2013年7月7日日曜日

The Last Resort イーグルス (Eagles)

この本館を始めようと思った理由のひとつは,歌詞が描こうとする世界を,まるで映画の一場面のように鮮やかに描き出してくれる和訳が見つからなかったからでした。無論文法的には正しく何も問題はなかったのですが,それでもやはりどことなくよそよそしい感じを拭いきれず,身近に感じられるものが読みたかったので,自分でやることになりました。
この曲はある方がご紹介くださったのですが,その方が仰るには,CDについているブックレットの和訳が想像とは違っていたそうです。そのお気持ち,実によくわかるので,今回の拙訳がお気に召すよう祈っております。
One of the reasons I started my blog was that I couldn't find any Japanese subtitles, vividly portraying the world a song lyrics were trying to depict as if it's a scene from a film.  They're grammatically correct, of course and coherent with the original lyrics but to me they felt somewhat too 'distant'.  I wanted something more 'intimate'.  So I decided to make them myself.
A person asked me to pick up the song, saying Japanese subtitles in the CD booklet weren't what the person expected.  I know exactly what it meant.  I hope this will work.  
The Last Resort  (Eagles)
She came from Providence,
the one in Rhode Island
Where the old world shadows hang
heavy in the air
She packed her hopes and dreams
like a refugee
Just as her father came across the sea

She heard about a place people were smilin'
They spoke about the red man's way,
and how they loved the land
And they came from everywhere
to the Great Divide
Seeking a place to stand
or a place to hide

Down in the crowded bars,
out for a good time,
Can't wait to tell you all,
what it's like up there
And they called it paradise
I don't know why
Somebody laid the mountains low
while the town got high

Then the chilly winds blew down
Across the desert
through the canyons of the coast, to
the Malibu
Where the pretty people play,
hungry for power
to light their neon way
and give them things to do

Some rich men came and raped the land,
Nobody caught 'em
Put up a bunch of ugly boxes, and Jesus,
people bought 'em
And they called it paradise
The place to be
They watched the hazy sun, sinking in the sea

You can leave it all behind
and sail to Lahaina
just like the missionaries did, so many years ago
They even brought a neon sign: "Jesus is coming"
Brought the white man's burden down
Brought the white man's reign

Who will provide the grand design?
What is yours and what is mine?
'Cause there is no more new frontier
We have got to make it here

We satisfy our endless needs and
justify our bloody deeds,
in the name of destiny and the name
of God

And you can see them there,
On Sunday morning
They stand up and sing about
what it's like up there
They call it paradise
I don't know why
You call someplace paradise,
kiss it goodbye

あいつはProvidenceっていう *
Rhode Islandにある街から来た
旧世界のヨーロッパの雰囲気が
町のあちこちに感じられる
そういう場所が故郷だ
あいつは夢と希望を荷物に詰めて
そこから逃げるようにしてやってきた
あいつのオヤジ(先祖)が海を渡って
昔この国に来たみたいに

その場所のウワサをあいつは聞いた
そこではみんなが幸せに暮らしてるって
先住民がどんな暮らしをして
どんなにその土地を大切にしてるか
そのウワサは教えてくれた
それであちこちから色んなヤツが
ロッキー山脈(the Great Divide)へとやってきた
身を立てたいと思うヤツも
人目をはばかる素性のヤツも

人でごった返すバーの奥では
みんなが一時の安らぎを求めてる
こんなセリフが聞こえてくる
みんなに教えたくてたまらない
あそこがどんなにいい場所なのか
みんな「楽園」だって言ってたよ
なのにどうしてなんだろう?
あの聖なる山々が
貶め(おとしめ)られてしまってるのに **
町は浮かれているなんて

やがて不吉な冷たい風が吹いてきた
砂漠を越え
海岸沿いの渓谷を抜けて
マリブにまで吹きこんだ
ルックスのいいヤツらが芝居して ***
「(権)力」と「電力」がなきゃダメな場所だ **** 
それがなきゃネオンの輝く
派手な世界が作れない
そういうヤツらがやらせたんだよ

どこかから
金持ち連中がやってきて
土地を勝手に荒らしていったのに
ちっともお咎めなしだった
不格好な箱(家)をいくつも並べたのに
信じられないよ
それを買うヤツがいて
そこを「楽園」と呼んだんだ
それに相応しい場所だからって
だけどそこでそいつらが見たものは
(大気汚染で)霞んだ太陽が *****
海に沈んでく様子だった

そんなのはすっかり捨ててしまって
ハワイのラハイナを目指して船出してもいい
宣教師たちも昔そうしたんだから
ヤツらネオンサインまで持ってきやがった
「神は来る」ってヤツだ
そうやって白人の不満をなだめながら
白人の支配する世界を作り上げた

だけどそんな遠大な計画を一体誰が決めるんだ?
どこまでが人様のものでどこからが自分のものなんだ?
だってもうこの世には「新天地」なんかないんだぞ
だったら今いるこの場所を
「新天地」にするしかないじゃないか

大体自分達だって
底なしの欲望を満たすために
人でなしの行為を正当化してる
そうなる運命だったんだとか
神の思し召しとか言いながら

ヤツらはまだそこにいる
日曜の朝
(教会の)椅子から立ち上がり
讃美歌を歌いながら
天国はこういうところだと
まわりの人間に説いている
そこは「楽園」だって言ってるが
わからないね
ある場所を「楽園」だと言いながら
取り返しがつかないくらい
そこを荒らしていったのに

(補足)

* ProvidenceはRhode Island州の州都で,アメリカの最初の入植地のひとつですが,この曲はアメリカの歴史,そしてそれに伴う先住民文化の破壊と環境破壊を描いているような気がします。最初の連が西への領土拡大(18世紀後半~19世紀前半),次が西部開拓(19世紀後半),次がゴールド・ラッシュ(19世紀後半)**,その次がハリウッド時代(20世紀)***,宅地開発,キリスト教の支配です。

**** おそらくこのpowerは「権力」と「電力」の掛詞です。

実はこの掛詞と思われるものは,これ以外にもいくつか登場します。一例を挙げると,Providence 「神の摂理(神のお導き・先見)」と「(町の)名前」,the grand design「この世の全てのものは物理法則や進化の過程でできたものではなく,神が最初からそうお作りになったのだという考え方」と「全体構想」などです。

(余談)

ここ本館を始めて以来,あと数か月で2年が経過しますが,これまで「誤訳」と批判を受けた曲の大半は①有名なヒット曲,②有名アーティストの作品,③その両方である場合がほとんどですが,それはいわば当然のことで,これらに該当する曲には熱心なファンの方も多く,自分の思うイメージとかけ離れた和訳は受け入れがたいとお感じになるためだと思います。

そして思うにこれこそが,CD対訳を難しくしている最大の原因でしょう。自分の解釈を入れてはいけない,言い換えれば,客観的な証拠なく(自分が考える)歌詞の世界に踏み込んではいけないために,明らかなイディオムの場合はともかく,それ以外のメタファーはメタファーのままにせざるを得ず,それがためにどこか「よそよそしい」感じを拭いきれないのだと思います。

そういう理由でここ本館を始めたわけですが,逆にそのために「意訳し過ぎ」や「誤訳」の指摘を受けることもしばしばです。また,ひとつの解釈に立ちすぎていると批判されることも少なくありません。

ただこの世の中において,それがどんな曲であれ,唯一絶対の解釈や和訳などというものは存在しません。聴き手が受け取ったものがその人にとっての正しい解釈です。当然,私の解釈や訳文も無数にあるそれらのひとつに過ぎませんが,逆に私の解釈が許されないということもないはずです。何かを掴もうと思えば,何かを捨てるしかありませんが,それを怖れていては結局何も掴めません。

この曲のSomebody laid the mountains low, while the town got highの箇所も,laid the mountains lowが具体的に何を示すのかは明らかにされていません。個人的には,伐採(木がなくなった分だけ低くなる)や採掘(地下が空洞になっただけ低くなる)を指していると思っていますが,その明確な根拠はありません。したがって「それはお前の勝手な思い込みだ」と言われればそれまでですが,それでもそう解釈することで,自分の目指すものには近づいていると思います。

それはともかく,バンド名のEaglesはホピ族がeagleを崇めていることから思いついたらしい。どの種類のeagleであったかはわかりませんが,アメリカ合衆国で最も知られているeagleと言えば,やはりハクトウワシでしょう。アメリカ合衆国の国章1(National Emblem)ともなっている動物です。


(実際にはタカ目タカ科ですが)名前からもわかるように,日本では頭の白い部分が「白髪」ということになっているこのハクトウワシ,英語では「ハゲ(bald)」とバッサリやられています。同じものを見ていても,そこから受ける印象は人によって全く違うとよく言われますが,その好例かもしれません。

ただ個人的にはハクトウワシの方が圧倒的にかっこいいと思うのですが・・・。

7 件のコメント:

  1. vestigeさん、お忙しいところ取り上げて下さりありがとうございます。

    今回はじめて意味がつながったところもあり、新しい発見がいくつもあって、とても参考になりました。

    曲調のせいか、史実を記録したフィルムを見るような、生々しい感情から薄絹一枚隔てて歌っているような、そんなイメージを自分勝手に持っていました。
    なのでvestigeさんの訳文全体の直接的でハッキリしたニュアンスがまずとても新鮮でした。改めて違う角度から曲を聞いたような感じです。

    描かれた時間の幅を広くとって解釈されているところも、とても面白かったです。それぞれ時代の流れにあてはめて、「the pretty people play =ハリウッド時代」のところとか。「hazy→大気汚染」とか。単純に夕刻に早々と灯される電灯などで(文明が席巻する前よりは)夕日がかすんでいるということかと思ってました。

    Somebody laid the mountains low~のところは、ずっと自分なりに「開発で切り開かれて実際に低くなる」か「人の手が入り山の価値が低くされる」か、そんな感じかなあとぼんやり考えていました。まるで的外れでもなかったようなので、積年のモヤモヤが晴れてすっきりしました。

    余談の内容について、僭越ながらコメントさせてください。

    幅広く流通するCD対訳において、踏み込んだ訳ができないのは致し方ないことと頭では分かっています。
    それでも、意図を少しでも理解したい、理解できないまでも核にあるものの片鱗を感じながらできるだけ受け取り方を間違えずに聴きたいと思うから物足りなさを感じてしまうのだと思います。(ただ、一方で「正解」を求めすぎると楽しめなくなるのでバランス問題なのですが…)

    私がこちらのサイトに出会って、「お気に入りに登録」をクリックするに至った理由の一つが、「ご自身の解釈や立場を明確にして、そちらに振り切って訳していらっしゃること」でした。
    あまたある可能性をバッサリ切り捨てるわけですから、これは勇気がいるだろうなと思いました。
    意訳なら勇気で済みますが、超訳なら勇み足(?)、誤訳なら蛮勇の誹りは免れないでしょうから。

    そもそも作者の側で曖昧なままにしているものも多い気がしますし、作者オリジナルの想像力と聞き手の気ままな想像力が混ざり合ったものがその曲の最終形なのかもしれませんし…。

    閲覧しているだけの私が言うのもおこがましいですが、vestigeさんの捉えた世界としての濃度を保った訳文の方が、趣味の一閲覧者としては楽しいです。
    (その前提に立って楽しむ限りにおいて、)一つの「完成形」としての面白さがあると思うからです。

    取り上げて頂いた嬉しさのあまり、コメントが長くなってしまいました。以前のコメントで好きなことこそ抑制的になどと言っておきながら、この体たらくです(笑)
    急に暑くなりましたので、vestigeさんもご自愛ください。

    ※この曲のリリースは1976年ではないかと…。ラベルは'70ではないでしょうか。




























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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。ラベルの件は早速訂正いたしましたのでご確認ください。
      さて,唯一の正解などないのが歌詞をはじめとする詩の面白さですし,仰るように作者の方でもそれが可能になるよう意図していると思います。仮に唯一の正解があるとすれば,それはもはや詩ではなくマニュアルなどの散文と言うべきでしょう。
      そういう前提に立ってこちらを運営しているわけですが,当然のことながら批判を受けることも少なくありません。ただロメオ様のように仰ってくださる方もおいでになるので,それを心の拠り所にして更新を続けております。どうかこれからもよろしくお願いいたします。

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  2. 対訳の検索でたどり着きました。
    英語がからきし駄目なので、30年来英語の語感だけ楽しんで聴いてきた曲ですが、アメリカの歴史とそこに渦巻く山師の欲望を軽蔑した直接的な歌詞だと分かり、ドン・ヘンリーの激しい性格を思うと妙に腑に落ちる対訳で、とても感慨深いものがありました。
    対訳ご苦労さまでした。
    どうもありがとうございました。

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  3. 対訳の検索でたどり着きました。
    英語がからきし駄目なので、30年来英語の語感だけ楽しんで聴いてきた曲ですが、アメリカの歴史とそこに渦巻く山師の欲望を軽蔑した直接的な歌詞だと分かり、ドン・ヘンリーの激しい性格を思うと妙に腑に落ちる対訳で、とても感慨深いものがありました。
    対訳ご苦労さまでした。
    どうもありがとうございました。

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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。この曲の和訳に関しては,私個人の力だけではどうしようもなかったと思いますが,幸い海外の歌詞サイトで詳細な解説並びに解釈を見つけることができたため,こうしてお目にかけることができております。いずれにしても,tanamach様のお役に立ててなによりです。

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  4. 80年代ファンのアラフィフ2017年6月21日 23:23

     30年程前大学生だった頃から、「HOTEL CALFORNIA」の歌詞の解釈に興味があったので、こちらのサイト、覗かせていただきました。「LAST RESORET」も、ヨーロッパ人のアメリカ侵略を示唆している様な気はしていましたので、ずっと気になっていました。

    ~この曲はアメリカの歴史,そしてそれに伴う先住民文化の破壊と環境破壊を描いているような気がします。最初の連が西への領土拡大(18世紀後半~19世紀前半),次が西部開拓(19世紀後半),次がゴールド・ラッシュ(19世紀後半)**,その次がハリウッド時代(20世紀)***,宅地開発,キリスト教の支配です。~
    なるほど!、と納得しました。 又、この曲も、「HOTEL CALFORNIA」と同様に「掛詞」が多く使われていたのですね。

     ~バンド名のEaglesはホピ族がeagleを崇めていることから思いついたらしい~ も初耳でした。イーグルス(実質的にはドンヘンリー?)がそういったスタンスに立っていた? と知ってうれしくなりました。
     
     他の曲の訳も読ませていただきます。ありがとうございました。
     

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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。英語の歌詞の面白さのひとつに掛詞があるかと思いますが,和訳する場合はそれが逆に大きな足かせになることも少なくありません。できるだけ原文の面白さを活かしつつ,日本語としても自然なものをと心がけてはいるのですが,なかなか思うように和訳できないことが悩みの種です。

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