2014年1月24日金曜日

Overgrown ジェイムズ・ブレイク (James Blake)

Songfactによれば,この曲でJames BlakeはEmily Dickinsonの詩「いたるところに苔がはびこり」(All overgrown by cunning moss)を参考にしているそうです。この詩は生命の無常を表したもので,この考え方がOvergrownというアルバム全体に流れています。また,カナダ人アーティストのJoni Mitchellと出会い,彼女が長年に渡ってキャリアを築いていることに影響されてこの曲を書いたとも言われています。
According to Songfact, James Blake referred to Emily Dickinson's poem "All overgrown by cunning moss," which is about the impermanence of life.  It's a sentiment that also runs through Overgrown.  It's also said that his encounter with Joni Mitchell, a Canadian singer-songwriter who has enjoyed her long-lasting music career inspired him to write this song.
Overgrown  (James Blake)
I don't want you to know
I took it with me
But when things are thrown away like they are daily
Time passes in the constant state
So if that is how it is

I don't wanna be a star
But a stone on the shore
Long door, frame the wall
When everything's overgrown

But what she really really wanted was my rights in the rooms
And I wouldn't understand that I would try to play along

教えるつもりはないから
自分の心の中にしまっておいた
だけどどんなことに対しても
それに執着せずにいられたら
時間も淡々と流れてゆく
だからそういうことなら

美しく輝いても
朝が来れば消えてしまう
そんな星にはならなくていい
それよりも浜辺にある石になり
変わらず静かに過ごしていたい
壁に開いた大きなドアの枠になり
なにもかもが雑草に覆われて
滅びてしまった時にも
そこにいたい

だけど彼女が本当に望んでたのは
出し抜かれないことだったんだ
なのにそこまでわかってても
言われた通りにしようとしてた
そんな自分がわからない

(余談)

この曲,昨年の初夏あたりからずっと「寝かし」に入り,秋頃に一度「お蔵入り」していました。というのも,歌詞にヴァリエーションがあり,どれが正式なものなのかわからない上に,どれをとっても歌詞が非常に抽象的でわかりにくかったためです。

ただ,この曲のテーマに関しては「名声」であるとする意見が大半であること,またJoni Mitchellが,音楽業界の流行に左右されず,自分のスタイルを貫いてこれまで来ていることなどを考えあわせれば,これがJames Blakeの決意表明であるように思われます。

そう考える理由はこの部分にあります。

壁に開いた大きなドアの枠になり
なにもかもが雑草に覆われて
滅びてしまった時にも
そこにいたい

ドア枠(frame)というものは,ドアがある時は意識されず,ドアが失われてしまって初めてその存在が際立つものです。「なにもかもが雑草に覆われて」そこに何があったかわからなくなった後でも,ドア枠だけはそのまま残り,そこにドアがあったことを示してくれます。そしてそれこそがJames Blakeの求める「スタイル」なのではないでしょうか?仮にそうだとすると,ヴィデオに登場する亡者らしき人々は,逆に流されて自分のスタイルを失ってしまった人々を表していると考えられます。

実のところ,But what she really really wantedで始まる最後の連に関しては,現在に至るもそれが具体的に何を示しているのかわかっていませんが,それでもI don't wanna be a starで始まる第二連が圧倒的に美しく,このまま埋もれさせるのは惜しい曲だと思ったので今回取り上げることにしました。

また,James Blakeは今回のグラミー賞にもノミネートされているので,そういう意味でも取り上げる意味はあるように思われます。

1 件のコメント:

  1. ああ、殺られてしまったようです。何度でも聴いてしまいます。こうしてきちんと歌詞に向き合って、腰を据えて耳を傾けると質の高い音楽は、必ず心をつかんで離さなくなるような気がします。ヨダンが言ってた通り、第2連が圧倒的な美しさです。そして、第3連の意味が全く分かりません。全く分からないのに、ここを聴くと、取り返しのつかない過ちを冒してしまったような、絶望的な気持ちになります。この2連3連の甘く切ない感情のふり幅が中毒性の原因に違いない。ビデオの映像の明るい星空。あの明るさは何なんでしょう。満月の夜なんでしょうか。きれいで音楽によく合っていて、こちらも飽かず眺めてしまいます。(週末です、お休みください。返信は結構です)

    返信削除