2013年2月10日日曜日

Twisted ジョニ・ミッチェル (Joni Mitchell)

歌詞の中で主人公は,自分はおかしくないと聴き手である我々を説得しようとするのですが,皮肉なことに,彼女がそうすればそうするほど,実際はそうでないように思えてきます。
実はこの曲,訳し終わるのに2時間もかからなかった上,歌詞を和訳しながら,まるで彼女が自分の頭の中にいるような,あるいは彼女が自分の一部であるような気がしました。
聞くところによると,優れたプロファイラーは犯罪者の心理を真に理解するとか。仮にそれが本当なら,この一件,自分に優秀なプロファイラーになる資質があると考えて喜ぶべきなんでしょうか?それとも単に「どうかしてておかしい」んでしょうか?
In the lyrics, the protagonist tries to convince us (audience) that she is sane.  Ironically, however, the more she talks, the more we get an impression that she's actually not.
I finished the translation of this lyrics in less than two hours.  Translating it, I felt as if she's talking in my head or she's a part of myself.
They say an excellent profiler truly understands the mind of a criminal.  Suppose it's true, does this mean I have a potential to be a good profiler and should be happy about it?  Or it just means that I'm "right out of my head"?
Twisted  (Joni Mitchell)
My analyst told me
That I was right out of my head
The way he described it
He said I'd be better dead than alive
I didn't listen to his jive
I knew all along
That he was all wrong
And I knew that he thought
I was crazy but I'm not
don't know

My analyst told me
That I was right out of my head
He said I need treatment
But I'm not that easily led
He said I was the type
That was most inclined
When out of his sight
To be out of my mind
And he thought I was nuts
No more ifs or ands or buts

They say as a child
I appeared a little bit wild
With all my crazy ideas
But I knew what was happening
I knew I was a genius...
What's so strange when you know
That you're a wizard at three
I knew that this was meant to be

Now I heard little children
Were supposed to sleep tight
That's why I got into the vodka one night
My parents got frantic
Didn't know what to do
But I saw some crazy scenes
Before I came to
Now do you think I was crazy
I may have been only three
But I was swinging

They all laugh at angry young men
They all laughed at Edison
And also at Einstein
So why should I be sorry
If they just couldn't understand
The idiomatic logic
That went on in my head
I had a brain
It was insane
Oh they used to laugh at me
When I refused to ride
On those double decker buses
All because there was no driver on the top

My analyst told me
That I was right out of my head
But I said dear doctor
I think that it's you instead
Because I, I got a thing
That's unique and new
To prove it I'll have
The last laugh on you
'Cause instead of one head
I got two
And you know two heads are better than one.

かかりつけの精神科医がこういった
どうかしてる,おかしいって
で,こう言うんだ
こんなんじゃ生きてる意味なんかない
死んだ方がマシだって
だけどそんな戯言(たわごと)なんか気にしてない
だってずっとわかってたから
おかしいのはあっちの方だって
逆に向こうはこっちがって思ってた
確かにそうだったときもあったけど
今はもう違うから
多分

かかりつけの精神科医がこういった
どうかしてる,おかしいって
で,こう言うんだ
ちゃんとした治療を受けなきゃダメだって
だけどそんな話,すぐ信じるほどバカじゃない
特に酷いタイプだって言われたよ
だから目を離すと
すぐにおかしくなっちゃうって
「頭おかしい」って断言されたよ
「~だとしたら(頭がおかしい)」っていう仮定もなけりゃ
「(頭がおかしくて)それに」っていう付け足しもない
「(頭がおかしい)けど」っていう譲歩だって勿論ない 
正真正銘混じりっ気なしの
「おかしいヤツ」なんだって

周りからは,子どもの頃から
ちょっと変わってたって言われてる
ヘンなことばかり考えてる
そんな子どもだったって
だけど自分では
天才だってちゃんとわかってた
どうしてそんなにおかしいのかな?
3つの時から魔法が使えるとわかってたら
そういうもんだと思ってたよ

周りからこう言われたよ
小さい子どもはよく眠らなきゃいいけないって
だからある晩ウォッカを飲んだら
両親が慌てて大騒ぎになった
どうすればいいかわからなかったけど
この世のものとは思えないヘンな景色が見えてきて
それからやっと気が付いた
ヘンなやつだって思ってるでしょ?
ほんの3つだったけど
なかなか上手くやってたよ

あいつらは,不条理に反発する
若い世代をバカにするけど
あいつらは,エジソンの時だって
アインシュタインの時だって
その凄さがわからずバカにしてた
だから別に気にしない
芸術家にしかわからない理窟で
この頭のなかは動いてるけど
それがあいつらにわからなくても
そんなの大したことじゃない
頭は悪くなかったんだ
ちょっとネジが緩んでただけ
以前はよくバカにされたよ
イヤがって
2階建てバスに乗らずにいると
だけどあのバスの2階には
運転手がいないんだよ 怖いでしょ?

かかりつけの精神科医がこういった
どうかしてる,おかしいって
だからこう言ってやったんだ
「先生,おかしいのは先生の方でしょ」
だってこっちには
他の人にはない新しい何かがあって
それがあれば
最終的にはこっちの勝ちなんだから
だってこっちの頭の中には
人間が2人いるんだよ
何かのアイディアを出すためには
人数は多い方がいいんだから

(補足)

この曲,最後にいわばオチがあるのですが,このオチ「two heads are better than one(2つの頭脳は1つに勝る)」を日本語の表現すると「三人寄れば文殊の知恵」となります。ただここを「三人寄れば~」としまっては,英語のtwo headsとズレが生じるため,敢えて訳文では「人数は多い方がいいんだから」としました。

(余談)

Joni Mitchellという名前だけは知っていたのですが,彼女の曲を聴いたのは(正確にはこれはカヴァーであって彼女のオリジナルではないらしいのですが)これが初めてです。

それにしても,曲調自体が「いっちゃってる」感満載です。診察室でこういう風に喋ってるんじゃなかろうかと思うほど。サックスのイントゥルメンタルであったなら,これほど違和感は感じないのかもしれませんが,歌でこれをやられると相当に当惑します。

おそらく脳内に「歌のあるべき姿(正確にはヨーロッパ音楽における歌の姿」というものがすでに刷り込まれていて,それから外れると戸惑うのだと思いますが,仮にそうであるなら,刷り込みが完成する以前の2・3歳の子どもは意外に無理なく馴染むのかもしれません。

以前はラップなど歌にあらずと思っていた私ですが,これに比べればずっと「歌」に近いような気がします。

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