和訳する際に最も苦労したのがイエローという単語。通常,臆病や嫉妬といった負の感情を意味する言葉ですが,ここではそのどちらも当てはまらないでしょう。ミュージック・ヴィデオをご覧いただくとおわかりかと思いますが,このヴィデオは夜明けに撮影され,最後に地平線から太陽が昇ってきます。そこで,このイエローという単語は,太陽のメタファー(すなわち地球上の命を育む太陽の力のメタファー)であると解釈しました。
個人的には,「君のためなら,体中の血を一滴残らず失ってもいい,それて死んでも構わないよ」の部分が白眉だと思うのですが,この箇所を聞くと,英国の詩人Dylan Thomasの名作,THE FORCE THAT THROUGH THE GREEN FUSE DRIVES THE FLOWER を思い出します。参考までに,この詩の最初の2連の拙訳を投稿の最後につけておきましたのでご覧ください。
This is definitely one of the most known Coldplay's songs and it's also known for the ambiguity of the lyrics. It's often the case with Coldplay, the lyrics allow various interpretations. The relationship between the protagonist and the second person could be parent(s)/child one, could be romantic one or could be friendship / philanthropy. There's no one right interpretation yet. Mine is the last one. The second person is a friend of the protagonist. The second person could be same-sex or could be the opposite sex.
The hardest part to translate is the word "yellow." It usually represents cowardance or jealousy but I'm sure they are not the case here. Watching the music video, you see it was shot at dawn. At the end of the video, the sun rises from the horizon. So I take the word as a metaphor for the sun fostering life on earth.
In my opinion, the best line is "For you I'd bleed myself dry." It reminds me of a masterpiece by an English poet, Dylan Thomas, "THE FORCE THAT THROUGH THE GREEN FUSE DRIVES THE FLOWER." For your information, I put the first two stanzas at the bottom of this post with my Japanese translation.
Yellow (Coldplay)
Look how they shine for you,
And everything you do,
Yeah, they were all yellow.
I came along,
I wrote a song for you,
And all the things you do,
And it was called "Yellow".
So then I took my turn,
Oh what a thing to have done,
And it was all "Yellow."
Your skin,
Oh yeah your skin and bones,
Turn into something beautiful,
You know, you know I love you so,
You know I love you so.
I swam across,
I jumped across for you,
Oh what a thing to do.
Cos you were all "Yellow",
I drew a line,
I drew a line for you,
Oh what a thing to do,
And it was all "Yellow."
Your skin,
Oh yeah your skin and bones,
Turn into something beautiful,
And you know,
For you I'd bleed myself dry,
For you I'd bleed myself dry.
It's true,
Look how they shine for you,
Look how they shine for you,
Look how they shine for,
Look how they shine for you,
Look how they shine for you,
Look how they shine.
Look at the stars,
Look how they shine for you,
And all the things that you do.
ほら,夜空に瞬くあの星を見て
君とその輝く優しさを称えて
光を放ってる
だから僕も急いで
星に負けないように
君がいてくれたことと
その思いやりに感謝して
この「イエロー(Yellow)」って曲を作ったんだ
今までしてもらったことのお礼がしたくて
同じことを今度はやってあげようとしたけど
自分じゃ全然できなくて
その大変さがよくわかったよ
だってなにもかも,太陽みたいな温かくて広い心がなきゃできないことなんだから
だけど,その思いやりと優しい心があるから
君は,目に見える外見だけじゃなくて
目にはみえない内面も
美しく光り輝いてる
本当にありがとう
この気持ちは知ってるよね?
海だって泳いで渡るし
塀だって壁だって,なんだって乗り越えるよ
君のためなら
だけど,こんなにも大変なことなんだね
本当に心の広い人じゃなきゃできないよ
だから決断した
君のために思い切ったけど
こんなに大変なことだったなんて
だって,なにもかも太陽みたいな温かくて広い心がなきゃできないことなんだから
だけど,その思いやりと優しい心があるから
君は,目に見える外見だけじゃなくて
目にはみえない内面も
美しく光り輝いてる
覚えておいて
君のためなら,体中の血を一滴残らず失ってもいい
それて死んでも構わないよ
本当だよ ウソじゃない
ほらあそこで輝く星をみて
みんな君のため
君を称えて
輝いてるんだ
他の誰でもなく
君のためにね
ほら,あそこの星を見て
あそこにの星はみんな
君とその優しさを称えて光り輝いてるんだ
(補足)
注:以下の詩はリード文でも述べたように,Coldplayとは全く関係のない20世紀の英国の詩人Dylan Thomasの詩です。ここで取り上げたのは,単に私個人がこのYellowとの類似性を勝手に感じたからであり,Coldplayがこの詩を参考にしたと言っているわけではありません。全くの別物です。
THE FORCE THAT THROUGH THE GREEN FUSE DRIVES THE FLOWER
(Dylan Thomas)
以下の詩の訳文はかなり口語的なものになっています。当初はより文語的な表現だったのですが,歌詞との類似性をお見せしたかったので,敢えて口語体で訳しました。ために拙い表現もあるかと思いますが,ご容赦ください。
The force that through the green fuse drives the flower
Drives my green age; that blasts the roots of trees
Is my destroyer.
And I am dumb to tell the crooked rose
My youth is bent by the same wintry fever.
The force that drives the water through the rocks
Drives my red blood; that dries the mouthing streams
Turns mine to wax.
And I am dumb to mouth unto my veins
How at the mountain spring the same mouth sucks.
「命の力」は,導火線のような,植物の茎を通って花を咲かせ
若く生命力にあふれた僕のこの体を作ってくれたけど
やがては,樹木の根を枯らすように
この体からも命を奪ってゆく
だから,枯れかけて醜くしぼんだバラを目の前にすると
何も言えず,ただそこに立ちつくすしかない
バラを咲かせた「命の力」が,次は冷淡にもそのバラを枯らし
生き物を死に至らしめるように
やがてこの若さも奪ってしまうとわかっているから
石の間を突き抜け,そこに水を通す「命の力」が
僕のこの体に血を通わせてるけど
やがては,豊かに湧き出ているその水を枯らすように
今この体を流れている血を奪って
僕の亡骸を蠟(ロウ)へと変えてゆく
この静脈に口を当てれば,今はそこを流れる血液の勢いを唇で感じられるけど
それでも何も言えずそこに立ち尽くすしかない
この喉を潤した山の湧水もやがて枯れるように
この血もいつかは枯れてしまうとわかっているから
(補足その2)
上でその類似性について述べたFor you I'd bleed myself dryの箇所ですが,.これは額面通りに歌詞を受け取った場合です。もしこれがwould somebody dryというイディオムであるならば,ここは「全財産を失ってもいい」という意味となります。ただ,歌詞の内容と流れを考えると,これをイディオムとして捉えるよりも,額面通りの意味で訳した方がしっくりくるような気がします。
こういう歌詞をnativeは、どんな風に感じるのでしょうね。どんな風に心に響くのでしょうね。いつもChris Martinのperformanceを観ると、その人全体を覆うカリスマ性ってこういうものなのだろうなあって、つくづく感じます。
返信削除コメントありがとうございます。海外の歌詞について語り合うサイトでも議論続出でした。私もネイティヴの方に伺いたい気持ちです。対訳くん史上最も「寝かし」の長かった曲で,正直なところ何度も「お蔵入り」寸前まで参りました。また,今回投稿したものの,個人的にもまだ決定打とは言いきれておりません。いずれ機会があれば見直したいと思っている曲のひとつです。
削除お、コールドプレイの初期の有名曲ですね。これでメジャーデビューしたんですっけ。Yellowは扱わないのかなーとおもってましたが翻訳を考えていたんですねー
返信削除コメントありがとうございます。おそらく敢えて抽象的にしているのだと思われますが,本当に難解な歌詞でした。正直なところ,今もこれでよかったのかという思いが残っておりますが,翻訳はやり始めるときりがないので,区切りをつける意味で投稿いたしました。なにかお気づきの点がございましたら,是非お知らせください。
削除このブログは音楽好きが集っていろんな意見を聞けて面白いですね^^。
返信削除ところで.........
対訳の逆バージョンで泳く事は可能でしょうか?
あまり邦楽は聴かないんですが、
去年、震災後よくラジオで流れたAIの〝ハピネス〟の歌詞が
良くてとっても気に入ってます。
で、ご相談なんですが
こんなステキな歌詞を日本だけに泳がしておくのはもったいない!
(もしかしてもう既にこういうサイトがあるのでしょうか?)
そこで、vestigeさんに是非、太平洋の対岸まで泳いで頂きたい!(およげ対岸くん?)
な〜んて思ったりして無理なコメントしてみました^^♪。
コメントありがとうございます。何故かコメントがスパムフォルダに格納されていたため,お返事が大幅に遅れたことをまずお詫び申し上げます。
削除さて英訳の件ですが,私はバイリンガルではないので太平洋を泳ぎ切るのは難しいかと存じます。無論やってみたい気持ちはあるのですが,私のような純国産の英語力で無理やり英訳しては逆にアーティストの方(この場合はAI)のご迷惑になりかねません。どうかご理解くださいますようお願い申し上げます。
さて,別館(twitter)でも余談を展開しております。まだおいでになっていなければ,お時間があればそちらへも。お待ちしております。
こんにちは。
返信削除また、こちらのページへのリンクをさせてもらいました。
昨日(6/2)早朝、ロンドン エミレーツ スタジアムでのコールドプレイのライブの生配信を聴いていたんですが、「イエロー」の演奏とともに、ちょっといろんな記憶がよみがえって、涙があふれてしまって。。。感覚、感触で、この歌をとらえていたんで、そのつかみどころの歌詞の訳を探して、また、vestigeサンのトコロにおじゃまさせて頂きました。
ありがとうございます。
コメントありがとうございます。本当に美しく素晴らしい曲ですがその歌詞の具体性のなさに一時はお蔵入りになる可能性もございました。ただ私自身もその背後に流れる物語が気にかかっていたので,どうにか諦めず最後まで訳し終えることが出来たと思います。demi_zoe様のように音楽に造詣が深くておいでの方に喜んでいただけると,これまでの苦労が報われたような気がいたします。こちらこそお礼を申し上げます。また機会がありましたら,是非お声をお聞かせください。お待ちしております。
削除はじめまして。何かいい、和訳は無いかと、思っておりましたら
返信削除貴殿のサイトに辿り着きました。
事後承諾のような形になりますが、私のブログで
貴殿のサイトをリンクさせて欲しいのです。
どうしても、この
「Cold PlayのYellow」の 貴殿の和訳を紹介したいのです。
すみません。もしも、リンクが ご迷惑でしたら
コメント欄に 入力して頂ければ 外します。
よろしくお願い致します。
コメントありがとうございます。わざわざリンクのご連絡をいただき,こちらが大変恐縮しております。当サイトはリンクに特別な制限は設けておりません。もし拙訳がお気に召したのであればどうぞお使いください。むしろお役に立てて光栄です。
削除また,別館(twitter)でも余談を展開しております。お時間があればそちらへもおいでください。お待ちしております。
はじめまして!
返信削除yellowの歌詞を探していて、こちらにお邪魔しました。
美しい歌詞と聞いていましたが、とても優しい歌詞の和訳で、
この曲の理解も深まったような気がします。ありがとうございました。
私のBLOGでこの歌詞の訳をお借りしました。
出処を紹介しリンクを貼らせて頂きましたので、よろしくお願いします。
大変申し訳ないのですが,このページ右上でお知らせしているように,匿名の方にはお返事を差し上げられなくなりました。どのようなものでも結構ですので是非お名前をお知らせください。
削除your skin and bones,Turn into something beautiful
返信削除ここめっちゃ好きです。 ブログ、楽しく読ませていただいています。
コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。この曲全編がこれメタファーなので和訳に大変苦労したのですが,それだけに喜んでくださる方がおいでになると,その苦労も報われる気がいたします。
削除日本ではオレンジですが、イギリスでは太陽の光はyellowと言うんですよ。知らないで太陽との関係に気付いたのは凄いです。
返信削除コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。海外在住経験がないのでその辺りが大変怪しいのですが,そのように仰ってくださると大変力づけられます。ありがとうございます。
削除素敵な和訳ですね。涙が出ましたよ♪
返信削除コメントありがとうございます。本当に美しい曲なのでこれまで涙腺崩壊警報が何度となく出ております。そういう意味でFix Youともども大変「危険な」曲です。
削除こんにちは、はじめまして。vestige様のBlogをお気に入りブックマークとして登録して、はや3年が経とうとしている者です。他のみなさんのコメント等も拝見しつつ、新しい音楽観との出会いを楽しんでおりましたが、学祭でYellowの弾き語りを演奏する運びとなった事をいいことに(前からコメントをしてみたかったのです笑)、本日此れをしたためております。
返信削除さて、vestige様の解釈からヒントを得て、Yellowを「生」、即ち生命として極めて包括的に
みてごらんよ
星空を
どれだけ僕らを照らしてくれているかを
そしたら解るはずさ
総ては輝く(Yellow)生命だってことに
ぐらいなものに解釈してしまうと、なんだか壮大で、クリスらしい俊英さが滲む訳になった気がいたしました。大きな宇宙の愛と、人間(クリス)との対話というのでしょうか。Yellowは、vestige様が記された通り、太陽の象徴色でもありますが、大地即ち、砂の黄土や樹木を彷彿ともさせますし、形態人類学の見地では、起源人類から現生人類における肌の色彩の平均をとると、単一黄土色と言われていることからしても、Yellowが「生」命のメタファーとして解釈すると、歌詞の各行・各行間が補完的でより美しく、鳥瞰できたと慮った次第です。
いかがでしょうか笑
学祭では、そのような大きな愛をもって(勝手ですが笑)謳わせてもらおうかと思っております。
多忙のことと存じますが、首を長くして、返信をお待ちしております。
コメントありがとうございます。私は曲の歌詞をどのように解釈するかは,基本的に聴き手の側の自由裁量に任されていると考えております。とりわけこの曲のように歌詞が抽象的であれば猶更です。したがってYuto様がそのようにお考えであるならば,それがYuto様にとっての唯一無二の解釈であり和訳でありましょうから,それに対して,私から特にこうであると申し上げる必要はないように思われます。どうか来るべき学祭でご自身の弾き語りの腕前を十分にご披露ください。
削除素敵な邦訳ありがとうございます。
返信削除この曲大好きで大好きで・・・vestige様の訳を読みながら改めて聴くと色々思い出したりなんだりで涙が止まらなくなりました。
本当にありがとうございます。
Coldplayよく聴きます。もうすぐ親友の誕生日でどんな言葉をかけようかと考えていたのですがyellowの一節からいろいろ思うことがあってその親友に伝えることが決まりました。解釈が多くのうちの一つですがしっくりきたので感謝しています!
返信削除コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。拙訳がMatch様並びに親友の方のお役に立てるとすればなによりです。
削除こんにちは。なんか知らないうちにこのページにたどり着いていました。
返信削除わたしは、日本のガールズロックバンド赤い公園が大好きで、彼女たちの曲に「黄色い花」というのがあります。この”Yellow”という歌にすごく似ている気がしたのでコメントさせていただきました。もしよかったら聴いてみてください。いい曲ですよ。「幸せは必ず黄色でできてる」
フランスのドゥエにyellowという寿司屋があります。llがお箸の看板が目印です👯♂️かわいいフランス人の女の子だよ〜
返信削除コメントありがとうございます。アトランタにもCircle Sushiという寿司屋があるようです。
削除はじめまして!One RepublicのSecretsの訳(こちらもありがとうございます)を探しているうちに、Yellowまで辿りついてしまいました。これまで漠然としか意味を考えたことがなく、いい曲だなと思っていても、彼が歌っているYellowが何のことなのかピンとこなくて入っていけませんでしたが、今日は目から鱗でした。そしてDylan Thomas!!!!今度こそ、Under Milk Woodを最後まで聞きます。本当にありがとうございました。
返信削除Emit FennのYellowを聴いて、泣いてしまうほど感動して、久しぶりにあらためてじっくり歌詞みながら聴いていてこちらに辿り着きました。詩やイディオムからの考察素晴らしいとアプローチでした。
返信削除コメント並びに過分なお言葉ありがとうございます。拙訳がamqtaro様のお役に立てたとすればなによりです。
削除こんにちは。
返信削除Coldplayの来日ライブを機に久しぶりに色々楽曲を聴いていて、yellowの曲の素晴らしさに感動しこちらを訪れました。お蔵入りになりそうやくらい和訳が難しい曲なのですね。公開してくださりとても感謝しています。
Coldplayの楽曲には愛が感じられる曲が多く、心が温まります。
コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。当時は歌詞の意味も全く掴めず和訳する際には本当に苦労いたしましたが,それでもこうして公開した拙訳がはるちゃん様のお役に立てたとすれば望外の喜びであり,あの苦労も報われたような気がいたします。
返信削除