2012年9月12日水曜日

One ユーツー (U2 ft. Mary J. Blige)

この曲の解釈は一つではありません。U2というバンドについて歌った曲かもしれませんし,AIDS患者についての曲,あるいは離婚について歌った曲かもしれません。U2のBonoによれば,この曲は人間関係を歌ったものらしい。
また,複数のミュージック・ヴィデオが存在しており,そのそれぞれが別の解釈に基づいて作られているようです。Mary J. Bligeが参加したこのヴァージョンを聴くと離婚説に説得力を感じますが,このコラボが2006年のハリケーン・カトリーナ救済目的であったことを考えると,もっと博愛主義的なもの,すなわち,人類について歌った曲なのかもしれません。
今回は,AIDS患者についての曲であるという解釈を採用しました。瀕死の状態にあるゲイの息子が,カムアウト以来自分に会うことを拒んできた父親に,たとえ抵抗があっても,お互いに相手を受け入れなければならないと語りかけるという内容です。
This song can be interpreted by many ways.  It could be about the band, AIDS victims or a divorce.  Bono said it's about relationships.
For this song, several videos exist and each of them seems to demonstrate a different interpretation.  With Mary J. Blige, the divorce take seems more convincing but considering the fact that they did the collaboration for a benefit of the victims of Hurricane Catrina in 2006, this song should be interpretated more philanthropic way, i.e. a song about us, humans.
Here I take the AIDS victims interpretation.  A gay son, dying of AIDS is telling his father who has refused to see his son since he came out of the closet that they should accept each other even if they don't want to.
One  (U2 ft. Mary J. Blige)
(lyric video)
Is it getting better
Or do you feel the same?
Will it make it easier on you?
Now you got someone to blame

You say
One love
One life
When it's one need
In the night
It's one love
We get to share it
It leaves you darling
If you don't care for it

Did I disappoint you?
Or leave a bad taste in your mouth?
You act like you never had love
And you want me to go without

Well it's too late
Tonight
To drag the past out
Into the light
We're one
But we're not the same
We get to carry each other
Carry each other
One...

Have you come here for forgiveness?
Have you come to raise the dead?
Have you come here to play Jesus?
To the lepers in your head

Did I ask too much
More than a lot?
You gave me nothing
Now it's all I got
We're one
But we're not the same
We hurt each other
Then we do it again

You say
Love is a temple
Love is a higher law
Love is a temple
Love is the higher law
You ask me to enter
Well then you make me crawl
And I can't be holding on
To what you got
When all you got is hurt

One love
One blood
One life
You got to do what you should

One life
With each other
Sisters
Brothers

One life
But we're not the same
We get to carry each other
Carry each other

One...
One

どう,スッキリした?
それともこんなもんじゃ納得できない?
そうやれば気が楽になるの?
さっきからずっと責めてばかりだよ

こう言うんだろ?
人の正しい「生き方」はひとつだけ
「愛」の形もひとつだけ
お前の「生き方」や「愛」は間違ってる
苦しい時こそこの正しい「愛」が必要なんだ
だから,みんながその同じ「愛」をわかちあわなきゃいけない
そうしないと「愛」の方が逃げて行くって

がっかりさせた?
後味の悪い思いをさせた?
心ある人ならできないようなひどいことをしてるのに
それが正しいことだから
相手にもそうしろっていうんだね

今夜はもう遅い
こんな時間から過去をさらけだしてあれこれいっても仕方ない
みんな同じ「人間」だけど,だからって「同じ人間」でなくてもいい 
それぞれ違うのが当たり前で
だからこそ,お互いに支え合わなきゃならない
助け合わなきゃならないんだ
みんな「人間」なんだから...

今までのことを後悔して
それで謝りにここに来たの?
それとも死者を蘇らせるように
今までのことを蒸し返しにここに来たの?
じゃなきゃキリストがしたみたいに
癒して救ってやろうってことなわけ?
「哀れなヤツ」と思ってるから

欲張り過ぎだ,身の程知らずだって言ってるけど
そもそも何かくれたわけ?結局なにもくれなかったよね?
みんな同じ「人間」だけど,だからって「同じ人間」でなくてもいい
なのに「同じ人間」になるために,お互いに傷つけあっては
また同じことを繰り返す

こう言いたいんだよね?
「愛」は神から与えられた神聖なもの
それより大事なものはないって
どんな人間も手が出せない
それこそが「人の道」だから
相手にもそうすることを求めるけど
そのためには,相手は誇りを捨て魂を売らなきゃならない
だけどそんなことはできない
そんなことしても
結局傷つくだけだから

「愛すること」に違いはない
同じ血が流れてる
誰にだってその人なりの人生がある
だから自分がなすべきことをすればいい

誰だって同じ「人間」なんだ
だから人間という括りで見れば
誰もがみんなひとつの「家族」
姉妹であり兄弟達なんだよ

だれもが同じ「人間」だけど
だからって,「同じ人間」でなくていい
それぞれ違うのが当たり前で
だからこそ,お互いに支え合わなきゃならない
助け合わなきゃならないんだ

みんな「人間」なんだから...

相手を想う気持ちは同じ

(補足)

この曲について,U2のBonoは次のように語っています:

「この曲は団結について歌った曲だが,昔のヒッピーがやってたような「さあみんな一緒に暮らそうぜ!」的なものじゃない。実際のところは,その反対で,みんな同じ「人間」だけど,「同じ人間」でなくてもいいというのがこの曲のメッセージ。それどころか,お互い仲良くしたいと思ってさえいないけど,それでもこれから生き残っていくためには,お互い折り合いをつけて上手くやっていかなきゃならない。この曲を聴くと,他に選択肢はないんだといつも気が付く」
"It is a song about coming together, but it's not the old hippie idea of 'Let's all live together.' It is, in fact, the opposite. It's saying, We are one, but we're not the same. It's not saying we even want to get along, but that we have to get along together in this world if it is to survive. It's a reminder that we have no choice." -Bono

思うに,ミクロ的な人間関係であれ,マクロ的な宗教上の対立であれ,この世の中の揉め事の大半は, 相手に自分と同じようになることを求めるために起こっているような気がします。だとすれば,以前もどこかで言ったと思いますが,「たとえ自分が気に入らないものでもギリギリまで許容する」ことが一番必要なことなのかもしれません。

この曲は9月5日の夜にリクエストされました。9月7日の朝にはリクエストをお断りすることにしたので,本当に最後の最後で間に合ったリクエストでした。

ここ本館はある種和訳のデータ・ベースなので,公開後半年以上経過してコメントがつく投稿もあります。そのため,コメントの総数は現時点で実はもう800以上あります。無論その半分は私が書いたものですが,それでも400以上のコメントがついている計算です。時々思い出してはそのコメントを読むのが私の密かな楽しみです。

8 件のコメント:

  1. そうはいっても、心が受けつけるのが難しいようなメッセージも、メロディにのせてやってくると、すっと入ってしまいます。musicianの方々って偉大です。
     最近、このサイトをみつけました。ランチタイムに更新をチェックするのが、目下の楽しみになってます。詩の理解も深くて、日本語の選び方も的確でびっくりです。最後にオチまでつけてくださる努力に脱帽です。

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    1. コメントありがとうございます。仕事の都合上,コメントをいただいてもすぐに公開はできませんが,その場合でもこちらには届いておりますのでご安心ください。
      ランチタイムのお供として,多少なりともお役に立てて光栄です。また何かありましたら,遠慮なくお声をお聞かせください。お待ちしております。

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  2. こんにちは、9/5にリクエストをした者です。遅くなりましたがお礼に伺いました。素晴らしい対訳をありがとうございます。最後の最後に受け付けていただいて、光栄です。なるほど…。一対一の個人的な関係から、国同士の紛争まで解釈できる、普遍的な内容の歌なんですね。大きな歌だと思いました。歌詞を知れて本当に嬉しいです。これからも更新を楽しみにしています。どうぞお体にお気をつけて…

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    1. コメント並びにお優しいお言葉をありがとうございます。こちらこそこのような素晴らしい曲をご紹介いただきお礼を申し上げねばなりません。この曲を聴き,対訳を見た妹は,U2を見直したと,上から目線で語っておりました。また何かありましたら,是非またお声をお聞かせください。お待ちしております。

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  3. こんばんは。最近U2を聞き始めたこともあって、「対訳くん」内でU2の曲を探したら、案の定あったので閲覧しました。この曲はまだMusic Playerには入っていないんですがOasisのnoel(?)が好きだと聞いていたので拝聴。
    このサイトのおかげで歌詞にも興味を持ち始めたんですが、すごく考えさせられました。vestigeさんがいうように捉え方は様々だけど、一番人間としての根幹部分に訴えかけるものを感じました。
    生きてるうちに一回は、生の音を聞いてみたいです。

    ps 大学生活はとっても充実していて、趣味も合う仲間や刺激しあえる人が多いです。vestigeさんもお体に気を付けて和訳がんばってください。

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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。充実した大学生活を送っておいでのようでなによりです。個人的にこの曲のテーマは「自分とは相容れない他者をそれでも受け入れようとする」ことではないかと思っております。

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  4. vestigeさんの訳文はこの上なく素晴らしいと思いますが、かなりの意訳になっているのでしょうか。

    上の歌詞と訳文がいまいち対応していないように感じてしまいました。

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    1. コメントありがとうございます。右上の「このブログをご覧になる方へ」でも申し上げているように,このサイトの訳文は私個人というフィルタを通して見た歌詞の世界です。したがって,一定の解釈に従った上で前後の流れを考慮に入れて和訳せざるを得ず,その結果意訳となってしまうのは致し方ないところです。無論なるべく原文を反映させるべく努力はしておりますが,極端な例を出せば「I hate you」を「大好き」と訳す場合もないとは言えません。ただ歌詞に可能な限り対応している和訳をお望みのChaungo様のような方も当然いらっしゃいましょうから,そのご期待に添えなかったことはここにお詫び申し上げます。

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