2013年11月8日金曜日

Stolen Car スティング (Sting)

歌詞が大変面白い。この曲,最初から最後まで主人公の視点で語られています。歌詞の中で実際に登場したりあるいは主人公とやりとりしたりする人間はいません。
ただこの曲の登場人物は,男性2人と女性3人の5人であるとする人もいます。男性2人のうちの1人が主人公で,もう1人が車の所有者,妻を裏切り愛人と浮気している重役です。女性3人の1人は妻,もう1人は愛人そして最後の1人が盗まれた「車」です。英語では通常,車,船,国などは女性として扱うからです。
The lyrics are very intriguing.  The entire song is solely based on the protagonist's perspective.  No person actually appears or interacts with him in the lyrics.
One says, however, that the lyrics has five characters, two men and three women.  The two men are the protagonist who steals an expensive car and its owner, a company director who's cheating on his wife and having an affair with his mistress. Three girls are his wife, his mistress and the stolen car.  In English, cars, ships and countries are referred as feminine and usually represented by the pronoun 'she.'
Stolen Car  (Sting)
Late at night in summer heat.
Expensive car, empty street
There's a wire in my jacket. This is my trade
It only takes a moment, don't be afraid
I can hotwire an ignition like some kind of star
I'm just a poor boy in a rich man's car *
So I whisper to the engine, flick on the lights
And we drive into the night

Oh the smell of the leather always excited my imagination
And I picture myself in this different situation
I'm a company director, two kids and a wife
I get the feeling that there's more to this one's life
There's some kind of complication, he tells her he's alone
Spends the night with his lover, there's a trace of her cologne
And the words of his mistress, as she whispers them so near
Start ringing in my ear

Please take me dancing tonight I've been all on my own
You promised one day we could its, what you said on the phone
I'm just a prisoner of love always hid from the light **
Take me dancing, please take me dancing tonight

I imagine his wife, she don't look nothing like a fool
She picks the kids up form some private school
She remembers what he told her, he was late and worked alone
But there's more than a suspicion in this lingering cologne
And the kid's just won't be quiet and she runs a traffic light
And she drives into the night

Please take me dancing tonight I've been all on my own
You promised one day we could it's what you said on the phone
I'm just a prisoner of love always hid from the light
Take me dancing, please take me dancing tonight

So here am I in a stolen car at a traffic light
They go form red to green and so I just drive into the night

Please take me dancing tonight I've been all on my own
You promised one day we could it's what you said on the phone
I'm just a prisoner of love always hid from the light
Take me dancing, please take me dancing tonight

うだるような夏の夜更けに
人の乗っていない高級車がある
着ているこのジャケットには
ワイヤが仕込んである
これが俺の仕事なんだ
すぐに終わる仕事だ
ビビらなくていい
ワイヤを繋いで
星のような火花のひとつも散らしたら
キイなんかなくたって
エンジンくらいすぐかかる
金持ちの車に乗ってるけど
ただのみじめなヤツなんだ *
だからエンジンに囁きかけて
ライトを点けて
夜の闇の中へと消えていく

革張りのシートの匂いをかぐと
いつも妄想が膨らんでくる
この車の持ち主だったら
そんな風に考えてみる
企業の重役で妻と2人の子どもがいる
そんな(絵に描いたような)ヤツだけど
こいつの人生はそれだけじゃないような気がしてる
ちょっとワケアリだ
嫁さんには一人だって言いながら
他の女と夜を過ごしてるって
その女のコロンの残り香が
この俺に教えてくれる
そいつのすぐ耳元でその愛人が囁いた
セリフもガンガン響いてくる

ねえ今日はダンスに連れてって
だってずっとひとりぼっちだったの
いつかなって約束してくれたじゃない
そう電話で言ったんだから
好きだから言われたことに逆らえなくて **
いつだって人目を避けてるのよ
だからダンスに連れてって
お願い今夜連れてって

今度は嫁さんのことを考えてみる
そっちはなかなか利口だよ
どっかの私立の学校に
子どもを迎えに行って思い出す
「一人で仕事するから帰りは遅い」
夫がそう言ってたことを
だけどしつこく残るコロンの香りに
怪しいどころじゃないものを
嫁さんは感じてる
しかも後部座席の子どもたちは
どうやっても大人しくしない
それで信号を無視したまま
夜の帳へと消えていく

ねえ今日はダンスに連れてって
だってずっとひとりぼっちだったの
いつかなって約束してくれたじゃない
そう電話で言ったんだから
好きだから言われたことに逆らえなくて
いつだって人目を避けてるのよ
だからダンスに連れてって
お願い今夜連れてって

今は盗んだ車で信号を待っている
信号が赤から青へと変わったから
そのまま夜の闇の中へ
車を走らせ紛れ込む

ねえ今日はダンスに連れてって
だってずっとひとりぼっちだったの
いつかなって約束してくれたじゃない
そう電話で言ったんだから
好きだから言われたことに逆らえなくて
いつだって人目を避けてるのよ
だからダンスに連れてって
お願い今夜連れてって

(補足)

* I'm just a poor boy in a rich man's car の部分は,poor boyとrich manの対比です。したがってこの場合,poorは「貧しい」という意味ですが,それと同時に「かわいそうな」という意味もあるような気がします。

(余談)

Stingの曲なので当然と言えば当然ですが,そのイメージの鮮明さに驚きます。

**   I'm just a prisoner of love おそらく意味としては「相手のことが好きで,何を言われても逆らえないため,結局相手に振り回されることになってしまう」程度の意味だと思うのですが,これを簡潔な日本語で表現しようとするとなかなか苦労します。

無論,直訳すれば「愛の囚人」ですし,それでもイメージが伝わらないわけではないのですが,こう書くと何故か意味なくエロくなるような気がします・・・よね?

4 件のコメント:

  1. vestigeさま

    こんばんは。先日もスティングでコメントさせていただいた、のらです。
    あのあとスティングは勿論のこと、他の懐かしい歌や新しい歌も楽しませていただいております。ありがとうございます。

    この歌も好きなので、取り上げていただき感激です。

    「イメージの鮮明さ」、本当に同感です。
    情景が目に浮かびます。

    あと、リフレインのところを何度も何度も聞いていたら、(車のCDチェンジャーに入れっぱなしなので、渋滞中だと・・・)、ふと「ああ、男性が愛人を持った時の気持ちってこういうことか・・・。」となぜかいきなり腹に落ち(たような気がし)ました。

    単なる妄想の可能性も高いのですが、スティングってすごいな、と思ってしまった1曲です。

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    1. コメントありがとうございます。和訳してみて思うのですが,Stingの曲は音楽でありながら「視覚情報が多い」という点で,他のアーティストのどんな曲とも違っているような気がいたします。言葉と音楽だけで,まるで眼前で映画やドラマが展開しているような情景を描けるあたり,さすがはStingと今さらながらその力量に圧倒されます。

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  2.  なんというか、天才、ですね。素晴らしいですね。おっしゃる通り「イメージの鮮明さ」なんですが、この曲はそのイメージが二層になっています。夜の街を走る高級車と、絵に描いたようなお金持ちの生活と。そして、登場人物それぞれに葛藤があって、みんな罪を抱えながらも、そしらぬ顔で毎日を生き延びている。
     音に耳を傾けると、高級車が走ってますね。ここは、やはり黒のジャガーでしょうか。(乗ったことはないけど)そんな感じ。1連目で走り出して、2連目で加速します。サビのあたりでは、かなり疾走している感じがあります。そのスピード感に加えて、詩は、視覚的なのはもちろん、さらに温度や香り、音もあって、五感にうったえかけてくる。この豊かさが、正確でブレのない、わかりやすい、しかも、美しい言葉と音楽で4分間にぎっしりつまっている。・・・天才です。
    訳も完璧です。すばらしい。

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    1. コメント並びに温かいお言葉ありがとうございます。着想が面白く歌詞も技巧に富んでいながら内容が理解しやすいという非常に高いハードルを難なく超えてしまうStingの才能にただただ圧倒されるばかりです。

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