2014年5月3日土曜日

Fresh Strawberries フランツ・ファーディナン/フェルディナンド (Franz Ferdinand)

ローマの将軍は奴隷に「Memento Mori (命には限りがありいつか死ぬ)」と言わせ,ある作家は自分の本のなかで「生まれたその日から,人は死に始める」と書き,Lana Del Reyは「だって2人とも,生まれたからにはいつか死ぬんだから」と歌いましたが,まさにその通り。
http://oyogetaiyakukun.blogspot.jp/2012/01/born-to-die-lana-del-rey.html
曲の冒頭で主人公は「摘みたての苺なんだよ,はちきれそうな真っ赤な苺,すぐに食べられる状態だから,ボウルなんかに入れてると,その間に熟し過ぎる,そしてすぐに腐っていく,年寄りの頭の中にある,あやふやなウワサみたいに,記憶の中から消えていくんだ」と言っています。主人公は苺を若さのメタファーとして選んでいるように思われますが,この点が素晴らしい。リンゴなど他の果物と比べ,苺は傷みやすく,わずかな傷でもすぐに傷みはじめてしまうので,扱う際にはかなり注意が必要だからです。
A Roman general was believed to have always had his slave say, "Memento Mori (remember that you will die)".  A writer wrote in her book, "From the moment we are born, we begin to die."   Then Lana Del Rey sings, "'Cause you and I, We're born to die."  http://oyogetaiyakukun.blogspot.jp/2012/01/born-to-die-lana-del-rey.html It's so true.
In the beginning of the song, the protagonist says, "We are fresh strawberries, Fresh burst of red straw berries, Ripe, turning riper in the bowl, We will soon be rotten, We will soon be forgotten, Half remembered rumours of the old."  I think the protagonist picks strawberry as a metaphor for the youth, which I find pretty impressive.  Strawberries spoil very quickly compared with other fruits such as apples.  With a slightest damage, it starts rotting.  So we have to be very careful in handling them.  
Fresh Strawberries  (Franz Ferdinand)
We are fresh strawberries
Fresh burst of red strawberries
Ripe, turning riper in the bowl
We will soon be rotten
We will all be forgotten
Half remembered rumours of the old

So wouldn't it be easy with
Something to believe in that could
Give us more
Than here's my work
So where's my pay
To buy what I don't need?
Wouldn't it be easy to believe? (To believe?)
To believe? (To believe?)

Thieves believe
Everybody steals
I believe there's nothing to believe
But I'd love the manual
The instruction manual
Oh, liars
Swear that they never lie

Wouldn't it be easy with
Something to believe in that could
Give us more
Than here's my years
So now they're gone
It's time for me to leave
Wouldn't it be easy to believe? (To believe?)
To believe?

Wouldn't it be easy to believe?
Wouldn't it be easy to believe?

We are fresh strawberries
Fresh burst of red strawberries
Ripe, turning riper - so...

Wouldn't it be easy?
Something could give us more
But I don't know
No I don't know
I don't know what I need
Wouldn't it be easy
Oh couldn't it be easy
Shouldn't it be easy
To believe?

摘みたての苺なんだよ
はちきれそうな真っ赤な苺
すぐに食べられる状態だから
ボウルなんかに入れてると
その間に熟し過ぎる
そしてすぐに腐っていく
年寄りの頭の中にある
あやふやなウワサみたいに
記憶の中から消えていくんだ

もしそうなら
それさえあれば幸せだって
思えることをした方が
ただ仕事して
給料貰ってその金で
欲しくもないものを買うよりも
楽しいと思わないか?
そう思った方が楽だろ?(そうだろ?)
そう思わないか?(思うだろ?)

他人のものを盗むやつは
誰でもそうすると思ってる
自分では
信じられるものは何もないって
そんな風に信じてるけど
「説明書」は有難い
「取扱い説明書」はね *
そうそうウソつきどもは
ウソなんて一度もついてませんて
そういう風に言うんだよ

楽じゃないか?
もっと幸せになれると
思えることをした方が
ただこんな風に漫然と
人生を送ってその結果
大切な人生の時間を何年も
ムダしてしまうより
こんなこと
いい加減止めた方がいい
そう思った方が楽だろ?(そうだろ?)
そう思わないか?

そう思った方が楽だろ?
そう思わないか?

摘みたての苺なんだよ
はちきれそうな真っ赤な苺
すぐに食べられる状態だから
・・・

楽じゃないか?
もっと幸せになれることが
この世の中にはあるかもって
そんな風に思う方が
だけどわからない
本当にわからないんだ
自分には
一体何が必要なのか
難しくないし
簡単なのかも
すぐに出来るはずだよな?
そういう風に考えるのは

(余談)

この曲の意味について,Franz FerdinandはNMEに「これは『答え』を探すことについて歌ったもの。それは自分が信じてる宗教でも,自分が信じてる考え方でも,ただ自分がすごいと思って憧れてる人間でもいい」と答えています。こう考えると,歌詞に突然登場する「取扱い説明書(the instruction manual)」は,聖書や経典あるいは思想書などなのかもしれません。

それはともかく「もしそうなら,それさえあれば幸せだって,思えることをした方が,ただ仕事して,給料貰ってその金で,欲しくもないものを買うよりも,楽しいと思わないか?」と言われると,「そうそう,そうだよね」と思う自分がいる一方で,「それは成功した人間だけが言えることだよ」と思う自分もいて葛藤が生じます。

おそらく私を含めてほとんどの人間は「やりたいこと」と「やらねばならぬこと」の間で自分なりの妥協点を見出して生きていると思われます。これが前者に傾き過ぎると生活に支障が出そうですし,逆に前者をないがしろにして,後者ばかりを重視すると,それはそれでまたストレスが溜まるような気がします。

この点に関しては,アーティストも例外ではありません。彼らは「やりたいこと」が「やらねばならぬこと」がほぼ一致しているという非常に幸運な人間ですが,そんな彼らにも両者が対立する場合はあって,それがよくある「レイベルとの対立」というものではないかと思われます。

3 件のコメント:

  1. また、これはおもしろい。彼なのか、彼らなのかよくわからないお名前ですが、なかなかかっこいい音楽じゃないか、と思います。コードが意外な感じで展開していくのに、全体に不思議にポップな感じがあって聴きやすい。詩も、まず、苺のメタファーでフレッシュで鮮やかなイメージが、ぱっ広がります。その一方で「やりたいこと」と「やらねばならないこと」との葛藤、「こうして人生をムダにしているんじゃないか」という焦り、でも、本当のところ、「自分は何を必要としているのか」わからない、という迷い、が語られて・・・。そう問われると、確かに早く「答えを探す」ようにしなくては、という気持ちになってきます。歌詞も深い。(お忙しそうで。返信、結構です)

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  2. フランツ・フェルディナンドはよく聴いていますが、こちらの和訳や余談を拝見して、この曲の歌詞の良さを再確認しました。
    若さをいちごで例えているところがうまいですね。
    どんなにみずみずしく美しくても、すぐに傷んでしまう。
    いちごが小さい果物であることも、地球に住む人間の小ささを感じさせます。

    ボーカルのアレックス・カプラノスは以前グルメエッセイを連載していたことがあります。
    その文章を読むと、彼が五感すべてを使って食べ物や料理を味わい、見事に分析・描写しているのがわかります。
    そんな彼がいたからこそ、いちごの絶妙なメタファーが思いついたのでは?なんて思ってしまいました。

    毎日の更新大変だとは思いますが、これからも素敵な訳詞を書き続けてくださることを楽しみにしています。

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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。以前どこかで苺には平均400個ほどの種があるという記事を読んだような記憶がありますが,may様のコメントを拝見し,これを人間の持つ「種=可能性」とすることもできるのではないかと思いました。考えれば考えるほど見事なメタファーです。

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