2013年6月12日水曜日

Popular Song ミーカ (Mika ft. Ariana Grande)

シンプルで明るいメロディーとは裏腹に,歌詞の内容にはやや毒があります。この曲の和訳は一見容易いように思えるのですが実は違います。その理由は歌詞に登場する二人称YOUひとつで,全く異なる2種類の人間を表しているように思えるためで,一方は「(学校時代の)人気者」で,もう一方が「(学校時代の)変わり者」ですが,アーティストのMikaは自分は後者だ(った)と考えているようです。
Despite its simple and upbeat tune, the lyrics of this song is a bit poignant.  At a glance, it seems to be pretty easy to translate the lyrics into Japanese but it's not.  What makes translation much harder than expected is that the second person pronoun, YOU in the lyrics seems to represent two different groups of people.  One is the  popular ones and the other the "losers," In this song, the singer, Mika is addressing himself as one of the latter.
Popular Song  (Mike ft. Ariana Grande)
La la, la la
You were the popular one, the popular chick
It is what it is, now I'm popular-ish
Standing on the field with your pretty pompons
Now you're working at the movie selling popular corn
I could have been a mess but I never went wrong
Cause I'm putting down my story in a popular song
Said I'm putting down my story in a popular song

[Chorus:]
My problem, I never was a model,
I never was a scholar,
You were always popular,
You were singing, all the songs I don't know
Now you're in the front row
Cause my song is popular

Popular, I know about popular
It's not about who you are or your fancy car
You're only ever who you were
Popular, I know about popular
And all that you have to do is be true to you
That's all you ever need to know

Catch up cause you got an awful long way to go
Catch up cause you got an awful long way to go

Always on the lookout for someone to hate,
Picking on me like a dinner plate
You hid during classes, and in between them
Dunk me in the toilets, now it's you that cleans them
You tried to make me feel bad with the things you do
It ain't so funny when the joke's on you
Uh, the joke's on you
Got everyone's laughing, got everyone clapping, asking
How come you look so cool?
Cause that's the only thing that I've learned at school, boy
So that's the only thing I've learned at school

[Chorus:]
My problem, I never was a model,
I never was a scholar,
You were always popular,
You were singing, all the songs I don't know
Now you're in the front row
Cause my song is popular

Popular, I know about popular
It's not about who you are or your fancy car
You're only ever who you were
Popular, I know about popular
And all that you have to do, is be true to you
That's all you ever need to know

Catch up cause you got an awful long way to go
Catch up cause you got an awful long way to go

Before the next time that you calling him crazy
Lazy, a faggot, or that fugazi
Here's the one thing that's so amazing
It ain't a bad thing to be a loser, baby!

All you ever need to know
You're only ever who you were
All you ever need to know
You're only ever who you were

Popular, I know about popular
It's not about who you are or your fancy car
You're only ever who you were
Popular, I know about popular
And all that you have to do, is be true to you.
That's all you ever need to know...

あの頃はとにかく人気があって
みんなのアイドルだったよね
今はもう違うけど
それが現実なんだから諦めなきゃ
今注目されてんのはこっちの方
あの頃はフットボールのフィールドで
みんなの注目を浴びながら
キレイなポンポンを振って踊ってたのに
今じゃ映画館で働いてポップコーンを売っている
確かに人は集まってくるけど
みんなの目当てはポップコーンだよ *
あの頃は,どうにかなってもおかしくない 
そんなこともあったけど
それでもそうならずにすんだんだ
だって苦しかったあの頃のことを
ポップ・ソングにして乗り越えてる **
辛い思い出をこうやって歌にしてるんだよ

[Chorus:]
あの頃の自分の悩みは
見た目がパッとしなかったこと
成績だって大したことない
なのにお前はいつでも憧れの的で
こっちには全然縁のなかった
楽しい経験をいっぱいしてた
ああ確かに今はこうやって
お前も注目されてるよ
けどそれはこっちが取り上げてやったから
この曲が受けてるからなんだ

だってもう今はわかってるから
「人気がある」っていうのは
こういうことだって
別に見た目がいいとか
高級車を持ってるとか
そういう外側の問題じゃない
人間の値打ちは内側にある
お前は所詮その程度
だってもう今はわかってる
「人気がある」っていうのは
こういうことだって
結局のところ大事なのは
自分にウソをつかないで
本当の自分で生きていくことなんだ
それだけは覚えとけよ

追いついてこいよ まだかなり開きがあるんだから
遅れるなよ もう随分離されてるぞ

とにかくちょっかい出したくて
標的にする相手を探しては
こっちをあげつらってばかりいた
教室では大人しくしてたけど
授業の間の休みには
トイレで酷い目に遭わされた
だけど今じゃそのトイレをお前が掃除してる
あの頃は何かというと難癖つけて
ちょっかい出して
人を苦しめようとしてたけど
いざ自分がその立場になってみたら
そんなにいい気持ちはしないよな?
やられる側だと笑えないだろ?
今度はお前が笑い者だ
どこへいっても周りから
手を叩いて大袈裟に笑われて
皮肉交じりにこう聞かれるんだ
「なんでそんなにクールなんだよ」なんてな
間違いないね
だって学校生活で学んだことなんて大してないけど
唯一これだけはわかったから

[Chorus:]
あの頃の自分の悩みは
見た目がパッとしなかったこと
成績だって大したことない
なのにお前はいつでも憧れの的で
こっちには全然縁のなかった
楽しい経験をいっぱいしてた
ああ確かに今はこうやって
お前も注目されてるよ
けどそれはこっちが取り上げてやったから
この曲が受けてるからなんだ

だってもう今はわかってるから
「人気がある」っていうのは
こういうことだって
別に見た目がいいとか
高級車を持ってるとか
そういう外側の問題じゃない
人間の値打ちは内側にある
お前は所詮その程度
だってもう今はわかってる
「人気がある」っていうのは
こういうことだって
結局のところ大事なのは
自分にウソをつかないで
本当の自分で生きていくことなんだ
それだけは覚えとけよ

追いついてこいよ まだかなり開きがあるんだから
遅れるなよ もう随分離されてるぞ

またあいつのことをこんな風に呼ぶつもりだろ?
あいつイっちゃってるよとか,だらしないとか
オカマじゃねえかとか,パチもんだとか
だけどその前にすごくいいことを教えてやる
ベイビイ,「負け犬」になるのも悪くないぞ

これだけは覚えとけよ
所詮お前はその程度
忘れんなよ
その程度の人間なんだよ(2回繰り返し)

だってもう今はわかってるから
「人気がある」っていうのは
こういうことだって
別に見た目がいいとか
高級車を持ってるとか
そういう外側の問題じゃない
人間の値打ちは内側にある
お前は所詮その程度
だってもう今はわかってる
「人気がある」っていうのは
こういうことだって
結局のところ大事なのは
自分にウソをつかないで
本当の自分で生きていくことなんだ
それだけは覚えとけよ

(補足)

この曲,ミュージカルWickedのPopularという曲をベースにしているそうです。

(余談)

リード文でも述べましたが,明るくポップな曲調に翻弄されました。というのもYOUが一体誰なのか判然としなかったからです。なにしろ日本語と違い,英語には二人称がたったひとつしかありません。単数も複数も全く同じ形です。「てめえ」「お前」「あなた」「君」「あなたたち」「お前ら」どれもみなYOUです。

この点はネイティヴも面倒だと思っているのか,会話ではYOU GUYSと複数の時は言ってくれたりするのですが,残念なことに,歌詞の場合ほとんどがYOUです。

しかもこの曲,皮肉が効いてるというか,要するにかなり辛辣です。今までここ本館で取り上げてきた曲のほとんどが,辛い目に遭っている人に「お前にはまだ気づいてない力がある。いくら周囲にバカにされても諦めるな。お前はすごい人間なんだから」というメッセージのものだったからです。その典型がEminemのBeautifulでしょう。

したがって,和訳する私の側に,いわゆる「敗者(losers)」に向けた励ましのメッセージがあるはずだという一種の「先入観」があったため,歌詞に登場するYOUのうち,一体どのYOUがかつての「勝者(popular ones)」に向けたもので,どのYOUが「(自分を含めた)変わり者(losers)」に向けたものであるのかがわからなくなりました。

特にこの部分

Here's the one thing that's so amazing
It ain't a bad thing to be a loser, baby!

「変わり者(=現在辛い思いをしている側)」に向けたものだとすれば,「「負け犬」でいることはちっとも恥ずかしいことじゃない。周りとは違うってことなんだから,誇りを持て」というほどの意味になるかと思います。

しかしこれが「かつての勝者(=いじめた側)」に向けたものだとすれば,「悪いな。今度はお前がバカにされる側だ。まあせいぜい頑張れよ。笑われんのも悪くないぞ」的な皮肉です。

悩んだ末にネイティヴにこの点を確認したところ,後者だと言われたのでそれにしたがって和訳しました。要するにこの曲,最初から最後まで,自分を辛い目にあわせた相手をバカにしている訳です。

ところで,このミュージック・ヴィデオが描くような状況に対して,音楽にしろTVドラマにしろ,今まで(そしておそらく今も)主流だったのは,GleeやMatisyahuのLive Like A Warriorのように,「お前は悪くない。悪いのは向こうだが,相手にするな。お前の方がずっと素晴らしい人間なんだから。そんなヤツらに大切な時間を無駄にせず,前を向いて生きていけ」というようなものがほとんどだったような気がします。(無論私が知らないだけなのかもしれませんが)。

しかし,この曲,現在アメリカで(おそらく)ヒットしています。「右の頬を打たれたら左の頬を差出しなさい」というキリスト教的教えが根強く残るかの国にあって,しかもラップやヒップホップではなく,ポップソングの世界にあって,この曲がヒットしているということが意外です。

ただ作る側もそれだけではあまりだと考えたのか,このミュージック・ヴィデオ,最後のところで「人を呪わば穴二つ」と若干教訓めいたオチになっています。

6 件のコメント:

  1. "結局のところ大事なのは
    自分にウソをつかないで
    本当の自分で生きていくことなんだ"のフレーズをみて、故東郷健も似たようなことを言っていたのを思い出しました
    たしかに、割りと普遍的な考え方ではあるでしょうが、セクシャルマイノリティの方がいうと、より強く訴えかけてくるものがありますね

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  2. YouTubeでこの曲を知り、歌詞の内容が気になっていました!いつか、和訳されるといいなあと思っていたところだったので、うれしいです。歌詞とは関係ないですが、ミュージックビデオで大鍋をかき混ぜるシーンが出てきたり、ちょっとダークな雰囲気から魔術学校を連想したりしてました。笑

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    1. コメントありがとうございます。お役に立てて光栄です。それにしても,確かに仰る通り,衣装といい,メイクといい,食事する部屋のインテリアといい,魔術学校っぽいですね。

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  3. MIKAのこの曲!!!
    和訳していただきとてもうれしいです^^

    彼の曲はいつも雰囲気は明るいのに歌詞の中には皮肉がたくさん盛り込まれていて、なかなか腹黒です…。
    だからきっとPopular songそうなんだろうなぁと思ったら…やっぱりそんな感じでしたね…^^

    MIKAは幼い頃から辛い経験が多いようです。
    今でも、MIKAが自分のセクシャリティーををはっきりと明かし始めてから、いろんな意見が飛び交っていると思います。
    今でもそんな皮肉めいた曲を書き続ける彼の心の中は、一体どうなっているのか、気になります。
    歌を作ることでうまく心のバランスを保っているのならいいのですがね…。><

    すいません、MIKAの記事が嬉しすぎて語ってしまいました…。

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    1. コメント並びに情報をありがとうございます。そう言って喜んでくださると和訳の苦労も報われるような気がいたします。
      この歌詞,本当に良く出来ていて,おそらく歌詞に登場するpopular onesの当人達にはそれが自分のことだとわかっていると思いますが,我々一般人にはそれがあからさまにはわからないようになっています。
      彼はセクシャリティの点であれこれ言われているようですが,どうかそのようなものに影響されず,今後も自分を貫いて欲しいと思っております。
      最後に申し上げておきますが,個人的に「熱い方」は大歓迎なのでお気になさいませんよう。機会があればまた是非お声をお聞かせください。

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  4. サビが誤訳です、直しましょう。
    英語がわからない人に誤解をさせます。
    この曲はわたしも大好きな曲なのでみなさんにちゃんと理解してほしいです。

    以下のサイトを参考にしてください。
    http://www.huffingtonpost.com/2013/04/29/mika-ariana-grande-popular-song-_n_3180396.html

    もともとこの曲は有名なミュージカル「ウィキッド」のPopularという曲のカバーです。
    オリジナルであるPopularが、魔法学校の人気者によってうたわれる曲である一方、このPopular Songは真逆の設定です。
    つまり、Let the loser singです。
    ここをきちんと理解されていないと、上記のような誤訳になってしまいます。

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