2013年4月9日火曜日

Bang Bang シェール (Cher / Nancy Sinatra / Stephen Simmonds)

この曲で最も知られているのは映画「キル・ビル」に使用されたNancy Sinatraのカヴァーだと思われますが,実はあのCher姐さんが1966年に出したものがオリジナルです。ただ本館で取り上げるきっかけになったのはそのどちらでもなく,Stephen Simmondsのカヴァーを知ったから。
面白いことに,彼のカヴァーを聴いた時,私は歌詞に登場する相手(女性)が主人公(男性)を残して突然亡くなったのだと思ったのですが,Nancy Sinatraのカヴァーを聴いた時には,結婚式当日に相手の男性が主人公の女性を教会の祭壇に残したままいなくなったという全く別の印象を受けました。
歌詞自体は主人公と相手の性別以外は全く同じなのに,この違いはどこから来るのでしょうか?おそらく曲調のせいだとは思うのですが,ひょっとしたら私にジェンダー的偏見があるのかもしれません。
Probably the best known version of the song is a cover by Nancy Sinatra which was featured in a motion picture 'Kill Bill' but Cher sang the original in 1966.   None of them, however, brought me to this song.  I picked up the song just because I was completely hooked by a cover by Stephen Simmonds.
Funny, when I heard his cover, I thought the second person (a girl)  in the lyrics passed away suddenly leaving the protagonist (a guy)  behind.   When I heard a cover by Nancy Sinatra, however, I had a completely different impression that the second person (a guy) left the protagonist (a girl) at the alter (during their wedding).
The lyrics are basically identical, of course, except for the gender of the protagonist and the second person.  So what makes me think this way?  Maybe the way the song sounds does. Or I'm gender-biased.  Maybe so.
Bang Bang  (Cher / Nancy Sinatra / Stephen Simmonds)
(Nancy Sinatra Cover)
(Stephen Simmonds Cover)
 
I was five and he was six
We rode on horses made of sticks
He wore black and I wore white
He would always win the fight
Bang bang, he shot me down
Bang bang, I hit the ground
Bang bang, that awful sound
Bang bang, my baby shot me down.

Seasons came and changed the time
When I grew up, I called him mine
He would always laugh and say "Remember when we used to play?"
Bang bang, I shot you down
Bang bang, you hit the ground
Bang bang, that awful sound
Bang bang, I used to shoot you down.

Music played and people sang
Just for me the church bells rang.
Now he's gone, I don't know why
And 'till this day, sometimes I cry
He didn't even say goodbye
He didn't take the time to lie.
Bang bang, he shot me down
Bang bang, I hit the ground
Bang bang, that awful sound
Bang bang, my baby shot me down

こっちは5つであの子は6つ
棒切れを馬見立てて
西部劇の真似して遊んだ
あの子は黒を,こっちは白を着てた
決闘に勝つのはいつもあの子の方で
バンバン!ってこっちが撃たれては
バンバン!そのたび地面に倒れてた
バンバン!っていうヘタクソな銃声が聞こえると
いつもあの子に撃たれて死んだよ

やがて季節がめぐって時が過ぎ
大人になって,付き合うようになった
よく笑ってはこう言ってたね「覚えてる?昔よく遊んだろ?
バンバン!撃つのはいつもこっちでさ
バンバン!って言うと倒れてくれた
バンバン!って言いながら
バンバン!よく撃つ真似をして遊んだよね」

音楽がかかって周りの歌声も聞こえてた
教会の鐘も自分のために鳴ってたのに
.
なのにあの人はここにはいない
一体どうしてなのかわからない
今日という日が来るまでに
何度か泣くこともあったけど
さよならの言葉も言わないまま
あっという間にいなくなった

バンバン!その一撃で
バンバン!すっかり打ちのめされた
バンバン!ってあの音が聞こえてくる
大好きなあの人が
こんな仕打ちをするなんて

(余談)

リード文でも述べたように,この曲に心ひかれたのはStephen Simmondsのカヴァーがあったから。カヴァーの意味がその曲の再定義(redefinition)にあるとすれば,まさにこれがそうかもしれません。なにしろ,オリジナルとは曲から受けるイメージが全く違います。

(Stephen Simmonds version)

こっちは5つであの子は6つ
棒切れを馬見立てて
西部劇の真似して遊んだ
こっちは黒を,あの子は白を着てた
決闘に勝つのはいつもあの子の方で
バンバン!ってこっちが撃たれては
バンバン!そのたび地面に倒れてた
バンバン!っていうヘタクソな銃声が聞こえると
いつもあの子に撃たれて死んだよ

やがて季節がめぐって時が過ぎ
大人になって,付き合うようになった
よく笑ってはこう言ってたね「覚えてる?昔よく遊んでしょ?
バンバン!撃つのはいつもこっちだったけど
バンバン!って合図で倒れてくれたね
バンバン!って言いながら
バンバン!よく撃つ真似をして遊んでた」

音楽がかかって周りの歌声も聞こえてた
教会の鐘も鳴ってたよ

なのにあの子はもういない
今も理由がわからない
今日という日が来るまでに
何度か涙も流したけど
さよならの言葉も聞けないまま
気が付いたらお別れなんて

バンバン!その一撃で
バンバン!すっかり打ちのめされた
バンバン!ゾッとするようなあのイヤな音
あの子のことを思うと
もうとても立ち直れない

(余談 その2)

私の思い入れが強すぎて,意訳しすぎと仰る方もおいでになるかもしれませんが,相手が突然亡くなったという説はネイティヴの方の間でも支持を集めている説なので,強ち外れているとは思えません。とにかくこれを聴かなければ,この曲の魅力を半分しかわからないような気さえします。

曲を聴いた時からずっと疑問だったのが「Bang Bang, the awful sound」という箇所。最初の連ではおそらくawfulは子どもが出す「ヘタクソな銃声」という意味だと思いますが,このawful soundという箇所は最後まで出てくるので,何か理由があるとずっと考えていました。

この曲,歌詞だけ見たのでは,主人公と相手が具体的にどうなったのかについて,これといった決め手がありません。ただ,Stephen Simmondsのカヴァーでは亡くなった説に説得力があります。

そうであれば,この部分のBang Bangは別の音を敢えてBang Bangという音で表しているのかもしれません。相手の女性が事故で亡くなったのならその時の事故の音,病気で亡くなったのならその時病院で聞こえていた音・・・。そう考えると,the awful soundという箇所が活きてきます。

さらに言えば,「I wore black and she wore white」の箇所。最初の子どもの頃の連にしか出てこないので,単に着ていた洋服の色に思えますが,これはひょっとすると

結婚式・・・・・・・新郎は黒の礼服,新婦はウェディングドレス
葬儀・・・・・・・・・主人公は喪服,相手は白いドレス(こちらは亡くなった説が前提ですが)

を表しているのかもしれません。子ども時代の回想シーンに現在のシーンが挿入される形です。

そうなると,余計に「亡くなった説」に説得力が出てきます。

第一連・・・子ども時代の思い出。ここでは白と黒は単に着ていた服の色
第二連・・・結婚式。礼服とウェディングドレス
第三連・・・葬儀。喪服と故人の好きだった服(ウェディングドレスの可能性もあり)

したがって,これらを考え合わせると,悲しく切ない物語が浮かび上がってきます。

主人公と相手は幼馴染で成長して結婚したが,その後ほどなく不慮の事故に(主人公と共に)巻き込まれ帰らぬ人となった。

無論,本当のところはこの曲を書いたSonny Bonoに聞くしかないのですが,彼は既に故人なのでそれもできません。ただ仮にこれが正しいとすると,彼の力量に圧倒されるばかり。まさにプロの技です。

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