。。いま悩みを抱えているであろう、思春期の若者に読んでもらいたいです。といっても、今の私にも当てはまりますが。
    この解釈に勝るものはないと思います。

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    1. コメントありがとうございます。Oasisの曲は好きなのですが,歌詞が難解なものが多いため,最初に歌詞を読む際に非常に緊張します。今回も無事和訳できてほっとしました。Oasisの曲は,これ以外にも,Stop Crying Your Heart OutとFalling Downを和訳しております。また,Noel Gallgher's High Flying BirdsのEverybody's On The Runも和訳しておりますので,お時間があればそちらもご覧ください。

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  2. 昨日、エドの歌に投稿したばっかりなのに
    自分の一番大好きな歌が、upされてるじゃないですかw
    自分の中では、ライブ音源もいいけど、CDの音源が一番好みです。

    この前youtubeでこの歌を検索したら、この歌のカバーがあって
    まったく別物でありながら、すごいおもしろくてしっくりきてひとりで
    爆笑してましたww
    the mike flowers popsっというバンドのカバーです。
    ぜひ見てみてください。 やばいと思います。w

    受験のほうは、結果の出ない自分にフラストレーションがたまりつつも
    自分の精一杯をしています。 悔いのない夏にしたいです。

    あとOasisの和訳で Live forever,Champagne supernova,stand by meとかも大好きなので、やってもらいたいです。

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    1. コメントありがとうございます。今日は明日早朝の閉会式に備えて早めにやすまねばならないので,YTのカヴァーは聴けませんが,明日閉会式を見た後で必ず見ておきます。
      ご存じのように,Oasisの曲は歌詞が難解で和訳のハードルが高いため,いつとお約束はできませんが,気に入ったものがあれば,今後も取り上げるつもりでおります。また,その際には,chunji様の仰った曲が候補に上がる可能性も多分にございますので,どうかしばらくお待ちください。
      暑さ厳しい折ですが,chunji様もどうか悔いが残らないよう毎日をお過ごしください。来年春の「ご武運」を日々お祈りしております。

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  3. こんな偶然にも投稿されてすぐ、ロンドンオリンピックの閉会式で歌われるなんて!この曲、いつかリクエストしようと思っていました。"Wonderwall”って何ですか?って聞きたかったんです。わたしはいつも通り(?)Ed Sheeranのカヴァーで知りましたが、こんなにもすばらしい曲だとは想像できませんでした。余談の解説もわかりやすかったですし、教科書にこのまま載せてほしいくらい。今、自身と葛藤している人に伝えたい和訳ですね。
     閉会式は必要ないトークにイライラしましたが、EdもJessie Jも出演したし、この曲やPink Floydの曲が演奏されて、vestigeさんのおかげで楽しませていただきました。ありがとうございました。グッジョブ☆

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    1. コメント並びにお褒めの言葉ありがとうございます。この曲の解釈については,海外の歌詞サイトに投稿なさった方が「自己との対話 discussing it with himself」という表現をなさっていました。(余談に書いた「いい自分」「悪い自分」の下りは私が考えた例です)。
      それはともかく,こういう気持ちは誰しも一度は経験したことがあると思いますし,それだけに普遍的なテーマと言えるのかもしれません。
      Wonderwall,これが本当に「魔法の壁」なのかどうかは,Noel Gallapher本人に聞いてみない限りわかりませんし,実は大幅に違っている可能性もありますが,個人的にはこれでいいと思っています。
      誰の心のなかにもあるWonderwallですが,私の場合,そのかなりの部分をこの本館が作ってくれているような気がします。

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  4. 良い曲ですね、
    僕自身、自殺を考えたこと、というか「生きる意味ってなんなんだ?」
    と考えていた時期はかなり深刻に厭世的な考え方をしていたと思います、
    父親いわく、その頃の僕の眼は死んだ魚みたいな目をしていたとのこと。

    数年前は毎日解けそうもないその問題に向き合っていたのですが
    不意に自分の生きる“目的”を考えてみると、
    意外なまでにあっさりと暗く曇っていた自分の人生観が晴れた気がします。

    今となっては自殺というと他人事にしか感じられなくなったものの、
    この曲で“君”と言われている“生きることに執着させてくれる良心”に関しては
    自分の中にもはっきりと存在を確認できる、とても共感できる考え方です。

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    1. コメントありがとうございます。Oasisの曲の中でも「名曲」の呼び声高い曲ですが,私自身はこの曲を和訳するまでは,むしろFalling DownやStop Crying Your Heart Outの方に思い入れがありました。しかし,和訳してみてその内容の素晴らしさに「名作」の評価は当然であると心から確信いたしました。
      「誰かが救ってくれる」というメッセージは送りやすいけれど,この解釈が正しいとすれば,「自分の中に自分を救える力がちゃんとある」というメッセージは,実際にこういう経験をした人からしか出てこないような気がします。しかも,これからも試練が待ち続けていることも示唆している。今まで投稿した曲のなかでも,特に和訳する意味のあった曲だと思います。

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  5. 対訳ありがとうございます。いい訳です
    やはりOasisの歌詞はいいですね。元気になれます

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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。実はこの曲は内容が大変に難解で,通常であればお蔵入りの可能性も十二分にあったのですが,海外の歌詞サイトに非常に優れた解釈をなさる方がおいでになったため,こうして無事に投稿することができました。
      さて,既にお誘いしていたら申し訳ないのですが,別館(twitter)でも余談を展開しております。お時間があればそちらへもおいでください。お待ちしております。

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  6. はじめまして。
    この間「あたし17年間聴き続けているバンドなんてない」と知人に言われ、あらためてこのバンド、いや、この「Wonderwall」という実に不思議な壁と17年も向き合っている自分の運命の奇妙さを噛み締めていたところへ、この解釈!
    ドキュメンター映画「Liveforever」でノエルがカートの自死について最低な行為だと断罪しつつも、「彼は俺たちの世代のジョン・レノンになれたのに」と惜しんでいる姿が。。。。
    長年の疑問が氷解しました。ありがとうございます。

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    1. コメントありがとうございます。拙訳がお役に立ててようございました。この曲,oasisの曲のなかでも名曲の誉れ高いものですが,歌詞の内容を理解しないとそのかなりの部分が失われてしまうような気がします。「人間には困難を自分で乗り越える力が備わっている」という力強いメッセージがこの曲の核心だと思います。

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  7. ちょうどこの曲をライブでやるのでおよげさんのブログではどんな解釈なのかと思って検索かけました。
    自分の思っていたのとは違いもっと深いものなんだなって。すごくメッセージ性があって強い曲ですね。

    いつもブログに助けてもらっています!ありがとうございます!

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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。仰るように強く心に訴えかけてくる名曲です。素晴らしいライヴになりますよう,お祈り申し上げます。

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  8. Ed の和訳を見ていて、偶然wanderwallを見つけました。ずっといい曲だと思っていたけど、大和言葉で理解できると一層好きになりました。深いです! 

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  9. 最近CMでこの曲を耳にし、メロディーに惚れ検索したら、いつも拝見させていただいてる「およげ!対訳さん」がヒットしました。笑
    前までは最近の流行の曲ばかり聴いていましたが、最近は年代関係なくいいなと感じた曲は聴くようになり、時代が変わっても素敵な曲は生き続けるんだなと感じました。

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    1. コメントありがとうございます。この曲はかなり前に発表されたものなのですが,ここしばらく「今週の人気の投稿」にランクインしており,一体どうしたわけかと疑問に思っていたところ,みさと様のお話を伺いその理由が判明いたしました。ありがとうございました。

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  10. このWonderwallは、私がオアシスとであうキッカケとなった曲でした。
    とても心地よく心に響いてくる歌だと思います。ほぼ直訳で理解していた頃でさえも、何度も慰められました。この曲がなければオアシスの他の曲にも手をつけなかったかもしれません。
    ところで、この曲は映画"Wonderwall"のために書き下ろされた曲だというのはご存じですか?老科学者が家の壁の穴から偶然見えた隣人に恋をし、最後にはベランダから侵入して(だったはずですが………よく覚えていません(汗))会いに行こうとするが、それがまさに彼女が自殺しようとしていたところで、結果科学者がその人を助けた、というお話でした。
    vestigeさんの対訳は恐らくそれ抜きで書かれていらっしゃるものだと思います。しかし他のものも含めて美しい訳だなぁと感心させていただいております。
    映画込みの解釈を他サイトで拝見した者から見ますと、自殺しようとするのは語り手の方になっている点が、なかなか興味深く感ぜられました。

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  11. 今丁度多感な時期なんで歌詞がしみます・・

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    1. コメントありがとうございます。お役に立ててなによりです。

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