2014年12月1日月曜日

Tom's Diner スザンヌ・ヴェガ (Suzanne Vega)

この曲の最初の2小節は大変有名で,Tupac ("Dopefiend's Diner"), Aaliyah ("Hot Like Fire") ,Drake ("Juice")などを初めとして他のアーティストなどからよくサンプリングされています。歌詞は恋人と別れて朝の時間を(おそらく)Tomのダイナーで過ごしている主人公の独り言という形を取っています。「寂しい」や「会いたい」などといったセリフが主人公の口から出てくるわけではないのですが,歌詞の行間から彼女の孤独感が滲み出ているような気がします。
The two bars at the opening of this song are very well known and frequently sampled by other artists including Tupac ("Dopefiend's Diner") Aaliyah ("Hot Like Fire") and Drake ("Juice").  The lyrics take the form of a monologue of the protagonist who seems to have broken up with her lover and to be spending her morning alone at (probably) Tom's Diner.  Although she doesn't say anything like I'm lonely or miss you, I feel her loneliness seeps out between the lines.
Tom's Diner  (Suzanne Vega)
I am sitting
In the morning
At the diner
On the corner

I am waiting
At the counter
For the man
To pour the coffee

And he fills it
Only halfway
And before
I even argue

He is looking
Out the window
At somebody
Coming in

"It is always
Nice to see you"
Says the man
Behind the counter

To the woman
Who has come in
She is shaking
Her umbrella

And I look
The other way
As they are kissing
Their hellos

I'm pretending
Not to see them
And Instead
I pour the milk

I open
Up the paper
There's a story
Of an actor

Who had died
While he was drinking
He was no one
I had heard of

And I'm turning
To the horoscope
And looking
For the funnies

When I'm feeling
Someone watching me
And so
I raise my head

There's a woman
On the outside
Looking inside
Does she see me?

No she does not
Really see me
Cause she sees
Her own reflection

And I'm trying
Not to notice
That she's hitching
Up her skirt

And while she's
Straightening her stockings
Her hair
Is getting wet

Oh, this rain
It will continue
Through the morning
As I'm listening

To the bells
Of the cathedral
I am thinking
Of your voice

And of the midnight picnic
Once upon a time
Before the rain began

I finish up my coffee
It's time to catch the train

椅子に腰かけて
朝の時間を過ごしてる
このダイナー(食堂)は
街の通りの角にある

隅っこの
カウンター席に腰掛けて
お店の男の人が
コーヒーを
注いでくれるのを待ってるの

なのにその人は
カップの途中まで
注いだところで止めちゃった
文句を言おうと
思ってると

その人は
窓の外へ目をやって
そこにいる
誰かがお店に入ってくるのを
そのままそこで見ているの

「いつもありがとうございます」
カウンターの後ろから
男の人がそう言って
声をかけるのが聞こえてくる

入って来たのは女の人で
その人は
傘についた雨の滴を
振って床に落としてる

視線を逸らせて
よそを向く
その人たちが挨拶の
キスを交わしている時は

見てないってフリするの
そんな2人のことなんか
だから気付いてないって感じで
その代わりにコーヒーに
こうしてミルクを入れてるの

手元にあった新聞を
開いて読み始めると
ある俳優の
記事がそこに載っている

その人は
お酒を飲んでいる時に
死んじゃったらしいけど
知らない名前だったから

そこはさっさと飛ばしたまま
星占いのページに行って
それからマンガを探したの

そしたらなんとなく
誰かがこっちを見ているような
そんな気がしたもんだから
新聞から顔を上げてみたら

そこに女の人がいて
お店の外から
中の様子を覗いてた
アタシのことを見ているの?って
そんな風にも思ったけど

別にその人は
こっちを見てたわけじゃない
だってその視線の先には
窓に映ってる
自分の姿があったから

頑張って
気付いてないフリしたよ
だってその人が
自分がはいてるスカートを
グイッと引っ張り上げてたから

その人は
ストッキングも直してたけど
そうするうちに
髪の毛が濡れてきた

朝から降ってるこの雨は
これからも
お昼になるまで続きそう
耳を澄ますと

鐘の音が
大聖堂から聞こえてくる
そしたら思い出しちゃった
あの人の声だとか

真夜中のピクニックとか
ずっと昔の思い出を
あの頃は
まだ雨は降ってなかった

コーヒーを飲み干そう
そろそろ電車が来る頃だから

(余談)

歌詞の内容自体は決して難しくないこの曲で,私が最も苦労したのが「語順」でした。この曲は,James JoyceのUlyssesにおけるmollyの独白(soliloquy)よろしく,最初から最後まで主人公の独り言が間断なく続いているのが面白いところですが,英語と日本語では語順が違うため,歌詞に登場する英語の順番でそのまま訳してしまうと,元の英語歌詞では連続している言葉と思考の流れがブツブツと分断されてしまいます。例えば冒頭の:

I am sitting
In the morning
At the diner
On the corner

これをGoogle大先生に訳していただくと:

私が座っています
午前中に
食堂で
角に

となってしまいます。まただからといって意味を重視するあまり;

朝こうして
街角にある
食堂に
座っていると

とすると,日本語としての流れは実にスムーズなのですが,語順が英語の歌詞と全く対応しないので曲を聴きながら訳文を読んでいるとストレスを感じます。

したがって,元の英語歌詞を多少なりとも意識させつつ,同時に日本語として流れに無理がないような訳文にしたかったのですが,それが思った以上に大変でした。

1 件のコメント:

  1. この曲にコメントしないわけにはいきません。この曲、大好きでした。なつかしい。確か、コーヒーか何かのTVCMで使われていたと思います。外国人の女性がオープンエアーのカフェでコーヒーを飲んでいるようなシーンが流れていたような。(違うかも?)とにかく、おしまいまでずっと、アカペラなのも、スザンヌ・ヴェガの歌声も、通勤前の女性が朝1人でダイナーでコーヒーを飲んでいるという、そのことも、当時の私にはものすごく素敵なものに思えて、もう大学生だったと思いますが、それでもまだまだコドモ気分で、大人になったら「こういう感じ」になりたい、と憧れていました。Solitude Standing というこの曲が入っていたアルバムも手に入れて、何度も繰り返し聴いていましたが、最後の部分なんて聞き飛ばしていた模様。今日、改めて聴くと、”I'm thinking of your voice"の前のポーズがなんともつらい。なんでここを聴かずに聞けたのかと思うと、若いってすごい、としか言いようがありません。(師走になりましたね。返信は結構です)

    返信削除