2014年6月24日火曜日

Things We Lost In The Fire バスティーユ (Bastille)

歌詞に登場する「炎 (the fire)」はケンカを表しているという説もありますが,Dan Smith本人によれば,これは「別れ」のメタファーであり,実体験からこの曲の着想を得たんだとか。ただ私自身は,我々の人間関係に取り返しのつかないダメージを与えるもの,例えば裏切り,ウソ,浮気,ケンカなどであれば,この「炎」という単語で表せると思っています。
Some people say what 'the fire' in the lyrics represents is a fight.  Dan Smith himself said it's a metaphor for a breakup and he got the inspiration from his real-life experience.  I myself think the word can refer to anything which has a devastating impact on our relationship with others such as a betrayal, lie, cheating and fight.
Things We Lost In The Fire  (Bastille)
Things we lost to the flames
Things we'll never see again
All that we've amassed
Sits before us, shattered into ash

These are the things, the things we lost
The things we lost in the fire fire fire
These are the things, the things we lost
The things we lost in the fire fire fire

We sat and made a list
Of all the things that we had
Down the backs of table tops
Ticket stubs and your diaries
I read them all one day
When loneliness came and you were away
Oh they told me nothing new,
But I love to read the words you used

These are the things, the things we lost
The things we lost in the fire fire fire
These are the things, the things we lost
The things we lost in the fire fire fire

I was the match and you were the rock
Maybe we started this fire
We sat apart and watched
All we had burned on the pyre

(You said) we were born with nothing
And we sure as hell have nothing now
(You said) we were born with nothing
And we sure as hell have nothing now

These are the things, the things we lost
The things we lost in the fire fire fire
These are the things, the things we lost
The things we lost in the fire fire fire

Do you understand that we will never be the same again?
Do you understand that we will never be the same again?
The future's in our hands and we will never be the same again
The future's in our hands and we will never be the same again

These are the things, the things we lost
The things we lost in the fire fire fire
These are the things, the things we lost
The things we lost in the fire fire fire

These are the things, the things we lost
These are the things we lost in the fire fire fire

Flames they licked the walls
Tenderly they turned to dust all that I adore

あの時の
「炎」で失くしてしまったものは
もう二度と手には入らない
今まで一緒に積み重ねた
大切なものが砕け散り
2人の目の前にある
ただの灰に変わってしまった

それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの
それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの

2人で一緒にそこに座って
ひとつ残らず挙げてみた
それまではあったのに
もう今はないものたちを
テーブルの
背板を探ると下の方から
チケットの半券と
お前の日記が見つかった
一日ずっと読んでたよ
お前の姿が見えなくなって
とにかく寂しかったから
別にそいつを読んだからって
何かがわかったわけじゃないけど
お前があの頃書いてたものを
ただ読むのが好きなんだ

それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの
それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの

俺がマッチでお前が岩で
擦れば火が付く組み合わせ
だからたぶんそのせいで
こんなケンカが始まったんだ
お互いに
歩み寄ることもせず
ただじっと見てただけ
2人の間にあったものが
残らず炎に飲まれていくのを

(あの時言ったよな)
自分たちには何もないって
なのに今だって
何も変わってないってことは
イヤになるほどわかってる
(あの時言ったよな)
自分たちには何もないって
なのに今だって
何も変わってないってことは
イヤになるほどわかってる

それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの
それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの

わかるだろ?
もうあの頃には戻れない
わかるよな?
元通りってわけにはいかないんだよ
これからどうなるか
それは自分次第だけど
元の2人にはもう戻れない
この先は自分で決め手いくんだけど
もう昔には戻れない

それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの
それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの

それこそが
2人が失くしてしまったもの
それこそが
あの「炎」の中に消えたもの

壁の上をなめながら
炎が静かに広がって
俺が大事にしてきたものを
残さずすべて飲み込んで
みんな灰に変えてゆく

(余談)

このミュージック・ヴィデオはリトアニアで撮影されたもので,Dan SmithがDavid Lynchのスタイルとテーマのファンであるため,このような作りになっているんだとか。またLaura Palmerという曲も彷彿とさせる作りになっているそうです。

ところでこの歌詞のこの連,とりわけ最初の2行は2通りの解釈が可能であるように思われます。すなわち;

We sat and made a list
Of all the things that we had
Down the backs of table tops
Ticket stubs and your diaries
I read them all one day
When loneliness came and you were away
Oh they told me nothing new,
But I love to read the words you used

「2人で一緒にそこに座って,ひとつ残らず挙げてみた」のは
①それまではあったのにもう今はない(=失われた)もの,あるいは
②その後(=ケンカ/別れの後)に残っていたもの,という2通りの解釈が可能であるように思われます。

文法的に考えれば,前者の場合にはall the things that we used to haveあるいはall the things that we'd lost / hadと表現するのが正しく,その意味で言えば後者の方に軍配が上がりそうなのですが,その後の部分に登場するのが「チケットの半券」や「日記」といった2人の過去を表すものなので,敢えて前者を採用しています。

ただ仮に後者を採用したとしても,問題なく意味が通るだけでなく,それはそれでまた味わい深いような気もします。

個人的に気に入っているのは最後の箇所で,

Flames they licked the walls
Tenderly they turned to dust all that I adore

炎が壁を伝って広がっていく様子が美しく描かれていて,この箇所だけでもDavid Lynchを連想させます。

それにしても,Bastilleにはやられました。Pompeiiでも最初の男声コーラス部分を耳にした瞬間に心を掴まれましたが,この曲の場合も例外ではなく,最初に聴いて以来,ことあるごとに頭の中でこの曲のコーラス(サビ)部分がエンドレスでかかっています。

5 件のコメント:

  1. これは、すばらしい。先日のOblivionも、ピアノのきれいな曲だと思っていましたが、この曲にも唸らされます。おっしゃる通り、サビの部分は一度聞けば頭を離れない力強さですし、アレンジ(私の言おうとしていることが「アレンジ」なのかどうか、ちょっと自信がありませんが)にもなんというか、オリジナリティーがあって、驚かされます。例えば、we madeから始まる3連目の後ろで響いているあの音。あれは何の楽器なんでしょう。あんな音色をこのタイプの曲に合わせるなんて。その上で、あの印象的なサビをコーラス(しかも、普通の、バンドの男声のコーラスです)なんかで盛り上げていって。そして、最後には、「炎」のメタファーの取り返しのつかなさや、最後の「壁の上をなめながら炎が静かに広がって・・・」の部分から浮かぶ映像と、音楽がよくマッチして、カタルシスがあると思います。全体に元気の良いつくりなのに、大変悲しい気持ちになってしまうのも不思議。Bastille、やってくれますね。

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    1. コメントありがとうございます。おそらく悲しい気持ちになるのは,このミュージック・ヴィデオの結末が多分に影響しているためでしょうが,その一方で,Dan Smithの歌い方もその一因ではないかと思われます。とりわけ2回登場するThe future's in our hands and we will never be the same againの箇所。1回目のsameのところの音だけが高くなっているため,そこでDan Smithの声が一瞬裏返ってファルセットになるのですが,そのせいで名状しがたい「切なさ」のようなものが漂います。おそらく世の中にはこの音をファルセットではなく普通に出せるアーティストも少なくないと思いますが,この曲のこの箇所に限っては,逆にファルセットでなくてはかなわぬように思われます。

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  2. 軽やかさと味わい深さが共存しているまさにbastilleの面目躍如とでもいうべき曲ではないでしょうか。

    実際に首が長くなると生命維持上の問題があると思いますし、一日が千年に感じられるというのも話を盛り過ぎな気はしますが、そこらあたりの慣用表現を使用したくなるくらい、この曲が取り上げられるのを密かに待っておりました。
    ありがとうございます。


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    1. コメントありがとうございます。お元気そうでなによりです。確かに首が長くなり過ぎると,その先にある脳に血液を送るべく高血圧にならざるを得ず,生命維持上の問題が生じると思われますし,1日が1000年になってしまっては,この曲を聴いた翌日にはもうBastilleというバンド自体が影も形もなくなってしまいます。
      ところでリード文でも述べたように,この曲はDan Smithが実体験から着想を得たようですが,それを裏付けるような箇所が歌詞に登場します。それがDown the backs of table topsからBut I love to read the words you usedに至る部分で,特にI read them all one day, When loneliness came and you were awayの箇所は,成人男性の取る行動としてはやや情けないものに映るだけに,誰かが実際に体験していなければ決して出てこない描写であろうと思われます。
      それにしても,歌詞の内容といい,曲のキャッチーさといい,月影先生ならずとも「恐ろしい子・・・」と言いたくなるほどのアーティストです。

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  3. こういった曲の和訳は少ないのですごい参考になりました!
    Fireの訳ですが、銃を「撃つ」合図のFireの意味も含んでいるとしたら
    FireFireFireの所は、心の中で銃をぶっ放しまくっている
    失ったものや過去を消し去りたい想い
    PVとマッチする様な気もしました。。

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