英文の歌詞をご覧になればおわかりかと思いますが,一見すると大変シンプルな曲で,男が真夜中に恋人の元に急いでいるという,ただそれだけの曲です。私も最初にこの曲を聴いた時には,デートに遅れそうになっている男の歌だと思っていたのですが間違いでした。この歌詞,暗喩がそこかしこに埋め込まれています。
私見ですが,舗道や道は主人公のこれまでの人生を,テイルライトは周囲のウワサや人間関係を,遠くの街並み(スカイライン)は,恋人の姿を表しているのではないでしょうか。また,真夜中というのは日付が変わる時間。間に合わなければ,主人公の日付(=人生)は変わってしまいます。だからこそ,歌詞の出だしがこうなっています:「もうじき日付が変わる」。
The reason that I love James Morrison is that he is a master of metaphor. He employs various metaphors such as puzzle pieces (The Pieces Don't Fit Anymore), a window (Wonderful World) and red light (Get To You) in his lyrics.
As you see in the lyrics, this song seems to be quite simple at a glance. A guy, hurrying to his girlfriend (maybe) in the midnight. I thought he was being late for his date when I first listening to it. I was wrong. The lyrics are full of metaphorical meaning.
In my opinion, the road and street represent his past life. The tail light refer to rumor or what others say about the two and the skyline to her. Midnight is where the previous day ends and a new day begins. His life changes permanently unless he makes it in time. So the first verse goes like this "So close to the midnight,".
Get To You (James Morrison)
Leaving behind what I don't need.
I've walked like a blind man and my eyes are open.
You are the only place for me, yeah.
Won't you hold on just for a while?
Please don't give up on me tonight.
'Cause I'm on my way, I chased the day.
And I'll keep running all night.
I just won't rest to catch my breath.
I will run every red light to get to you.
No, I will get to you.
No, I will get to you.
I'll chase past the tail light, head for the skyline.
Hoping that that won't change your faith.
I see them appearing, the cracks in the pavement.
Running I pray I'm not too late.
Won't you hold on just for a while?
Please, please don't give up on me tonight.
'Cause I'm on my way, I chased the day.
And I'll keep running all night.
I just won't rest to catch my breath.
I will run every red light to get to you.
No, I will get to you.
No, I will get to you.
I'll get to you.
Just hold on a little longer.
I'll get to you.
Oh just don't give up on me love.
I will get to, I will get to you.
'Cause I'm on my way, I chased the day.
And I'll keep running all night.
I just won't rest to catch my breath.
I will run every red light to get to you.
No, I will get to you.
No, I will get to you.
I will.
I will get to.
I will get to you.
もうじき日付が変わる
なのに街灯が頭上を照らす通りを
今こうして必死に走ってる
余計なものは置いてきた もう必要なものがわかったから
これまでの自分はバカ過ぎて,何もわかってなかったけど
今やっと気が付いたんだ
何が一番大事なのか
お願いだから,あとほんの少しだけ我慢して
今夜だけは信じてほしい そのままそこで待っていて
だってやっとわかったから
ゴールはそこだ もう時間との戦いだけど
一晩中でも走ってみせる
息が切れても構わない たとえ苦しくても,止まったりせずに走り続けるよ
他のことなんてもうどうでもいい 赤信号もみんな無視する
そうやってそこへ駆けつけるから
どうか信じてそこで待ってて
周りがなんて言おうが関係ない
目の前の車のテイルライトなんか無視すればいい
ゴールの街並みを目指して走るんだ
そこへたどり着きたい
あんなことがあったから、不安になったんだろ?
それで歩道に亀裂が入るみたいに、2人の間にも溝が出来たけど
これで終わりなんてイヤなんだ
本当の気持ちを伝えたい
それだけ祈りながら走ってる
お願いだから,あとほんの少しだけ我慢して
今夜だけは信じてほしい そのままそこで待っていて
だってやっとわかったから
ゴールはそこだ もう時間との戦いだけど
一晩中でも走ってみせる
息が切れても構わない たとえ苦しくても,止まったりせずに走り続けるよ
他のことなんてもうどうでもいい 赤信号もみんな無視する
そうやってそこへ駆けつけるから
どうか信じてそこで待ってて
やっと目が覚めたんだ
大切なものにようやく気付いた
だからあと少しだけそこで待ってて
もう迷わないから
おしまいなんて言わないで
もう一度だけ信じて待ってて
もう迷わない
ゴールはそこなんだ もう時間との戦いだけど
一晩中でも走ってみせる
息が切れても構わない たとえ苦しくても,止まったりせずに走り続けるよ
他のことなんてもうどうでもいい 赤信号もみんな無視する
そうやってそこへ駆けつけるから
どうか信じてそこで待ってて
やっと自分の気持ちに気付いた これが最後のチャンス
頼むから,どうかそのままそこで待ってて
(余談です)
歌詞の中に出てくる「テイルライト」という単語,スペルはtail lightですが,これはtale(話・うわさ話)との掛詞(かけことば)だと思ったので,訳文のようになりました。
以前にも言いましたが,こういうメタファーの多い歌詞は実に日本語に訳しにくい。意味の通る文章にするのは比較的たやすいのですが,それだけだと往々にして「で,それで?」ということになってしまいます。この曲も例外ではなく,ここまで来るのに,あれやこれやで4か月以上かかりました。おそらく10回以上手直ししていると思います。(それでこの程度かと言われればそれまでですが)。
James Morrisonは,私の大好きなアーティストですが,和訳しにくいという点では,過去に取り上げたアーティストのなかでも,間違いなくトップ5に入ります。(因みにJason Mrazもランクインしていますが,こちらの理由は言うまでもないでしょう)。しかし,和訳しにくいということは,すなわち日本語訳を求めておいでになる方が多いということなので,今後も出来る限り取り上げていきたいと思っています。
素敵です。この曲好きです。
返信削除James Morrisonのハスキーで包み込むようなサウンドが、心を暖かくします。きっと彼は、彼女に会えますね。
Won't you hold on just for a while?
Please don't give up on me tonight.
お願いだから,あとほんの少しだけ我慢して
今夜だけは信じてほしい そのままそこで待っていて
この英語の歌詞を、こんな風にロマンチックな日本語の詞に訳せるなんて。。。ほんとに素敵です。
4ヶ月もの間、一つの歌詞を訳すことに取り組むその真摯な姿勢に脱帽です。
過分なお褒めの言葉をありがとうございます。James Morrisonの曲は歌詞がシンプルなだけに和訳しにくく,私にとっては「難曲」の一つ。比喩表現が多く,それを無視して和訳しても意味が掴めないのですが,一旦理解出来ると,まるでパズルのピースが埋まるように,そこからストーリーが立ち上がってきます。そこが彼の曲の魅力でしょう。投稿までに4か月もかかってしまった原因は偏に私の力不足で,このタイムラグをいかに短縮するかが今後の課題と考えております。また何かありましたら,是非お知らせください。お待ちしております。
返信削除「もうじき日付が変わる」という始まりがいいですね。この詩のテーマにすっと入れ、しかも美しくて。「今夜だけは信じてほしい そのままそこで待っていて」という訳も成功していると思います。
返信削除前に、James Morrisonは地味な曲にも味がある、と書いておられましたが、本当にその通りですね。人の死、不信、博愛などというような大きなテーマを扱う曲は感動的なものですが、私は、今回の曲やThe Letterのような、James Morrisonの、小さな(?)テーマを扱った曲も、好きだなあと思います。小さいだけに質を高めることが難しい面もあると思うのですが、メタファーなどを駆使して、シンプルな言葉で美しく仕上げられている。小さくても詩の中に過去から未来へと続く物語が感じられて、そこに切り取られている場面に、自分は確かにこの感情を経験したことがある、と共感することができる。そういうところが良いと思います。
コメントありがとうございます。前の方へのコメントでも申しておりますが,この曲も完成までに4ヶ月ほどかかりました。普通に訳したのでは「それが何か?」的な曲になってしまうにもかかわらず,頼りにする海外の歌詞サイトにも全くコメントがなく,本当に八方ふさがりの中で何度も曲を聴いて和訳を完成させました。
削除この曲日本版のセカンド・アルバムsongs for you, truths for meには収録されておりませんが,地味ながら彼の良さが出た大変美しい曲だと思います。
個人的にはこの歌詞の中で一番好きなのが「I will run every red light(赤信号も全部無視する)」という箇所です。この部分を聴いた瞬間,彼が息を切らせ,それでも休まず走っている様子が浮かんで来て,即座に心を掴まれました。また,最初の連の「Leaving behind what I don't need(余計なものは置いてきた)」という箇所も素晴らしい。