2014年7月18日金曜日

King of Pain ザ・ポリス (The Police)

以前StingがカヴァーしたSpread A Little Happinessをここで取り上げましたが,この曲に対してSongMeaningsに寄せられたコメントのなかに面白そうなものがひとつありました。曰くSpread A Little Happinessは「このKing of Painと表裏の関係にある」そうで,そこにひかれました。歌詞に登場する主人公は感受性が強く傷つきやすいため,どうやっても傷ついてしまいます。彼では誰かに「幸せを分け与える (spread a little happiness)」ことはできないでしょうね。
Before I picked up Spread A Little Happiness covered by Sting here.  Among those comments contributed to SongMeanings on the song, I found an interesting one which said the song "sounds like the balance side to King of Pain."  That intrigued me a lot.  The narrator in the lyrics is so sensitive and vulnerable that nothing can save him from being hurt.  I don't think he can "spread a little happiness" to anyone.  
King of Pain  (The Police)
There's a little black spot on the sun today
It's the same old thing as yesterday
There's a black hat caught in a high tree top
There's a flag-pole rag and the wind won't stop

I have stood here before inside the pouring rain
With the world turning circles running 'round my brain
I guess I'm always hoping that you'll end this reign
But it's my destiny to be the king of pain
There's a little black spot on the sun today
That's my soul up there
It's the same old thing as yesterday
That's my soul up there
There's a black hat caught in a high tree top
That's my soul up there
There's a flag-pole rag and the wind won't stop
That's my soul up there
I have stood here before inside the pouring rain
With the world turning circles running 'round my brain
I guess I'm always hoping that you'll end this reign
But it's my destiny to be the king of pain
There's a fossil that's trapped in a high cliff wall
That's my soul up there
There's a dead salmon frozen in a waterfall
That's my soul up there
There's a blue whale beached by a springtime's ebb
That's my soul up there
There's a butterfly trapped in a spider's web
That's my soul up there
I have stood here before inside the pouring rain
With the world turning circles running 'round my brain
I guess I'm always hoping that you'll end this reign
But it's my destiny to be the king of pain
There's a king on a throne with his eyes torn out
There's a blind man looking for a shadow of doubt
There's a rich man sleeping on a golden bed
There's a skeleton choking on a crust of bread
There's a red fox torn by a huntsman's pack
That's my soul up there
There's a black-winged gull with a broken back
That's my soul up there
There's a little black spot on the sun today
It's the same old thing as yesterday

I have stood here before in the pouring rain
With the world turning circles running 'round my brain
I guess I always thought you could end this reign
But it's my destiny to be the king of pain
King of pain
King of pain
King of pain
I'll always be king of pain

今日も太陽に
黒いシミが見えている
昨日とどこも違わない
同じことの繰り返し
黒い帽子がぽつんとひとつ
木のてっぺんに引っかかってる
旗竿の上の布切れが
吹きやまぬ風にあおられて
パタパタとはためいてる

昔この場所で
土砂降りの雨の中
立ち尽くしたことがある
頭の中ではこの世の中が
ぐるぐると回ってた
お前が一緒にいてくれれば
こんなことも終わりになるって
いつも願ってる気がするよ
でも本当は
何を見ても何を聞いても
心が痛んで仕方ないのは
きっと自分の運命なんだ
変えられない
今日も太陽に
黒いシミが見えている
するとそれが気にかかる
昨日とどこも違わない
同じことの繰り返し
するとそれが気にかかる
黒い帽子がぽつんとひとつ
木のてっぺんに引っかかってる
するとそれが気にかかる
旗竿の上の布切れが
吹きやまぬ風にあおられて
パタパタとはためいてる
するとそれが気にかかる

昔この場所で
土砂降りの雨の中
立ち尽くしたことがある
頭の中ではこの世の中が
ぐるぐると回ってた
お前が一緒にいてくれれば
こんなことも終わりになるって
いつも願ってる気がするよ
でも本当は
何を見ても何を聞いても
心が痛んで仕方ないのは
きっと自分の運命なんだ
変えられない
そびえたつ崖の表面に
化石がひとつ埋まってる
するとそれが気にかかる
凍てついた
滝の水のその中に
鮭が一匹つかまってる
するとそれが気にかかる
春先の引き潮で
逃げ遅れた大きなクジラが
浜に打ち上げられてる
するとそれが気にかかる
蜘蛛の巣に
絡め取られてもがく蝶
するとそれが気にかかる

昔この場所で
土砂降りの雨の中
立ち尽くしたことがある
頭の中ではこの世の中が
ぐるぐると回ってた
お前が一緒にいてくれれば
こんなことも終わりになるって
いつも願ってる気がするよ
でも本当は
何を見ても何を聞いても
心が痛んで仕方ないのは
きっと自分の運命なんだ
変えられない
権力の座を手にしていても
虚ろな目をした王がいる
どこかに怪しいところはないかと
必死に目を凝らしてる
目の見えない者もいる
豪華なだけで眠りにくい
金のベッドで寝る者もいる
ほんのちょっとのパン屑を
喉に詰まらせる骸骨がいる
猟犬に追いかけられて
噛み殺されるキツネがいる
それが今の自分の気持ち
背中の折れたカモメがいる
するとそれが気にかかる
今日も太陽に
黒いシミが見えている
昨日とどこも違わない
同じことの繰り返し

昔この場所で
土砂降りの雨の中
立ち尽くしたことがある
頭の中ではこの世の中が
ぐるぐると回ってた
お前と一緒にいれば
こんなことも終わるんだって
いつも思ってた気がするけど
でも本当は
何を見ても何を聞いても
心が痛んで仕方ないのは
きっと自分の運命なんだ
変えられない
とにかく傷ついてしまうんだよ
何を見ても何を聞いても
心が痛んで仕方ないし
これからだってそうなんだ

(余談)

今さら私が言うまでもないかもしれませんが,この曲,大変技巧に富んでいます。特に素晴らしいと思ったのが,太陽の黒点のメタファーです。あの明るく輝く太陽は一般的に「希望」や「幸せ」の象徴ですが,そこにポツリと見える黒い点。それ自体はあるのが当たり前のものなのに,そこにいわば「不吉な影」を感じてしまう主人公。これから何か悪いことが起こる前触れではないか,何か大きな落とし穴があるのではないかと考えて怯えているように思われます。

また,和訳してしまうと失われてしまう,いわばlost in translationに当たる部分にも見逃せない技が隠されています。例えば歌詞のこの部分;

There's a dead salmon frozen in a waterfall
That's my soul up there
There's a blue whale beached by a springtime's ebb
That's my soul up there
There's a butterfly trapped in a spider's web

最初のsalmon frozen in a waterfall の箇所で「冬」を,次のblue whale beached by a springtime's ebbで「春」を,そして次のbutterfly trapped in a spider's webで夏を表しています。

また,その後のこの箇所では;

There's a red fox torn by a huntsman's pack
That's my soul up there
There's a black-winged gull with a broken back

前述のbule whaleに続き,red fox, black winged gullと色をテーマにしています。また,イギリスではキツネ狩りは冬の風物詩らしいので,前の箇所の続きとして,この部分で冬をイメージさせているのかもしれません。

それにしてもこの主人公,これだけ色々なことが気にかかっては生きて行くのがさぞかし大変でしょうね・・・。

6 件のコメント:

  1. 対訳だけでなく、コメントもすばらしい

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    1. コメント並びに過分なお言葉ありがとうございます。技巧に富んだStingの歌詞を見るたびに「さすがは元国語の先生・・・」と唸ってしまいます。

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  2. 私も素晴らしいコメントだと思います。この曲は詩もいいのですが曲自体も素晴らしいと思います。ふと思ったのですが、日本のポップスの歌詞はどうしても単純でなかなか深みがあるのが少ないと感じるのですが、洋楽は中期以降のビートルズにしてもD・ボウイにしても詩の世界観がいいですね。和製ポップスと洋楽では同じ音楽の中の歌詞でも情報量が大きく異なる気がします。

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    1. コメント並びに過分なお言葉ありがとうございます。季語といういわば飛び道具を使っているとはいえ,17音のなかに情景を鮮やかに捉えてみせる俳句があることを思えば,情報量という点では日本語も英語に決して引けは取らないように思われますが,歌詞においては,英語のYOUに該当するような汎用性のある人称代名詞がないことがある種の足枷となってしまっているのかもしれません。

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  3. やはりキモであるタイトルのKing of Painのそれに相応しい意訳の対訳、意訳タイトルがないと。

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    1. コメントありがとうございます。ただタイトルだけはご覧になる方ご自身で自由にお考えいただいた方がよいような気がいたします。

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