こういう方々はそのアーティストについて大変よくご存じで,そのアーティストの素晴らしさ(福音)を広めたいという情熱をお持ちです。したがって時には大変頼りになる存在なのですが,同時に厳しい批評家にもなりえます。
友人の一人は自称「日本一のSting狂」で,日本における「Stingology(Oxford English Dictionaryには出ていない彼の造語で,「スティング学」というほどの意味です)の第一人者を公言しています。今回は素晴らしい曲だと思うので投稿しますが,拙訳のせいでこの曲の良さが損なわれぬよう祈るばかりです。
Do you have anyone who is almost equal to god to you? Well, I don't but I believe some people declare themselves as a die-hard or huge fan of an artist (or artists).
They know a lot about the artist and are very enthusiastic to bring their 'gospel' to the world, in other words to make people realize how amazing the artist is. Sometimes they're a reliable ally but at the same time the toughest critic.
One of my friends declares himself as the biggest fan of Sting and the leading scholar of 'Stingology' (his own creation, not in OED) in Japan. I'm going to post this song because I find it amazing. I only hope my humble translation doesn't ruin or butcher the song..
Shape of My Heart (Sting)
And those he plays never suspect
He doesn't play for the money he wins
He doesn't play for the respect
He deals the cards to find the answer
The sacred geometry of chance
The hidden law of probable outcome
The numbers lead a dance
I know that the spades are the swords of a soldier
I know that the clubs are weapons of war
I know that diamonds mean money for this art
But that's not the shape of my heart
He may play the jack of diamonds
He may lay the queen of spades
He may conceal a king in his hand
While the memory of it fades
I know that the spades are the swords of a soldier
I know that the clubs are weapons of war
I know that diamonds mean money for this art
But that's not the shape of my heart
That's not the shape, the shape of my heart
And if I told you that I loved you
You'd maybe think there's something wrong
I'm not a man of too many faces
The mask I wear is one
Those who speak know nothing
And find out to their cost
Like those who curse their luck in too many places
And those who fear are lost
I know that the spades are the swords of a soldier
I know that the clubs are weapons of war
I know that diamonds mean money for this art
But that's not the shape of my heart
That's not the shape of my heart
カードを手にしてる時,男は無心だ
何も考えず,己と向き合っている
相手は思いもしない
今自分と勝負しているその男の目的が
勝って手にする金でもなく
周囲から受ける称賛の言葉でもないなんて
男の目的はただ一つ
その「答え」を知ることだ
幸運(チャンス)という,人知の及ばぬ,聖なる幾何学
確率という,目には見えない法則
そこから導き出されるその「答え」を
男が配るカードの数字が教えてくれる
そうだわかってる
スペードが象徴するのは,兵士が手にする剣(つるぎ)の形
クラブの形は,戦いで使う武器の棍棒
ダイヤは,ギャンブルがもたらす金だけど
それでも,そんなもののために生きているんじゃない
俺という人間はそんなものじゃはかれない
男が手にしているのは
ダイヤのジャックかもしれないし
スペードのクイーンかもしれない
その手の中にキングが隠れていることもある
だけど,あの記憶は薄れていく
そうだわかってる
スペードが象徴するのは,兵士が手にする剣(つるぎ)の形
クラブの形は,戦いで使う武器の棍棒
ダイヤは,ギャンブルがもたらす金だけど
それでも,そんなもののために生きているんじゃない
俺という人間はそんなものじゃはかれない
ポーカー・プレイヤーとして生きてきた
だから気持ちをなかなか表に出せない
愛してるなんて言ったら
そんなのらしくないと思うだろう
相手によって態度が変わる
そんな器用なヤツじゃない
相手に表情を読まれないよう
常に仮面をかぶってる
たった一つ,ポーカー・フェイスという名の仮面を
プレイしている時,喋る奴はなにもわかってない
そしてそのことを身を持って知ることになる
あちこちでツキに見放されたと嘆く奴や
怖れに飲み込まれる奴と同じように
そういう奴らは身を滅ぼすんだ
そうだわかってる
スペードが象徴するのは,兵士が手にする剣(つるぎ)の形
クラブの形は,戦いで使う武器の棍棒
ダイヤは,ギャンブルがもたらす金だけど
それでも,そんなもののために生きているんじゃない
俺という人間はそんなものじゃはかれない
(余談)
昨日のNational Anthem (Lana Del Rey)のいわば対極に位置するような曲です。前者が物質主義万歳のpro-materialismなら,後者のこの曲は,anti-materialism。なのに,何故か共通するものを感じるのは,「本当に欲しいものだけが手に入らない」という切なさのようなものをこれら2曲に感じるからかもしれません。
第3連に出てくる指示代名詞 IT :
He may play the jack of diamonds
He may lay the queen of spades
He may conceal a king in his hand
While the memory of it fades
無知を晒すようで恥ずかしいのですが,実は正直なところ,このitが何を指すのかはっきりわかっていません。個人的には,歌詞に登場する相手 (the second person)との日々を指しているのではないかと思うのですが,確証はありません。
この曲の主人公,ギャンブラーとして生きてきて,感情を表に出さないようにしてきたために,自分の本当の気持ちも上手く表現できず,それがために大切な人を失ってしまった,そんな人物に思えます。映画「レオン」でも使用された曲らしいのですが,なるほどぴったりかもしれません。
YOUTUBE見てまた泣いてしまいました。
返信削除感傷的になるには、この曲が一番!と今迄思っていた曲です。
やはり日本語の方が情緒豊かに表現できる言語なんでしょうか。
Vestige様の対訳を見せていただいていると、日本語の持つ美しい慎ましさを感じます。
一つの言葉に対して、いろいろな言い方ができる。
それを駆使している、ワレワレハ誇らしく生きる人種なんでしょうか??
コメントありがとうございます。
削除個人的には,言語はその文化と密接不可分に結びついているので,どれか一つが優れていることも,どれか一つが劣っていることもないと思います。日本語でなくてはかなわぬ表現,逆に英語でなくてはかなわぬ表現,あるいは他の言語でなくてはかなわぬ表現があるはずです。
例えば,「心」という日本語に対応する英語は,mind, heart, conscience, quintessence, spiritと数え上げればきりがないくらいあります。逆に,heartを,心,気持ち,心臓,核心と表現したりする。
世の中を何段にも重なったひとつの大きなケーキだとすると,言語はそれを切るナイフです。放射状に均等に上から切るのか,それとも段ごとに切るのか,はたまた使っている材料で分けるのか,切り方は様々ですが,元は同じケーキです。
この曲の場合も,元の英語歌詞が持つ深みを,拙訳では到底表現しきれていません。おそらくネイティヴの方は,このシンプルな歌詞のなかに我々が想像できないほどのものを読み取れるはずで,その点が残念なところですが,同時にそれが翻訳の面白さでもあるのかもしれません。
ただ,今まで少なからぬ数の歌詞を和訳してきて思うのは,人間はみな同じということ。誰もが自分のことを好きになりたい。自分が生きているのには意味があると思いたい,そこへ行きつくような気がします。
これまでいただいたコメントを拝見すると,色々お辛い経験をなさったのでしょうか。辛さや苦しさは,本当にその方にしかわからないので,大したことは申し上げられませんが,この世の中はそれほど悪い場所ではありませんし,人間は自分が思っているよりもずっと強い。どうかそれをお忘れになりませんよう。
これは偶然ですが,明日はアダムみたいな人様のお好きなあの人の曲です。特段の事情が生じない限り,12時に投稿されますので,是非ご覧ください。
ところで,今回はたまたま前日にコメントをいただいたことで,お知らせすることができましたが,今後もまた同様にこのような僥倖に恵まれるとは限りません。お差し支えなければ,別館twitterでフォローしてくださると,ダイレクトメールで事前に投稿をお知らせできます。アカウントをお持ちでなくとも,簡単に取得できます。是非御一考ください。また,フォローくださった時は,その旨お知らせください。お待ちしております。
どうしましょう。。Vestige様がジーザスに見えてきました。
返信削除薄っぺらな自分のコメントが恥ずかしいです。
Vestige様のおっしゃる通り、「人間はみな同じ」なんですよね。
優劣なんかつけられない、そんなものじゃないんですよね。
すみません、世界中の悲劇を背負ったかのようなコメントばかりで。。
本当にありがとうございます。
うれしいお知らせもありがとうございます!あと30分、楽しみにしております!!
Twitterですが、アカウントはとったのですが、これまた無知ですみません、「意味がわからない」んです。
Vestige様をフォローしたいのですが、わからない。
必ず、フォローします!!しばしお時間を。。
コメントありがとうございます。こちら本館をご覧くださる皆様に直接お返事が差し上げたくて始めた別館(twitter)ですが,私もまだ不慣れで実は良くわかっておりません。ですから,アダムみたいな人様のお気持ち,大変良くわかります。急ぎませんので,お時間のある折においでください。お待ちしております。
削除「レオン」が大好きで何度も何度も観ていますが、この曲は本当にあの映画にぴったりです。大好きな曲ですので、ここで取り上げられていて大変嬉しいです、ありがとうございます。余談も読みまして、特に最後など、その通りだと思います。レオンは殺し屋として生き、それ故に自分自身をも殺さなければならなかった。マチルダは彼にとって最後の光になったのかもしれません。また観たくなってきましたー。vestigeさんは観たことがありますか?また観る機会がおありでしたら、是非劇場版ではなく完全版の方をおすすめします^^
返信削除コメントありがとうございます。「レオン」以前観ました。いい映画でしたね。彼がミルクを買っているのが非常に印象的でした。殺し屋にミルクと観葉植物という組み合わせが意外だったのですが,ミルクには鎮静効果があるそうなので,殺し屋には必要なものなのかもしれません。
削除それにしても,最近(というか本館を始めてから)本や映画が本当に見られなくなりました。勿論,本館のお蔭で,私の英語力も格段に向上した(当社比)と思うのですが,本業には全く関係ないので,本館を続けない限り,あまり意味がない。ある意味「マッチ・ポンプ」です(笑)
はじめまして、vestige様。自分も映画『レオン』を観てこの曲を知りました。
返信削除それにしても「素晴らしい訳!!」の一言です。
特に、二行目の歌詞「And those he plays never suspect」の訳し方に感服いたしました<(_ _)>
今、私も自分なりの言葉で訳してみたく、必死に挑戦してる最中なのですが、
どうしてもvestige様のものまねになってしましますよ~(;^_^A アセアセ・・・
それくらい完成度が高いんでしょうね!!
>実は正直なところ,このitが何を指すのかはっきりわかっていません。
自分なりの見解なのですが、このitは「to conceal a king in his hand」なのではないでしょうか?
コメント並びに過分なお褒めのお言葉ありがとうございます。
削除お話しの件ですが,確かに仰る通りその可能性もありますね。実は私もそれが気になっていたので,リード文でお話しした方にその点について伺ってみたのですが,その方のお考えでは,itはthe game he plays,すなわち人生(life)ということでした。私は主人公が恋人と過ごした時期のことではないかと思っています。
さて,別館(twitter)でも余談を展開しております。お時間があればそちらへもおいでください。お待ちしております。
今まで何度か見たことはあったのですが
返信削除最後まで見たことは一度も無かった『レオン』を今日、やっと全部見ました。
確かこの映画の監督が力を入れて撮っていた別の映画の製作資金の足しに
たかだか数日で脚本を仕上げて撮った映画だったと思いますが、
それにしては格好良くて素敵で哀しいとても良くできた映画で、
このShape of my heartにも感じるものがありました。
あまり関係ない話な気もしますが、
実は僕は映画やドラマ、歌や小説、漫画で泣いたことが一度も無く、
この映画でもエンディングが流れ出したと同時にうるうる来たにもかかわらず、
例によって涙が頬をぬらすことはありませんでした。
何故こんな素敵な映画で泣くまで感動できないものなのかと
自分の涙腺の締まり具合に涙が出そうになったりして、
むなしくなるのですが、改めて考えてみると自分の感情や性格以上に、
今僕が置かれている環境や人生に対する悩みそのものが、
僕の涙腺を固くしているのかもしれません。
いつか『悩みの存在が無いことが悩み』と言えるくらいになった時に
この映画を見て、エンディングで泣くことが出来るまで
こんな風に格好つけたコメントを忘れないように
この曲を聴き続けようと思います(笑)
コメントありがとうございます。ご安心ください。どらもん様の分の涙は私が代わりにキッチリ流しております。本を読んでは泣き,映画を見ては泣き,マンガを読んでは泣き,曲を聴いては泣きで恥ずかしくなるほどです。(したがって誰かと感動系の映画を見に行くなどと言う暴挙は決していたしません。もっぱらDVD派です)。
削除悲しくて泣くということはほとんどないのですが,感動系には弱い。なろうことなら,どらもん様のその鋼のような涙腺と交換していただきたいと願う日々です。
ただ,私も10代の頃は泣けませんでした。何を聞いても,何を見ても,自分の心との間に強化ガラスが入っているようで,感動しているのに,どうしても涙が出てこない,そんな状態がかなり続きました。気持ちよく(?)泣けるようになったのは,いいかげん泣き顔を見られるのが恥ずかしくなった頃でした。おそらくその頃,大人になったのだと思います。
どらもん様,いずれ遠からず今のその「泣けない状態」を懐かしく思い出す日が来ます。その時が来たら,またそのお話をここでお聞かせください。お待ちしております。